素浪人 月影兵庫 1965年(昭和40年) ドラマ傑作選
「やい旦那!俺アもう旦那と一緒に行くのはまっぴらごめんだッ!」
「おお、俺もなァ、おめえのようなおっちょこちょいと旅するのは願い下げだよう!」
「どうせ、俺はドジでおっちょこちょいですよ。じゃ、旦那、せいぜい足元にお気をつけなすって」
「足元? ひぇっ! ね、猫っ!!」
腕は立つが猫が苦手という浪人・月影兵庫(近衛十四郎)と、曲がったことが大嫌いという
渡世人・焼津の半次(品川隆二)が、旅の行く先々で様々な事件に巻き込まれる道中もの。
番組が始まった当初は、まじめ路線だったが、回が進むにつれ、ストーリーそっちのけで展開される
兵庫と半次のなじり合いが人気となり、平均視聴率20%を記録した傑作コメディ時代劇である。
当時のテレビ時代劇といえば「赤穂浪士」や「新選組」など、深刻で重厚な印象のものが多かった。
そんなイメージをかなぐり捨てたような軽妙なズッコケ芝居で笑わせつつ、殺陣を豪快に決める
月影兵庫の芝居のコントラストが、国民的人気を獲得した理由だろうと思われる。
だがあまりにコメディ路線に走りすぎて、原作者の南條範夫氏からクレームがついてしまい、
1968年12月末に人気絶頂のまま、番組は打ち切りとなった。
しかし、その一週間後、タイトルだけ「素浪人 花山大吉」と改め、番組が再開されたのはご存じの通り。
(制作)テレビ朝日(NET)(原作)南條範夫(監督)佐々木康(脚本)結束信二
(配役)月影兵庫(近衛十四郎)焼津の半次(品川隆二)雪姫(弓恵子)熊五郎(堀正夫)
小金井隼人(浅香春彦)加倉井一角(山本一郎)