たんぽぽ 1973年(昭和48年) ドラマ傑作選
高根元(宇津井健)は、親の稼業をついだ家具職人。東京荒川で木工所を営んでいる。
早くに両親を失い、長男の元は親代わりで、弟妹三人を育ててきた。もはや38歳、それで独身である。
次男の大(林隆三)は、本郷の医大を卒業、今は付属病院で精神科医として勤めている。
末弟の順(田中健)は、叔母の家に養子に入っており、音楽の素養を活かして作曲家を目指している。
一方、妹の幸(音無美紀子)は、家事に精を出していたが、幼なじみで会社員の勇(柴俊夫)との
結婚が決まり、来月には式を挙げる段取りにまでなった。
長男の元も、弟妹をここまで育て、面倒をみてきたのは並大抵の苦労ではなかったし、とりわけ妹の幸が
嫁いでいくのは嬉しく、じいーんと熱いものが胸に込み上げてくるのだった。
そんなある日、区の孤児施設の補導員(松原智恵子)が二人の兄妹を連れて、元のもとを訪れる。
用件は、母親が行方不明になってしまい、唯一の身寄りである元に二人を引き取ってほしいという。
補導員の後ろには、中学生くらいの男の子と、小学校一、二年生くらいの女の子が立っていた。
いきなり子供を預かれと言われても、全く身に覚えがない元は、驚きの目を見張るばかりだった。
下町の小さな木工所を舞台に、両親を亡くした職人とその弟妹たちのひたむきな生活を描く。
身に覚えがない二人の兄妹を預かる破目になった元だが、家族や知人からは「隠し子では」と疑われる始末。
ヤケを起こした元は「かまやしねえ、子は親だけのものじゃねえ、世間の大人はみんな親なんでえ」とタンカを切る。
宇津井健はこの時期、TBS「赤い」シリーズ(主演)と、TBS「夜明けの刑事」(署長役)に掛け持ちで出演している。
これら一連のドラマを経て、アクション・スターだった彼は、誠実で安定感のある俳優へと役柄のイメージを拡げた。
また、幸を演じた音無美紀子は、宇津井扮する昔かたぎの職人の妹役として、ひたむきに生きる心優しい女性を好演。
隣のおねえさんといった印象で素朴な魅力を発揮し、若い世代を中心に好感度を大いに高めた。
(制作)NTV(日本テレビ)(脚本)橋田寿賀子
(配役)高根元(宇津井健)高根大(林隆三)高根順(田中健)高根幸(音無美紀子)知(長谷川諭)
直子(斉藤こず恵)川田勇(柴俊夫)旗野葵(松原智恵子)市子(長山藍子)あき(杉村春子)