細雪 1983年(昭和58年) 邦画名作選
昭和13年、大阪船場の蒔岡家では、未婚の三女・雪子と四女・妙子のことで頭を悩ませていた。
無口な雪子は、親類の勧めで次々と見合いをするものの、本人の気が進まず一向にまとまらない。
自由奔放な妙子は、駆け落ちするやら家出するやら、恋愛沙汰のトラブルを次々と引き起こす。
そんな折り、長女・鶴子の夫、辰雄が勤め先の銀行から東京転勤の辞令を受けるのだが…。
滅びゆく名家の四姉妹の顛末を描いた谷崎潤一郎の同名小説を、名匠・市川崑監督が映像化した文芸大作である。
本家の長女に岸恵子、分家の次女に佐久間良子、未だ未婚の三女に吉永小百合、自由奔放な四女に古手川祐子、
という配役で、三女の縁談話を軸に、四姉妹それぞれの物語が、四季折々の風物を織り交ぜながら描かれている。
三女・雪子(吉永小百合)は、姉たちの世話で、次々に来る縁談で見合いを重ねているが、帯に短したすきに長しで、
なかなか適当な相手が見つからない。
ようやく願ってもない好条件の公家華族(江本孟紀)と婚約し、姉たちからは最も賢い選択をした「勝ち組」の妹
という評価を得る。演じた吉永小百合は、このとき38歳。女盛りの落ち着いた美しさに輝いていた。
本家をしっかりと支える長女・鶴子役は、はじめ山本富士子に出演依頼をしたが、当時の山本は映画界引退を
決意しており、これを拒否。
そこで、監督自身がパリ在住の岸恵子に国際電話で依頼。懇願された岸は即答で引き受けて一時帰国したという。
後に、この映画を見た山本富士子は「出演していればよかった」と後悔の念を語ったと言われている。
製作 東宝
監督 市川崑