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【第五課 第十四節】 小説読解
「无人生还」 阿加莎·克里斯蒂
瓦格雷夫法官先生刚刚退休。
此刻他正坐在一等车厢的吸烟室角落里,一边吸雪茄,
一边饶有兴致地读《泰晤士报》上的政治新闻。
他放下报纸,眺望窗外。列车在萨默塞特平原上疾驰。
他看看手表,还有两小时的路程。
瓦格雷夫法官回想着报纸上有关士兵岛的各种奇闻逸事:
据说首位岛主是个美国富翁,酷爱帆船运动,
于是买下这座德文郡海岸附近的孤岛,在岛上建了一幢豪华时髦的别墅。
可惜他新婚的第三任太太非常怕水,结果只能连房带岛一起挂牌出售。
随之而来的是报纸上铺天盖地的广告。
后来传出一则简讯,称一位名叫欧文的先生买下了整座岛和别墅。
打那时起,关于士兵岛的流言飞语就传开了。
有人说士兵岛的真正买主是好莱坞大明星加布里埃尔•特尔!她为了避开公众视线,来岛上躲几个月清净。
署名为“大忙人”的记者又含沙射影地透露,说这座岛将成为皇亲国戚的私邸!
“结婚季先生”则称是一位青年贵族一掷千金,买下该岛当蜜月爱巢。
还有个名叫乔纳斯的人说自己得到可靠消息,海军部买下了这个地方,准备搞几项秘密试验。
总之,有一点可以肯定:士兵岛成了新闻!
瓦格雷夫法官从口袋里掏出一封信。尽管手写笔迹模糊不清,一些词却格外清晰。
亲爱的劳伦斯⋯⋯一别多年⋯⋯务请光临士兵岛⋯⋯实为景色迷人之地⋯⋯
畅谈往日云烟⋯⋯拥抱自然⋯⋯沐浴阳光⋯⋯十二点四十分由帕丁顿车站出发⋯⋯在橡树桥恭迎⋯⋯
署名是位女士,花体签名是:康斯坦斯•卡尔明顿。
瓦格雷夫法官使劲回忆上次见到康斯坦斯•卡尔明顿夫人的具体时间。
想来已时隔七年,不,八年了!
后来她去了意大利,为的是沐浴阳光,让心融化在田野乡间。
据说之后又去了叙利亚,想必那里的阳光更加充足,她可以与大自然和贝都因人亲密无间。
康斯坦斯•卡尔明顿,他猛然忆起,她正是那种会独自买下一座孤岛的女人,这样做能让她显得更加神秘!
瓦格雷夫法官微微点头,觉得自己的推断挺有道理。
他的头随着列车的节奏点着、点着⋯⋯。
他睡着了⋯⋯。
维拉•克莱索恩闭着眼,头往后靠着。
三等车厢里除了她,还坐着五名乘客。这种天气坐火车旅行太热了!所以去海边一定非常舒服。
能找到这样一份工作真幸运。
一般来说,像她这样找假期工作,十之八九是摊上照看一群孩子的活儿,哪儿那么容易找到秘书之类的工作。
就算是职业妇女介绍所也帮不上忙。可就在她发愁的时候,这封信如期而至。
我收到职业妇女介绍所对你的推荐,从推荐信来看,他们对你深为了解。
我同意支付你所期望的薪水,并希望你在八月八日入职。
火车十二点四十分从帕丁顿车站出发。有人会到橡树桥车站接你。另附现金五镑作为旅途开支。
乌娜•南希•欧文
信头打印了地址,德文郡斯蒂克尔黑文的士兵岛⋯⋯
士兵岛!就是它!最近的报纸除了它简直就不谈别的了!
流言飞语和各种猜测,说什么的都有,不过绝大部分可能都是空穴来风。
但是,岛上的别墅归一位百万富翁所有,这个说法确凿无疑。
而且,用奢华至极来形容这幢别墅绝对没错。
上个学期,维拉•克莱索恩在学校里忙得不可开交。她不甘心地想:
一个只能带孩子做游戏的女教师,在一所三流学校里混日子能赚几个钱?
要是能去体面些的学校工作,恐怕会好得多⋯⋯
想到这里,她突然不寒而栗。
心想:“能找到一份教师的工作已经谢天谢地了。
谁都不愿听到死因审讯这类话,就算验尸官已经帮我开脱了所有罪名,想起来还是后怕!”
就连他都对她当时的表现和勇气称赞不已,她对此念念不忘。就说那次死因审讯吧,简直不能再顺利了。
汉密尔顿夫人对她非常照顾——只有雨果——算了,何必去想雨果呢!
想到这里,尽管车厢里是那样闷热,她却突然打起寒战来。真希望自己现在不是去海边!
当时的情景历历在目!她眼前是西里尔的脑袋在水面上一起一伏,
漂向岩石⋯⋯他的脑袋在水面上一起一伏,一起一伏⋯⋯而她就跟在他身后,摆出一副奋力向前游的架势,
其实她心里再清楚不过,自己无论如何也追不上他了⋯⋯。
那片海——那片温暖的深蓝色的大海——躺在柔软的沙滩上度过整个早晨⋯⋯雨果⋯⋯雨果说他爱她⋯⋯。
她一定不能去想那个叫雨果的男人⋯⋯。
她睁开双眼,眉头紧锁,瞥了一眼坐在她对面的男人。这个男人身材高大,棕色的皮肤,
两只浅色眼睛的间距很窄。他的嘴型看起来很傲慢,一副不屑一顾的模样,表情近乎残忍。
她想:对面这个男人一定去过很多不可思议的地方,见过很多有意思的事⋯⋯。
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【注 釈】
【无人生还】 wú rén shēng huán 「そして誰もいなくなった」
アガサ・クリスティ作。1939年 発表。原題は 「Ten Little Niggers」
孤島に招き寄せられたのは、たがいに面識もない、職業や年齢もさまざまな十人の男女だった。
だが、招待主の姿は島にはなく、やがて夕食の席上、彼らの過去の犯罪を暴き立てる謎の声が ……
そして無気味な童謡の歌詞通りに、彼らが一人ずつ殺されてゆく!
クローズド・サークル、外界とは隔絶された状況下で事件が起こる推理小説の代表的作品。
【阿加莎•克里斯蒂】 ā jiā shā•kè lǐ sī dì 「アガサ・クリスティ」 (Agatha Christie)(1891~1976)
イギリスの女流作家。ベルギー人の名探偵ポワロの活躍する作品で世界的人気を博した。
ほかに中年女性ミス・マープルを探偵役とするシリーズがある。
代表作に 「オリエント急行殺人事件」 (Murder on the Orient Express)、
「アクロイド殺人事件」 (The Murder of Roger Ackroyd) など。
阿加莎·克里斯蒂(Agatha Christie 1891-1976)英国女小说家。
16岁时到巴黎学声乐不成,此后到中东游历,一次大战期间,因丈夫参军,读侦探小说解闷,并开始代笔。
一生著有70多部长篇小说、多部短篇小说、十四部剧本、一本诗集,其中以侦探小说为主,有 「侦探小说女皇」之称。
小说被译成多国文字,有的还被改编成电影剧本,塑造的比利时侦探波洛的形象深入人心。
小说以构思精巧、情节离奇、推理严谨、引人入胜著称。代表作有「东方快车谋杀案」、「峡谷」、「歪房子」、「尼罗河上的惨案」、
「玫瑰和水松」、「捕鼠器」、「罗杰·艾克罗伊德谋杀案」等。
【瓦格雷夫法官】 wǎ gé léi fū fǎ guān ウォーグレイヴ判事。
【饶有兴致】 ráo yǒu xìng zhì 興味深々に。
【泰晤士报】 tài wù shì bào タイムズ。(the Times) イギリスの日刊紙。
【萨默塞特】 sà mò sè tè サマーセット(Somerset) イングランド南西部の県。
【士兵岛】 shì bīng dǎo 兵隊島 (soldier Island) デヴォン州 (Devon) 近郊の島。
【奇闻逸事】 qí wén yì shì 珍しい記事。
【德文郡】 dé wén jùn イングランド南西部デヴォン州 (Devon)
【挂牌出售】 guà pái chū shòu 看板をかけて売り出す。
【铺天盖地】 pū tiān gài dì 天地がひっくり返る。
【欧文】 ōu wén オーウェン。人名。
【流言蜚语】 liú yán fēi yǔ 根も葉もないウワサ。
【好莱坞】 hǎo lái wū ハリウッド (Hollywood)
アメリカ、カリフォルニア州ロサンゼルス北西部の一地区。アメリカ映画産業の中心地。
【加布里埃尔•特尔】 jiā bù lǐ āi ěr • tè ěr ガブリエル・タール。人名。
【大忙人】 dà máng rén 「おせっかいな蜜蜂」 (Busy Bees) ゴシップ誌。
【含沙射影】 hán shā shè yǐng それとなく誹謗中傷する。
【皇亲国戚】 huáng qīn guó qī 皇室の親戚。
【结婚季先生】 jié hūn jì xiān sheng 「気象台」 (Mr Merrywhether) ゴシップ誌。
【蜜月爱巢】 mì yuè ài cháo ハネムーンの寝室。
【乔纳斯】 qiáo nà sī 「ジョナス」 (Jones)人名。
【劳伦斯】 láo lún sī ロレンス。 人名。
【往日云烟】 wǎng rì yún yān 昔話。
【帕丁顿】 pà dīng dùn pà dīn g dùn パディントン (Paddington) ロンドンの主要駅。
【橡树桥】 xiàng shù qiáo オークブリッジ駅。(Oakbridge Station)
【花体签名】 huā tǐ qiān míng 装飾文字の署名。
【康斯坦斯•卡尔明顿】 kāng sī tǎn sī • kǎ ěr míng dùn コンスタンス・カルミルトン。人名。
【叙利亚】 xù lì yà シリア。(Syria) 地中海に面するアラブ共和国。首都ダマスカス。
【贝都因人】 bèi dōu yīn rén ベドウィン人。(Bedouin)
中東・北アフリカの砂漠に住むアラブ系遊牧民。ラクダ・羊などを飼育。
【维拉•克莱索恩】 wéi lā • kè lái suǒ ēn ヴェラ・クレイソーン(Vera Claythorne)人名。
【乌娜•南希•欧文】 wū nà • nán xī • ōu wén ユーナ・ナンシー・オーウェン(Una Nancy Owen)人名。
【斯蒂克尔黑文】 sī dì kè ěr hēi wén スティクルヘイヴン(Sticklehaven)地名。
【空穴来风】 kōng xué lái fēng 流言飛語。根拠のない話。
【验尸官】 yàn shī guān 検視官。死因を調べる検察官。
【汉密尔顿】 hàn mì ěr dùn ハミルトン(Hamilton)人名。
【雨果】 yǔ guǒ ヒューゴー (Hugo)人名。
【西里尔】 xī lǐ ěr シリル(Cyril)人名。
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【口語訳】
「そして誰もいなくなった」 アガサ・クリスティ
先頃司法官を退職したウォーグレイヴ判事は、一等喫煙車の隅に座り、葉巻をくゆらせていた。
彼は「タイムズ」紙の政治記事を熱心に読みふけっていたが、ふと手にした新聞をおろし窓の外を眺めた。
列車はちょうどサマーセット平野を走行していた。
彼は腕時計をちらっと見た――到着まであと二時間だ。
彼は兵隊島(Soldier Island)で発生した興味深い記事に思いをめぐらせていた。
新聞では、このデヴォン州の海岸に近い島をはじめに買い取ったのは、ヨット好きのアメリカの富豪だと言う。
そして、そこに建てられたモダンな邸宅が、どんなに豪奢なものかが伝えられた。
ところが、あいにくと富豪の三番目の妻は、水を怖がるたちだった。
そこでやむなく、島と邸宅は売りに出されることになる。
まもなく新聞には、島の買い手を求める広告がでかでかと掲載された。
やがて買い手がついたという記事が伝えられた。
オーウェン氏なる人物が、先頃この島と邸宅を買い取ったということである。
それ以後、巷のジャーナリストたちが様々なゴシップ記事を流し始めた。
兵隊島は、実はハリウッドの映画スター、ガブリエル・タール嬢に買い取られたというのが真相らしい。
彼女はそこで数か月、メディアを避けた静かな生活を過ごそうと考えているという。
「おせっかいな蜜蜂」紙の記者に至っては、その島はさる皇室の親戚の住まいになったなどともっともらしくほめのかしていた。
「気象台」紙が伝え聞いたところによれば、この島はある青年貴族のものになったとか。
なんでもハネムーンの準備のために買い取られたらしい。
また「ジョナス」なる人物の話によれば、その島はある極秘の実験をするために海軍に買い取られたとのことである。
いずれにしても兵隊島は間違いなく、ニュースの目玉になっていたのである。
ウォーグレイヴ判事はポケットから一通の手紙を取り出した。
筆跡がぞんざいで見分けにくいが、ところどころに特別はっきりわかる字句が見える。
親愛なるロレンス様……あなたとお別れしてから長い年月が……
ぜひ兵隊島へおいでください……最も人を魅惑する場所……お話ししたいことがたくさんあって……
過ぎ去った昔の……自然と一体になって……日光を浴び……
パディントン駅発十二時四十分の……オークブリッジ駅でお待ちして……
手紙を書いた人物は、下に「あなたのコンスタンス・カルミルトン」と飾り文字で署名していた。
ウォーグレイヴ判事は記憶をたどりはじめた。
そして前回コンスタンス・カルミントン夫人に会った時のことを思い出した。
あれは間違いなく七年――いや、八年前の事だ。
夫人はその時、自然に囲まれて、日光浴をするのだと言って、はるばるイタリアまで出かけていった。
それから、彼女は更にシリアまで足を運んでいた。
聞くところによると、陽光に恵まれた大自然の中で、ベドウィン人と生活を共にするためだとか。
ウォーグレイヴ判事は心の中で思った。
たしかに彼女コンスタンス・カルミルトンは、島を買い取って神秘的な雰囲気の中に身を置きたがる女にちがいないと。
自分の出した結論に満足した判事は、みずから何度もうなずいた。
そして、列車の揺れとともに、うなずきながらそのまま……彼は眠った……。
ヴェラ・クレイソーンは目を閉じ、シートの背に頭をもたせかけた。
三等車には彼女のほかに五人の乗客が乗っていた。
この天気では列車で旅行するには暑すぎる。
だから海に着いたら、さぞかし気持ちがいいに違いない。
今回、秘書の仕事をもらえたのは、本当にラッキーだった。
これまで夏休みのアルバイトと言えば、大勢の子供の世話と相場がきまっていた。
職業紹介所も、秘書の仕事などはそう簡単には見つからないと言っていた。
あきらめていた矢先に、この手紙がやってきた。
職業婦人紹介所からあなたを推薦されました。
紹介所の方は、あなたのことをよく知っておられるようですね。
あなたが希望する給料をお支払いしますので、八月八日から勤務してほしいと思います。
パディントン駅を十二時四十分に出発する列車に乗っていただければ、オークブリッジ駅に迎えを出します。
とりあえず旅費として現金五ポンドを同封いたします。
ユーナ・ナンシー・オーウェン
手紙の表に、住所が印刷されており、それはデヴォン州のスティクルヘイヴンにある兵隊島となっていた。
兵隊島と言えば、最近新聞で大いに話題になっているあの島ではないか。
噂や憶測が、いろいろと飛びかっているが、そのほとんどは作り話に違いない。
だが島にある邸宅は、一人の大富豪の所有物であることはどうやら本当らしい。
その邸宅は贅を尽くした豪邸という評判だ。
夏休み前、ヴェラ・クレイソーンは学校の仕事に追いまくられていた。
子供の面倒しかできない女教師が、三流の学校でごろごろしていても、いくらも稼げない。
もっとましな学校で働けたら、もっとよかったのに……そう思って、はっとした。
でも今の教師の仕事があるだけでも幸運だったかも知れない。
死因の取調べと聞いただけで、世間はいやな顔をするだろう。
たとえ検視官が私に責任はないと言ってくれたとしても、あの出来事を思い出すだけでもぞっとする。
検視官が、子供をなんとか助けようとした私の勇気と行動をほめてくれたことも忘れられない。
検死の取調べとしては、あのとき以上の判定はきっと望めないだろう。
母親のハミルトン夫人も、私にとてもやさしくしてくれた。
でも——ヒューゴーだけは——だめ、ヒューゴーのことは、とても考える気になれない!
そう思うと、客車の中はうだる暑さなのに、急に寒気が襲って来た。
もう海に行きたくない、そう思った。
あのときの光景がありありと頭の中に浮かんだ。
岩に向かって泳いでいる子供のシリルの姿が、彼女の目の前に現れる。
彼の頭が、水面に浮き上がっては沈み、また浮かんでまた沈み……。
私は彼の後を追って泳いだ、とうてい追いつけないとわかっていたのに……。
あの海で──あのあたたかい紺色の海の柔らかい砂浜で、私は寝転んで朝を過ごした。
──ヒューゴーは私を愛していると言った──だめ、彼のことを考えてはいけない!
彼女は目を開け、眉間に皺を寄せ、向かいに座る男をちらりと見た。
この男は背が高く浅黒い肌をしていて、薄い色の二つの目の間隔が狭く、
口元がふてぶてしく、ちょっと冷酷な感じさえする。
この男はきっと、世界中の、面白そうな場所に行ったことがあるのよ。
きっと、変わったこと、珍しいことを、あれこれ見聞きしているのよ、ふとそう思った。