酒中浪人 1930年(昭和5年) 邦画名作選 |
三年前に、権三郎(光岡龍三郎)は咎めを受けて家禄を削られた。護衛に失敗して、
一人の重職の命を奪われたのが原因である。以来、彼は酒に溺れる日々を送っていた。
そんなある日、権三郎は暴漢に襲われた奈良屋の父娘を助けた。娘のお道(桜井京子)は、
小町と呼ばれるほど器量の良い娘で、権三郎もその美しさに心奪われ見染めるのだった。
ある夜、忠僕・伊助(実川延一郎)の熱誠あふれた諫言に、権三郎は愛好の酒をやめた。
かくて運気も良くなり、権三郎は手柄を立て、一躍百七十石取の武士になった。
忠僕伊助の献身によって、権三郎の良心が目覚め、再起し物事が好転していく姿が描かれる。
光岡龍三郎が、その武骨で隆々とした体躯に似合わない繊細な武士の一面を披露している。
1924年(大正13年)当時の東亜キネマに入社。きっかけは、実兄の葛木香一が日活の時代劇
で活躍しており、兄を頼って役者生活に身を投じたのだ。
以後「鳴門秘帖 1926」「王政復古 1927」「赤垣源蔵 1928」などに主演し、線の太さと荒々しい
野性味が持ち味で「猛勇」などと呼ばれ、時代劇のトップスターとして君臨した。
1929年(昭和4年)招かれて兄の葛木がいる日活へ転社。ここでも主演役者として活躍を続けた。
ヒロインの桜井京子は、1928年(昭和3年)日活入社。「落花剣光録 1929」「千丈の紅恋 1930」
など、売り出し中の沢田清の相手役として人気を得た。
1930年以降は、千恵プロ作品にも応援出演するなど娘役として重宝された。
1932年には、スクリーン上の銭形平次(沢村国太郎)で最初に女房お静を演じている。
製作 日活
監督 益田晴夫 原作 長谷川剛吉
配役 | 龍造寺権三郎 | 光岡龍三郎 | 武島善蔵 | 尾上華丈 | |||||||||
奈良屋清兵衛 | 磯川元春 | 老僕・伊助 | 実川延一郎 | ||||||||||
娘・お道 | 桜井京子 | 町医者 | 伴淳三郎 | ||||||||||
娘・お花 | 山田五十鈴 |