美しさと哀しみと 1965年 (昭和40年) 邦画名作選
大木は、かつて妻子ある身で少女・音子を身ごもらせた過去を持つ。
音子は子供を死産し自殺を図ったが一命を取り留める。
大木はその顛末を小説にして、作家としての地位と名誉を手に入れた。
それから二十年後、大木は京都で画家をしている音子を訪ねる。
そこで彼は、音子の弟子だという坂見けい子と出会う。
音子を敬慕するけい子は、かつて音子を捨てた大木への復讐を誓う…。
川端康成が加賀まりこを念頭に置いて執筆したという同名小説の映画化。
京都に暮らす画家の音子(八千草薫)は、かつて妻子ある小説家・大木(山村聰)
との恋で傷ついた過去がある。
音子を愛する弟子で同性愛者のけい子(加賀まりこ)は、今も大木を恋う音子のため
大木とその家族に復讐を誓う。
それは、音子への報われぬ愛を、嫉妬と憎しみに転化させた意趣返しであった。
官能と狂気を漂わせる魔性の女・けい子を加賀まりこが印象的に演じている。
撮影現場に訪れた川端康成は、加賀まりこの演技を絶賛したという。
映画をきっかけに、川端の孫のように歳の離れた加賀との交際が始まった。
ある場末の小劇場で、加賀が芝居を演じたときに、川端が見学にやってきた。
そこは客が直接床に座って観劇するという、80席ほどのアングラ劇場であった。
ひょっこり訪れた川端康成に、劇場の支配人は大いに恐縮したという。
製作 松竹
監督 篠田正浩 原作 川端康成