東京の女性 1939年(昭和14年)     邦画名作選

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君塚節子(原節子)は、自動車販売会社に勤めるタイピストである。

父は失業中で、母と妹の家族四人の暮らしは、彼女が支えている。

やがて、妹の水代(江波和子)も、節子の会社に就職が内定した。

節子は、社内でトップセールスマンの木幡(立松晃)に秘かに想いを寄せていた。

そんな折、父が事故で入院し、費用の捻出のため、節子はセールスマンに転身する。

周囲のやっかみにもめげず、彼女の成績は良好で、木幡を抜く勢いだった。

そんな節子の姿に、木幡の心は妹の水代に移り、姉妹は言い争うようになる…。




原作者の丹羽文雄が、原節子を念頭に置いて執筆したという同名小説の映画化。

原節子が、自動車の販売担当という、キャリア・ウーマンのはしりのようなヒロイン
を演じている。昭和14年当時としては、最先端の職業といってよいだろう。


映画では、自立して男性と対等に働きたいと願う主人公の節子と、結婚に憧れを抱き、
男性に可愛がられようとする妹の水代が、対照的に描かれている。


節子は、英文タイピストから、セールスの仕事に転身し、その能力を大いに開花させていく。

だが、その代償として大切な何か、この映画では、恋人を失うといった形で描かれている。

さらに元恋人から、仕事人間で、男と張り合うような女性は嫌いだ、と言われてしまう。


オフィスにおいて女性は「可愛い華」として存在すればよいのであって、男性と対等に仕事
をするような女性は、まだ必要とされない時代だったのかも知れない。

一方、別の視点から捉えれば、男性並みの気骨精神を持ち、精神的にも経済的にも自立した
女性の登場を願い、物語は作られたのではないかとも考えられる。




 
  製作  東宝

  監督    伏水修  原作 丹羽文雄

  配役    君塚節子 原節子 父栄治郎 藤輪欣司 木幡好之 立松晃
      妹水代 江波和子 母お幾 水町庸子 たき子 水上怜子

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