さよなら李香蘭 1989年(平成1年) ドラマ傑作選
「さよなら李香蘭、さよなら中国…」 淑子は震えながらつぶやいて祖国日本へ向かった。
1945年(昭和20年)8月、日本が降伏し、淑子は国家反逆罪の容疑で軟禁された。
中国人ではないという証拠がみつからないまま、11月になって「李香蘭の銃殺刑が決まった」
と新聞に報じられ、死を覚悟する。
そんな時、藤娘の人形が届き、ほつれた帯をほどくと、折りたたんだ戸籍謄本が入っていた。
北京にいた母が送ってくれたのだった。
李香蘭(本名・山口淑子)といえば、戦前、戦中を通じて、日中両国の映画ファンを魅了したスター
のひとりだが、本作は、日中戦争の狭間で送った彼女の数奇な半生を描いたドラマである。
終戦後、彼女は敵国の日本に協力した裏切り者として軍事裁判にかけられてしまう。
死刑を宣告されたものの、戸籍により日本人であることが判明し、かろうじて無罪となり釈放された。
この李香蘭の波乱の半生を、沢口靖子が熱演しているが、中国ロケの最中に「天安門事件」が勃発するなど、
撮影のほうも波乱に富んだものとなった。
本作は、フジテレビ開局30周年記念番組として、前後編を二夜連続で放映(5時間)。
大作だけにキャストも豪華で、淑子の母親役を八千草薫、大物映画プロデューサー・川喜多役を
林隆三といったベテランが演じて印象的な演技を見せている。
また狂気を湛えた憲兵大尉・甘粕を演じた片岡鶴太郎の個性的演技が話題を呼んだ。
(制作)フジテレビ、共同テレビ、中国中央電視台(原作)山口淑子(脚本)安倍徹郎
(主題歌)玉置浩二「行かないで」(作詞:松井五郎、作曲:玉置浩二)
(配役)山口淑子/李香蘭(沢口靖子)山口文雄(平幹二朗)山口アイ(八千草薫)川喜多長政(林隆三)
川島芳子(山田邦子)淡谷のり子(井森美幸)長谷川一夫(林与一)甘粕正彦(片岡鶴太郎)松岡謙一郎(西城秀樹)