清作の妻  1965年(昭和40年)      邦画名作選

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お兼は、金持ち老人の妾であったことから、出戻った故郷で村八分に遭う。

そんな彼女が村の青年・清作と出会って結ばれ、しばらく幸福な日々が続く。

だが戦争が勃発し、兵役に取られた清作は、戦地で負傷をして村に戻って来る。

やがて傷も癒え、再び戦地に向おうとする清作と、なにをかなぐり捨てても
清作を離したくないお兼。やがて彼女の思いは狂気の行動にでる…。



村人たちは、傷の癒えた清作が、再び戦地へ赴き、名誉の戦死を遂げることを期待していた。

清作自身も、男として喜んで戦地に向おうと望んでいた。しかし、お兼は孤独が怖かった。

清作の再出征を祝う宴が終わる頃、お兼は無我夢中で清作の両目を五寸釘で突いてしまう。
戦争も終わり、お兼は二年の刑期を終えて清作のもとに戻ってきた。


「殺されても仕方のない私です。あなたの気のすむようにしてください」というお兼。

お兼の首を絞めようとする清作が、彼女の身体に触れると「痩せたの、辛かったろう」
と涙ながらにお兼を抱き締める。孤独な存在同士、ついに真の愛が芽生えたのである。


「国のために戦死するのは当然だ」という村人たちの願望の背後には、妾あがりのお兼と
一緒になった清作に対する憤慨と羨望が入り混じった排除と差別の構造が隠されている。

そして自らの欲望のままに情念を貫くヒロインの姿は、旧来の封建的な因習と男尊女卑の
制度に抗う悲痛な抵抗であり「妻は告白する」と同じテーマがここでも再現されている。



 


  製作  大映

  監督  増村保造     原作  吉田絃二郎

  配役   お兼 若尾文子 兵助 千葉信男 お品 紺野ユカ
      清作 田村高広 お牧 清川玉枝 隠居 殿山泰司

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