船頭小唄 1923年(大正12年) 邦画名作選 |
利根川の水郷に住むお君(栗島すみ子)には、許婚・豊三(堀川浪之助)がいた。
だが豊三は東京で芸者のお品と恋に落ち、さらに会社の金を使い込んで投獄される。
お品は恋しい豊三の出所を、彼の故郷である水郷で待つ。
やがて刑期を終え水郷に戻った豊三は、お品と逃げたいが金が無い。
一方、お君を慕う律太(岩田祐吉)は、お君と結ばれるために、この二人に金を貸す。
本作「船頭小唄」はもともと流行歌(作詞:野口雨情、作曲:中山晋平)であり、
映画は、それを主題歌として劇中に登場させるために制作されたものである。
結末は、晴れて結ばれた律太とお君は、水郷の船頭夫婦として幸せな日々を過ごす。
「おれは河原の枯れすすき」ではじまる船頭小唄は、その哀愁を帯びた諦めの曲調が
庶民の共感を呼び、大ヒットしたのだが、映画ではむしろ明るい雰囲気で歌われる。
悲劇的な運命に翻弄される男女の物語だと、勝手に思って映画館にやって来た観客は、
あまりにも明るく幸福な結末にびっくりしてしまうのだった。
さらに映画の雰囲気を決定づけたのが、憂いのある美貌で当時人気急上昇中であった
栗島すみ子である。
彼女は、手拭をかぶり、舟を漕ぎながら船頭小唄を歌うのだが、その女船頭に扮した
純情可憐な姿に話題が集まり、映画は90日間続映と言う空前の記録を達成したのである。
製作 松竹
監督 池田義信
配役 | 船頭律太 | 岩田祐吉 | 芸者お品 | 柳さく子 | |||||||||
お君 | 栗島すみ子 | ||||||||||||
豊三 | 堀川浪之助 |