妻二人   1967年(昭和42年)     邦画名作選
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柴田健三(高橋幸治)は、かつては作家志望だったが、今は婦人雑誌社の重役を務めている。

彼は社長の長女・道子(若尾文子)と結婚し、次期社長候補として将来を嘱望されている。


ある日健三は、作家を志していた当時、同棲していた恋人の順子(岡田茉莉子)と再会する。

順子は、かつての健三のように作家を目指す小林(伊藤孝雄)の生活の面倒を見ていた。


健三と順子の過去を知った小林は、健三の妻・道子に近づき、それをネタに金を要求する。

その夜小林が拳銃で殺され、容疑者として順子が連行される。


健三は犯行時刻に順子と一緒にいた事実を公表しようと決意するが、道子の異変に気づき問いただす。


真実は、小林が強姦しようとして道子に迫り、誤って発砲してしまったのだ。

警察に真実を言えば道子が、言わなければ順子が … どちらも見捨てられない健三は苦悩するのだった。




原作は、米国のミステリー作家・P ・クェンティン(Patrick Quentin)の

推理小説「二人の妻を持つ男(The Man with Two Wives 1955)」

それをもとに新藤兼人が脚色、増村保造がミステリー趣向で演出した異色作。


物語は、ある一人の男(高橋幸治)を愛する対照的な二人の女性の皮肉な運命が

絡み合い、周囲を巻き込む殺人事件に発展してしまう。

その事件は男の妻(若尾文子)と元恋人(岡田茉莉子)が関わっており、

男は真実を告げるべきか、決断をせまられる。


ラスト、男の証言と妻の告白で、無実の女(岡田)は釈放される。

それでも彼は彼女を選ばない。すべて失った妻(若尾)と生きるという。


だが女(岡田)は、彼の変わらぬ愛情を確認できたことに満足している。

二人の女は、種類は異なるが、同じ重さの愛を男から獲得したのである。



本作は、共演の岡田茉莉子を松竹から借り受ける形で制作された。

「妻二人」というタイトルから予想されるように、二大女優の若尾と岡田を

均等に扱って競合させようという制作意図が伺われる。


若尾と岡田はそれぞれ、男を出世させても愛を得られない妻、そして愛すれども

男に捨てられる女を演じ、ドラマは同じ男を愛した対極にいる女どうしの間に、

対抗心と共に生まれる不思議な共感といった心理に焦点を当てて描かれている。



 
 
 
  製作   大映

  監督   増村保造
  原作  パトリック・クェンテ

  配役    永井道子 若尾文子 永井昇平 三島雅夫
      柴田健三 高橋幸治 永井利恵 江波杏子
      雨宮順子 岡田茉莉子 小林章太郎 伊藤孝雄

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