旅路   1967年(昭和42年)       ドラマ傑作選

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北海道で鉄道員として働く雄一郎(横内正)は、故郷の紀州で見合いをする。

が、彼は見合い相手の長女よりも、優しく古風な風情を持つ次女、有里(日色ともゑ)に心を惹かれる。


やがて見合いは破談に終わった。しばらくして有里のもとへ、雄一郎から求婚の手紙が届けられる。

雄一郎にひそかに好意を抱いていた有里は、母の反対を押し切って雄一郎のもとに走る。

つつましい結婚式があげられ、有里には鉄道員の妻としての新しい人生がはじまった。


やがて二人のあいだに、長男・秀夫が誕生。

有里は、誠実な夫といとし子のいる平穏な毎日を誇りに思っていた。





昭和9年、丹那トンネルが開通、雄一郎は助役(駅長補佐)になった。

中国大陸における戦火が拡大していく中、姉・はる子(久我美子)の婚儀が挙げられたが、

これが北海道での明るい最後の祝事であった。


新婚早々の姉の夫が、妹の夫が、そして雄一郎が、次々に出征し、大陸に渡る。

戦火が彼らの平和な家庭を、幾十万の平和な家庭をずたずたに引き裂いていったのである…。



戦前、戦中、戦後と国鉄(現JR)一筋に勤めた夫と、共に生きた妻の人生を描いたドラマで、

前作「おはなはん」の樫山文枝と同じく、劇団民芸の新人・日色ともゑがヒロインに起用された。


ドラマでは、良妻の典型とも言えるヒロインのほかに、対照的な二人の女性が登場する。

一人は、戦争で婚期を逸した主人公の姉・はる子を、久我美子が演じている。

もう一人は、貧乏に負けず、生活力のある妹・千枝を、長山藍子が演じている。


主人公の鉄道員・雄一郎には、俳優座の若手ホープ・横内正が抜擢された。

横内の板についた鉄道員の演技が話題を呼び、当時の国鉄総裁(石田礼助)は、本物の鉄道員が

演じているものと勘違いしていたという。


脚本の平岩弓枝が「戦前から戦後にかけて、誰もがたどった日本人の姿」と語ったとおり、それぞれの

登場人物を、わが身に重ね合わせた視聴者も多く、滑り出しから番組は人気を博し、平均視聴率45.8%で

「おはなはん」と肩を並べ、最高視聴率では56.9%とわずかに上回った。



(制作)NHK(脚本)平岩弓枝

(配役)室伏雄一郎(横内正)室伏有里(日色ともゑ)室伏はる(久我美子)室伏千枝(長山藍子)

室伏秀夫(関口宏)室伏嘉一(宇野重吉)室伏しの(岸旗江)岡本良平(山田吾一)

和田三千代(十朱幸代)南部斎五郎(加東大介)伊東栄吉(名古屋章)


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