真空地帯   1952年(昭和27年)       邦画名作選

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木谷一等兵(木村功)は、二年ぶりに陸軍刑務所から古巣の大阪歩兵連隊に復帰した。

木谷は、上官の財布を窃盗した疑いで軍法会議にかけられ、服役していたのだった。

班内では、古参兵たちが新入りの初年兵たちを奴隷のように扱っていた。


ある夜、木谷は、班内でおおっぴらに刑務所帰りと揶揄した初年兵を散々に打ちのめした。

そして、最古参の権威をもって全員を整列させ「刑務所帰りがそんなにおかしいのか」と
喚きながら一人一人に次々とビンタを見舞うのだった。



太平洋戦争当時の陸軍の兵営内部の陰湿な実態を描いた集団ドラマ。

本作は、日常茶飯事のように古参兵が新兵を殴り続け、意地悪く虐め続ける事によって
成り立っていた旧帝国陸軍の兵士教育の実態を暴露した作品である。


敗戦によって、かつての帝国軍隊の栄誉は、すでに地に堕ちていたが、いったん栄光ある
ものとして国民の胸の奥深く刻み込まれたイメージは一朝一夕で消えるというものではない。


だから敗戦後七年たったこの時、多くの日本人が初めて、旧帝国陸軍の見るもおぞましい実態を
スクリーンでたっぷりと見て衝撃を受け、やはり軍隊はないほうがいい、と納得したのである。




 

 製作  新星映画  配給 北星映画

  監督  山本薩夫     原作  野間宏

  配役    木谷一等兵 木村功 林中尉 加藤嘉
      岡本少尉   岡田英次      大住軍曹   西村晃
      峯中隊長 神田隆 花枝 利根はる恵

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