お荷物小荷物   1970年(昭和45年)       ドラマ傑作選

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男ばかり三代で切り盛りする滝沢運送店。

この一家は絵に描いたような男尊女卑で、怒ると日本刀を振り回す

家長の忠太郎じいさん(志村喬)には、誰も頭が上がらない。


その滝沢家で、田の中菊(中山千夏)という若い女が、住み込みの

お手伝いとして働き始めた。


実はかつて、彼女の姉は忠太郎の孫(河原崎長一郎)と恋仲になったのだが、

妊娠するとボロ雑巾のように捨てられ、帰郷して男の子を産むと命を落とした。


菊は、滝沢家に復讐することを誓い、姉の子供を認知させるべく、

素性を隠して乗り込んで来たのだった。



「女なんてものは!」と、徹頭徹尾、女をバカにしている運送店の滝沢一家。

年はとっても実権を握っていて放さない祖父(志村)と、そのせいでどことなくしょぼくれている

父(桑山正一)、そして線の細そうな長男(河原崎長一郎)ほか、一家七人男ばかり。


そういう家でも女手がないと不自由と、女中や家政婦を雇うのだが、とても住みつかない。

その家に 30代目のお手伝いさんとしてやってきたのが 田の中菊(中山千夏)と名乗る若い女である。





一家はいつもの調子で、彼女を女中呼ばわりして、セクハラの限りを尽くすのだが、このお手伝いさん、

一向に気にしない様子。その秘密は――と気をもたせながら、話が進む。


このドラマは、まず筋立が面白い。女上位時代とかいって、とかく近ごろの男は女を甘やかす、

とみられている風潮のなかで、この一家は頭から女をバカにし、乱暴にとり扱う。

男性の視聴者はニヤニヤしてみていることだろう。


ところが彼女は、それらをサラリと受け流して、さばいてしまう。そうすると、男の側としては、

いっそう女中いじめにハッスルするものと、手応えがないのに軟化するものとに分れてくる。

結局、一家の男性陣はことごとく、このお手伝いさんにキリキリ舞いさせられてしまう。


作者は、ヒロインを通じて作中人物を手玉にとるばかりでなく、面白がって見ていた男性視聴者も

手玉にとり、その上でもう一度、そういう現象も含めた現代世相というものを諷刺しているのだ。

まことにアッパレという他はない。



(制作)ABC(朝日放送)(脚本)佐々木守

(配役)田の中菊(中山千夏)滝沢忠太郎(志村喬)その息子・孝太郎(桑山正一)長男・仁(河原崎長一郎)

次男・義(浜田光夫)三男・礼(林隆三)四男・智(渡辺篤史)五男・信(佐々木剛)


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