野々村病院物語   1981年(昭和56年)       ドラマ傑作選

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開院を明日に控えた吉祥寺の野々村病院は慌ただしい雰囲気だ。


婦長の友子(山岡久乃)は看護婦たちの最後の特訓に大わらわである。

院長の野々村隆之(宇津井健)は医師たちを前に「医は人なり」と自らの信念を披露する。


そんなところへ幼い子供を抱えた母親(梶芽衣子)が駆け込んでくる。

若い医者の一平(三浦浩一)は取りあえず応急処置をして帰すが、再度担ぎ込まれたときには

症状がすっかり悪化していた。

子供は重篤な状態で、万が一のことがあってはと、他の大学病院へ移せという意見もあったが、

院長の隆之は敢然として手術を行うのだった…。




物語の舞台は、東京・吉祥寺にある小さなクリニック。

院長の野々村隆之(宇津井健)は、これまで大学病院に勤務していたが、地域医療を目指して

念願の個人病院を開業することに。


大学病院時代から仕えている広島友子(山岡久乃)が、婦長として隆之を支えている。

また、病院の実際の運営は、生真面目な事務長の須崎八一(蟹江敬三)が担当している。


隆之は「患者を人間として接し、心のケアも十分に」と、自らの理想を実践しようとする。

一方、須崎は採算面から「患者を一人でも多く入れ、診察時間も短く」と主張する。

開院早々から、院長と事務長の意見が対立し、地域医療の深刻さを浮き彫りにしている。


本作は、医療ドラマだが、そこには難解な病名やリアルな手術シーンは登場しない。

物語の本筋は、病院内の多様な人間模様を描くことにある。


医師や看護婦などの医療スタッフ側のパーソナルな部分が全編を通して描かれ、またそこに

恋愛の要素も盛り込まれ、ホームドラマ的な側面が満載の作品となっている。



この番組をみるために、夜九時の消灯時間を、火曜日だけ十時に変更した病院がある。

東京・池袋にある大久保病院だ。


火曜の夜は、院長も医師も看護婦も患者さんも、テレビの前で「似た者同士」の

ドラマに夢中になっているわけだ。

なお、この大久保病院は番組の撮影ロケにも積極的に協力してくれているという。



(制作)TBS、テレパック(脚本)高橋玄洋

(主題歌)谷村新司「青年の樹」(作詞作曲:谷村新司)

(配役)野々村隆之(宇津井健)野々村ゆかり(甲斐智枝美)野々村智(伴淳三郎)

広島友子(山岡久乃)須崎八一(蟹江敬三)坂井田一平(三浦浩一)北見紀子(夏目雅子

畠山初江(山田邦子)村岡啓介(関口宏)久米丈二(津川雅彦)長岡菜美子(梶芽衣子)


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