6月14日 水車小屋 (Water Mill) |
その昔、田園の小川のほとりはロマンチックな逢引の場所のひとつだった。
そこはまた穀物を粉にする水車小屋のある所でもあった。
水車小屋は、作業にかかる人員を大幅に削減できる施設であり、中世の領主たちは、
穀物を製粉する「粉挽き」と呼ばれる職業の者をやとって小屋を管理させていた。
水車小屋は略奪を防ぐために堅牢に作られ、銃や刀剣などの武器も装備されていた。
どこからともなく流れてくる水を用いて製粉を行う水車小屋は、どこか神秘的であり、
農民たちにとっては異界のような場所だったという。
ケルト神話に登場する水車小屋の妖精キルムーリス(Killmoulis)などは、
こうした印象を元に生み出されたものだと考えられる。
主食がパンであったヨーロッパにおいては、大量の製粉設備が必要であり、5世紀から
12世紀の中世において、ヨーロッパ全域に水車が利用され最盛期を迎えた。
18世紀初頭、蒸気機関の発明とともに、水車の数は激減することになる。
だが水車の牧歌的景観は田園風景によくなじむものとして、観光目的などで残されたり、
再建されたりしている。
写真は、スウェーデン南部の都市ルンド(Lund)の民族野外博物館に展示されている水車小屋。
博物館では、ヨーロッパ中世の水車や風車などの歴史遺産、文化が野外に展示紹介されている。
(住所:クルトゥーレン・オスタープ民族野外博物館 Kulturens Ostarp, Scania, Sweden)
キルムーリス(Killmoulis)
スコットランド低地地方の水車小屋に住む妖精。
口がなく、巨大な鼻から食物を食べる奇怪な妖精である。
水車小屋で粉挽きの手伝いをしてくれるが、麦に灰を吹きかけるといった悪ふざけをすることもある。
また乳しぼりも手伝い、ハロウィーンには、家族の未来を占った。
家族に災難が起こりそうになると、泣きわめきながら警告するという。
Carol Rose (Spirits, Fairies, Leprechauns, and Goblins: An Encyclopedia))