眠り人形 1977年(昭和52年) ドラマ傑作選
守屋周一(船越英二)の所に、二人の妹が、それぞれの事情を抱えて訪れる。
上の妹・三輪子(加藤治子)は、金の工面に困っていた。
夫が事業で失敗して莫大な借金を抱えてしまい、兄の周一に相談に来たのだった。
一方、下の妹・真佐子(長山藍子)は、夫の浮気に怒り、家を飛び出してきたのだ。
なかなか本題を出せない中、妹はついつい「子供の頃はお姉さんのお古ばかりもらっていた。
父はお姉さんばかり可愛がっていた」などと、常に損な役回りだったグチが出てしまう。
ところが大人になった今では、立場が逆転していることをまだ二人とも気づいていなかった。
姉にずっとコンプレックスを抱いていた妹は、結婚後、嫁ぎ先の商売が繁盛して、裕福な
マダムになったのに、姉は夫の借金で悩み、女性としての輝きまで失ってしまったのだった。
落ちぶれた姉、金はあるが離婚したい妹、お互いに本音を隠しつつ、意地の張り合い、
僻み合いで、ついつい衝突してしまう。
船越英二演じる周一が、そんな妹たちをとりなし「何でも話すのが姉妹だろう」と諭す。
一見たじたじで頼りなさそうだが、根はしっかりしている長男キャラを好演している。
意地や見栄を張りつつも、最後はやっぱり血のつながり。お互い率直に話をする中で、
それぞれの悩み・苦労を徐々に理解し合い、助け合うようになっていく。
和解のきっかけとなったのが「眠り人形」の思い出話。横に寝かすと目をつぶる人形で、
女の子は幼い時分、たいてい遊んだことがあるかも知れない。
本作は、家族だからこその照れくささや取り繕いが、会話の中に巧妙に描かれていて興味深い。
普段は素っ気なくても、いざというときは互いの幸せを喜べる絆が、きっと家族にはあるんだなと
感じさせてくれる珠玉の一篇。
(制作)TBS(脚本)向田邦子
(配役)守屋周一(船越英二)守屋洋子(幸真喜子)園部三輪子(加藤治子)
園部友彦(林明夫)矢島真佐子(長山藍子)矢島武男(あびる啓二)