前略おふくろ様 1975年(昭和50年) ドラマ傑作選
片島三郎(萩原健一)は、郷里の山形に年老いた母親を残し、集団就職で上京した。
職を転々とし、今は東京・深川の料亭「分田上」で板前修業に励んでいる。
仕事場では先輩の板前からは「サブ」、おかみさんや仲居さんからは「サブちゃん」、
店にやってくる鳶職人の利夫(川谷拓三)からは「お兄ちゃん」と呼ばれている。
女性にはなぜかよくモテた。仲居のかすみ(坂口良子)からも好意を寄せられている。
三郎も、かすみのことは、まんざら嫌いでもないが、どっちつかずの態度を取っていた。
何せ、かすみは鳶の頭領の一人娘。しかも半田妻吉(室田日出男)という強面の小頭が、
将来はかすみと結婚し、ゆくゆくは頭領になる、と周囲の者が半ば決めているからだ。
この半妻という男、とにかく筋が通らないことが大嫌い。しかも、かすみに惚れている。
何かあるたびに、飲み屋へ三郎を呼び出しては「それは筋が違うんじゃねえか」と脅すのだ。
そんな三郎の戸惑いを知ってか知らずか、かすみは積極的に押してくる。
どうも手放しでは好きとは言えず、たじたじとなる三郎であった。
照れ屋で臆病な板前・片島三郎の青春を描いた下町人情ドラマ。
三郎が初めて惚れた先輩の板前・秀次(梅宮辰夫)との師弟関係、鳶の頭領の一人娘
かすみとの恋模様、老舗の料亭が経営難に陥る、などのエピソードが綴られる。
前作「太陽にほえろ」「傷だらけの天使」で、シラケ世代の反抗的な役柄を演じた萩原が
本作では、優しく気の弱い青年に扮してイメージを一新、本格的な役者への転身に成功した。
主人公・三郎の母親役に、戦前からの大女優・田中絹代が演じ、また板前に扮した梅宮辰夫、
鳶職人の室田日出男や川谷拓三など、個性豊かな脇役陣の存在も際立っていた
(制作)日本テレビ(NTV)渡辺企画(脚本)倉本聡
(配役)片島三郎(萩原健一)片島益代(田中絹代)村井秀次(梅宮辰夫)浅田ぎん(北林谷栄)浅田ミツ子(丘みつ子)
岡野海(桃井かおり)渡辺かすみ(坂口良子)政吉(小松政夫)半田妻吉(室田日出男)利夫(川谷拓三)
渡辺甚吉(加藤嘉)岡野次郎兵衛(大滝秀治)