三日間 1982年(昭和57年) ドラマ傑作選
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パキスタンに単身赴任していた夫(山内明)が二年ぶりで帰って来る。
ただし休暇は三日。
迎えるは平凡だが美しい妻(若尾文子)予備校生の息子、高校生の娘、
それに姑(風見章子)の四人。
夫の高志が帰国する日、姑のしまが散歩中に迷子になってしまった。
妻の美子は、高志の帰宅時間を気にしながら、しまを捜し歩く。
ようやく見つけたしまを連れ戻ると、高志はすでに帰っていた。
久しぶりに帰ってきたのに誰も迎えない、と高志はムクれるが、
子供たちが戻ってくる頃には、高志の機嫌も直った。
帰国二日目、家族で熱海一泊旅行に出かけようと高志が提案した。
だが当日の晩、息子の達雄の帰りが遅く、計画がフイになった。
模擬試験を控えた達雄には、旅行どころではなかったのだ。
しまが達雄に文句をいい、大ゲンカが始まった。
たしなめる高志に向かって、達雄は「長い間家を留守にして、
大きなことは言えないはずだ」とくってかかった。
そして三日目、買い物に出かけた高志と美子は、ようやく二人きりになれた。
高志はグチを聞いてやるといってくれるが、美子は何も言えない。
達雄が自殺未遂を起こしたことも、ボケ始めたしまが美子を泥棒と勘違い
したことも、話せば高志が心配するだけだ。
最後の夕食の席で、高志は陽気にパキスタン民謡を口ずさんでいる。
これでいいと美子は思った。
山田太一のオリジナル脚本。海外に単身赴任の父親が三日間の休暇を得て、久しぶりに
家族のもとへ帰ってくるのだが、そんな父親を迎える家族の反応は微妙に食い違っていた。
息子の帰宅を首を長くして待つ少々ボケ気味の祖母。
せっかく戻ってきた夫に余計な心配をかけまいと気を配る妻。
そんな母の思惑をよそに、思春期の子供たちは久しぶりに会う父親に冷たい。
脚本の山田太一は、日常性を題材に、家族の微妙な食い違いをシリアスに見詰める。
本来、心の拠りどころであるはずの家族の間で起きる様々な軋轢を通して、その狭間で
揺れ動く心の性情を描き出してゆく。
物語は淡々と進行し、それほどドラマチックではないだけに、心理描写は難しいのだが、
本作の登場人物は、それぞれ見事に演じ切っている。
(制作)TBS(脚本)山田太一
(配役)北山高志(山内明)北山美子(若尾文子)達雄(小野寺嗣夫)真佐子(菊地優子)しま(風見章子)
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