右門一番手柄　南蛮幽霊  　1929年（昭和4年）　　　　　邦画名作選

                                     

ある日、南町奉行所で役人の慰労会が行われた。

無礼講で「加藤清正の虎退治」が上演され、拍手喝采の裡に終了となった。

だがなんと、虎を演じていた岡っ引の長助が殺害されているではないか。

江戸中の与力同心を嘲笑うかのように、彼らの眼前で殺人事件が発生した。

その疑いは、加藤清正を演じた坂上与二郎（嵐橘右衛門）に向けられた。

だが、どこに消え失せたのか、いるべきはずの坂上与二郎の姿が見えない。

するとそこへ、ひょっこりと現れたのが、同心の近藤右門（嵐寛寿郎）

彼は偏屈で無精者、さらにその無口さゆえに人呼んで「むっつり右門」

早速、岡っ引きのおしゃべり伝六と共に捜査に乗り出すのだが…。




1928年（昭和3年）大衆雑誌「キング」に連載された時代小説家・佐々木味津三の同名小説が原作。

本作は、嵐寛寿郎の当たり役となった「右門捕物帖」の原点とも言うべき第一回作品である。


当時の映画界では、捕物帖はあまり歓迎されなかった。チャンバラ・シーンが少ないからである。

だが、その捕物帖にチャンバラ・スターの嵐寛寿郎を出演させたのは、当時東亜キネマで助監督
をやっていた山中貞雄の尽力によるものだった。


いったん映画が公開されるや、嵐寛寿郎扮する右門が、ラストの大立ち回りで胸のすくような大暴れ。

さらに、むっつり右門のむっつりぶりも大いに受けて、瞬く間に東亜のドル箱シリーズとなってしまった。



 
 
　

  製作   東亜キネマ

  監督   橋本松男　　原作　佐々木味津三