横堀川 1966年(昭和41年) ドラマ傑作選


たった35銭をにぎりしめ、吾平が淡路島から大阪へ出たのは、明治39年、彼が15歳のときだった。
めざす家が見つからず、途方に暮れているところを、浪花屋利兵衛(片岡仁左衛門)に拾われる。
浪花屋は、古いのれんを誇る船場の昆布問屋で、利兵衛のほか、長男夫婦、一人娘・多加(南田洋子)、
それに大勢の使用人をかかえた大所帯だった。
吾平(長門裕之)はここで、丁稚として吾吉と呼ばれ、厳しい修業に入った。
そんな吾平を、利兵衛とその娘・多加は、温かく見守るのだった。
大阪商人のメッカ、船場を東西にくぎって流れる東横堀川、西横堀川を背景に、ドラマは展開していく。
老舗の昆布問屋の娘・多加、そこに丁稚奉公をする吾平、二人は、はじめから別々の道を歩む。
やがて成人した多加は、呉服商に嫁ぎ、吾平は浪花屋ののれんを分けてもらい、昆布商として一本立ちする。
多加の夫・吉三郎は、人が好いだけで生来の遊び好き。それがたたって、ついに店をつぶしてしまうが、
多加は夫の尻をたたいて寄席商売を始める。しかし、まもなく夫は、愛人の家で急死。
悲しみから奮い立った多加は一人、寄席稼業に打ち込む。一方、吾平は、そうした多加を陰に陽に助け、
そのうえ没落しかけている主家のために奔走する、忠義一途な男であった。
ドラマはこの二人の商いに賭ける姿を通して大阪商人の土性骨を描いていく。
舞台が船場だけに、とりわけ地元の大阪では、たいへんな反響を呼んで、視聴率もうなぎのぼり。
関西地区では、平均30%前後の高視聴率を記録した。
ところで、ヒロイン多加を演じた南田洋子は、東京生まれの東京育ち。関西出身の出演者の中にあって
大阪弁のセリフにひと苦労。
当初、出演者はすべて関西人を揃える予定で、多加の役も中村玉緒に決まりかけていたが、中村本人の
スケジュールに空きがなく、急遽、長門裕之とのおしどり出演となった。
たまたまプロデューサーのひとりに、船場出身の人がいたので、彼女の分のセリフをぜんぶ、テープに
吹き込んでもらい、東京へ帰る新幹線の車中や、ベッドに入ったときに猛勉強したという。
また、この番組の話題のひとつに背景のセットの豪華さがある。たとえば、船場の古い商家を、資料を
調べあげて、本物そっくりに造り上げたり、大正時代の市電をそのまま再現して、スタジオのなかを
走らせたり、大道具担当者の、そういった苦労も番組の人気に結びついている。
(制作)NHK(原作)山崎豊子(脚本)茂木草介
(配役)八田吾平(長門裕之)多加(南田洋子)浪花屋利兵衛(片岡仁左衛門)吾平の母(北林谷栄)
吾平の妻・千代(高森和子)河島吉三郎(金田龍之介)ガマ口(藤岡琢也)梅(林美智子)
