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【第五課 第十四節】   小説読解


  「东方快车谋杀案」     阿加莎·克里斯蒂  


叙利亚的冬季,清晨五点钟。

阿勒颇站台旁停着一辆在铁路指南上美其名曰托罗斯快车的火车。
上面有一节厨房车、一节餐车、一节卧铺车厢和两节普通客车厢。

通向卧铺车厢的踏板旁边,站着一个年轻的法国中尉,穿着一身醒目的制服,正在跟一个矮个子男人说着什么。
后者用围巾把脑袋裹得严严实实的,只露出一个红彤彤的鼻尖和两撇向上翘起的小胡子。

天气寒冷,为一位高贵的陌生人送行这份工作可不怎么令人羡慕,
但中尉迪博斯克还是勇敢地坚守在岗位上,用优雅的法语说着优美的词句。


实际上,他并不明白这一切究竟是怎么回事。

当然,在这种情况下总有一些谣言。将军——他的将军——的脾气越来越坏。
然后来了一个陌生的比利时人,好像是大老远从英国过来的。

过了一星期——无缘无故紧张的一星期——再后来发生了某些事,一位很有名的军官自杀了,
另外一位突然宣布辞职,那些焦虑的脸上忽然没有了焦虑,一些军事防御措施也放松了,
而将军——迪博斯克中尉的顶头上司——好像忽然年轻了十岁。

迪博斯克偶然听到了将军和陌生人的一部分谈话。
“你救了我们,亲爱的,”将军充满感情地说,白色的大胡子激动得直哆嗦,
“你挽救了法国军队的荣誉——避免了很多流血事件!你接受了我的请求,我该怎么感谢你才好啊!你这么远过来——”

这个陌生人(他的名字是赫尔克里·波洛)回答得很恰当,其中有这么一句:
“可你确实救过我的命,我怎么能忘记呢?”

接着将军也很恰当地作了回答,表示过去的那件事不值一提。
又提到了法国、比利时、光荣与荣耀诸如此类的话题,彼此热情拥抱之后结束了谈话。

至于两个人说的究竟是什么,迪博斯克中尉仍然是摸不着头脑,但是他被委以重任,
护送波洛先生登上托罗斯快车,作为一个有着远大前程的青年军官,他怀着满腔热情执行这一任务。


“今天是星期日,”迪博斯克中尉说,“明天,星期一晚上,您就到斯坦布尔了。”
他不是头一次这么说了。火车发动之前,站台上的对话多少会有些重复。

“是啊。”波洛先生表示赞同。
“我想,您打算在那儿待几天吧?”

“没错。我从没去过斯坦布尔,错过了会很遗憾的——是的。”
他说明似的打了个响指,“没有负担——我会在那儿游览几天。”

“圣索菲,很漂亮。”迪博斯克中尉说,不过他可从来没见过。

一阵冷风呼啸着吹过站台,两人都打了个冷战。
迪博斯克中尉偷偷地瞄了一眼手表。四点五十五分——离开车只剩下五分钟了!

他唯恐对方注意到他偷看手表,赶紧继续说道:
“每年这个时候,旅行的人都很少。”他说着,看了看他们上方的卧铺车窗。

波洛先生附和道。“是这样”

“但愿您别被大雪困在托罗斯!”
“以前有过吗?”
“有过,是的。今年还没有。”

“但愿吧,”波洛先生说,“欧洲来的天气预报,说不太好。”
“很糟糕,巴尔干的雪下得很大。”
“我听说德国也是。”

“好吧,”对话又要中断了,迪博斯克中尉赶紧接着说,“明天晚上七点四十分,您就到君士坦丁堡了。”
“是的,”波洛先生也拼命地接着话茬儿,“圣索菲,我听说很漂亮。”

“我相信肯定棒极了。”


他们头顶上一节卧铺车厢的窗帘被拉到一边,一个年轻的女人往外看了看。

自从上个星期四离开巴格达之后,玛丽·德贝纳姆就睡眠不足,不管是在去往基尔库克的火车上,还是摩苏尔的旅店中,
甚至在昨晚的火车上,她都没睡好。这会儿,躺在闷热不通风的车厢里睡不着,实在让人厌烦,于是她起身向外张望。

这一定是阿勒颇。当然没什么好看的,只有一个长长的、光线暗淡的站台,以及不知从什么地方传来的喧闹而暴怒的阿拉伯语吵骂声。
她窗户下面有两个男人正在用法语交谈,其中一位是个法国军官,另一位是个留着夸张小胡子的小个子。

她微微笑了笑。她从未见过穿得如此严实的人。外面肯定非常冷,难怪他们把车厢弄得这么热。她想把车窗拉低一点,可是拉不动。

卧铺车的列车员向两个男人走来,说火车就要开了,先生最好上车。

小个子男人抬了抬帽子。他的脑袋简直就像一颗鸡蛋!尽管之前有些出神,玛丽·德贝纳姆还是笑了。
一个滑稽可笑的小个子,无须把这种人当回事儿。

迪博斯克中尉说着道别的话,他早就想好了,直到最后一分钟终于派上了用场,说得很是漂亮优雅。
波洛先生不甘落后,回答得同样优美……。

“请上车,先生。”卧铺列车员催促着。波洛先生装出一副万般不舍的样子上了火车。
列车员跟在他身后也爬上了火车。波洛先生挥动着双手。迪博斯克中尉向他敬礼。火车猛地一动,缓缓向前开去。

“可算结束了!”波洛先生嘟囔着。
“嗬,嗬。”迪博斯克中尉颤抖着,这才意识到自己冻坏了。



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【注 釈】


东方快车谋杀案】 Dōng fāng kuài chē móu shā àn    「オリエント急行殺人事件」
アガサ・クリスティ作。1934年 発表。原題は  「Murder on the Orient Express 」

三日間のヨーロッパ横断の旅にのぼったオリエント急行は、厳寒の季節には似合わず、いつになく混んでいた。
列車はユーゴスラヴィアの山中で大雪のため立ち往生し、その鍵のかかった車室で、一人の大富豪アメリカ人が死んだ。
他殺の疑いが濃かった。満身に12カ所もの刺し傷を受けていたのだ。
密室状況の豪華な列車内で起こった奇妙な事件に、乗り合わせた名探偵ポワロが捜査を開始する。
しかし、車輛の乗客には、すべてアリバイが ・・・・。


阿加莎•克里斯蒂】 ā jiā shā•kè lǐ sī dì  「アガサ・クリスティ」 (Agatha Christie) (1891~1976)

イギリスの女流作家。ベルギー人の名探偵ポワロの活躍する作品で世界的人気を博した。
ほかに中年女性ミス・マープルを探偵役とするシリーズがある。
代表作に 「オリエント急行殺人事件」 (Murder on the Orient Express)、
「アクロイド殺人事件」 (The Murder of Roger Ackroyd) など。


阿加莎·克里斯蒂(Agatha Christie 1891-1976)英国女小说家。

16岁时到巴黎学声乐不成,此后到中东游历,一次大战期间,因丈夫参军,读侦探小说解闷,并开始代笔。
一生著有70多部长篇小说、多部短篇小说、十四部剧本、一本诗集,其中以侦探小说为主,有 「侦探小说女皇」之称。
小说被译成多国文字,有的还被改编成电影剧本,塑造的比利时侦探波洛的形象深入人心。
小说以构思精巧、情节离奇、推理严谨、引人入胜著称。代表作有「东方快车谋杀案」、「峡谷」、「歪房子」、「尼罗河上的惨案」、
「玫瑰和水松」、「捕鼠器」、「罗杰·艾克罗伊德谋杀案」等。



叙利亚】 xù lì yà  シリア。(Syria) 地中海に面するアラブ共和国。首都ダマスカス。
阿勒颇】 ā lè pō  アレッポ。 (Aleppo) シリア北部の都市。
美其名曰】 měi qí míng yuē  聞こえのよい名称で

托罗斯快车】 tuō luó sī kuài chē  タウルス急行  (Taurus Express)
バクダッド ~ イスタンブール間を結ぶ寝台列車。トルコのタウルス山脈を越えて走る。
シリアで難事件を解決した探偵エルキュール・ポワロは、タウルス急行をイスタンブールで乗り継ぎ、オリエント急行でロンドンへ向かう。

红彤彤的鼻尖】 hóng tōng tōng de bí jiān  真っ赤な鼻
迪博斯克】 dí bó sī kè  デュボス (Dubosc) (人名)
比利时人】 bǐ lì shí rén  ベルギー人
赫尔克里·波洛】 hè ěr kè lǐ · bō luò  エルキュール・ポワロ  (Hercule Poirot) 探偵。
大きな口ひげを生やし服装などにうるさく、いつも自信たっぷりな小柄の老ベルギー人。

摸不着头脑】 mō bù zháo tóu nǎo  見当がつかない
委以重任】 wěi yǐ zhòng rèn  大切な仕事を任せる
斯坦布尔】 sī tǎn bù ěr  イスタンブール (Istanbul)
トルコ北西部、ボスポラス (Bosporus) 海峡に臨む都市。
東ローマ帝国・オスマン帝国の首都で、モスクなどのイスラム建築群は、世界遺産。

圣索菲】 shèng suǒ fēi  聖ソフィア寺院 (Hagia Sophia)
537年、東ローマの皇帝ユスチニアヌス1世 (Justinian 1) が、
首都コンスタンチノープル (Constantinople) に建立したビザンチン建築の大聖堂。
1453年、オスマントルコの征服以後はイスラム教のモスクとなった。
現在は無宗教の博物館となっている。

巴尔干】 bā ěr gàn  バルカン。(Balkans)ヨーロッパ大陸の東南部,地中海に突出する大半島
君士坦丁堡】 jūn shì tǎn dīng bǎo  コンスタンチノープル (Constantinople)
イスタンブールの旧称。東ローマ帝国・オスマン帝国の首都。
接着话茬儿】 jiē zhe huà chár  言葉を継いで

玛丽・德贝纳姆】 mǎ lì · dé bèi nà mǔ    メアリ・デブナム(Mary Debenham)(人名)
基尔库克】 jī ěr kù kè    キルクーク(Kirkuk)イラク北東部の都市。
摩苏尔】 mó sū ěr    モスル(Mosul)イラク北部の都市。



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【口語訳】


「オリエント急行殺人事件」       アガサ・クリスティ


シリアの冬の朝、五時だった。
アレッポ駅のホームに列車が入っている。

鉄道案内に「タウルス急行」と仰々しい名で紹介されている列車だ。
キッチンを備えた食堂車二両、寝台車一両、そして客車二両の編成である。

寝台車の乗降口に、見栄えのする軍服を着た若いフランス陸軍中尉が立っている。
彼は小柄な男と話をしていた。

小柄な男は頭から耳まですっぽりとマフラーを巻いていた。
先端が赤くなった鼻と、両端が上に跳ねあがった口ひげ以外、何も見えない。

天候はかなり冷え込んでいた。
こんな時に見知らぬ名士を見送るのは、決して人の羨むような仕事ではなかった。

それでもなお、デュボス中尉は意欲的に自らの任務を遂行していた。
彼は優美なフランス語を話し、言葉遣いは上品でなめらかだった。



ここシリアでは、ある重大事件が発生していた。

だがデュボス中尉は、今回の事件について、詳しい事情は何も知らされていなかった。
もちろん、さまざまな噂が流れていたのだが。

彼の上官である将軍の機嫌は悪くなる一方だった。

やがて、この見知らぬベルギー人が現れた。
イギリスからはるばるやって来たとのことである。

それからの一週間は、わけの分からない緊迫した一週間だった。

立て続けにいくつかの事件が発生した。
高名な将校が一人自殺し、もう一人が軍をやめた。

やがて、人々の顔から不安感が消え、軍の警戒態勢が解除された。
デュボス中尉が仕える先述の将軍は突然、十歳も若返ったような顔になった。


デュボス中尉は、将軍とこのベルギー人との会話を、ふと耳にしたことがあった。

「あなたのおかげで救われました」
将軍は、大きな白い口ひげを震わせて、高ぶった声で語った。

「あなたはフランス軍の名誉を救ってくださった。
あなたは流血の惨事を未然に防いでくれたのだ!

はるばるとお越しいただき、私の願いを聞いてくださって、
なんとお礼を言えばよいのやら。」

そのベルギー人(エルキュール・ポワロ)は如才なく返答をした。

「とんでもない、あなたはかつて私の命を救ってくれたことがある。
まさか私が忘れているとでもお思いですか?」

将軍のほうも謙遜して「過去のことはもういいではありませんか。」と答えた。

さらに、フランスとか、ベルギーとか、栄光とか、名誉とか、そんな話題になった。
そして二人はお互いに心を込めて抱き合い、会話を終えたのだった。


彼らの話はいったい何のことか、デュボス中尉は依然としてわからなかった。

しかし彼は、タウルス急行で帰国するポワロ氏を見送る任務を命じられている。
将来を嘱望された若き将校にふさわしく、熱意をもって任務を果たすまでのことだった。


「今日は日曜ですから・・・。」デュボス中尉は言った。
「明日、月曜の夕方には、あなたはイスタンブールに着いておられますね。」

中尉がこの話をするのはこれがはじめてではなかった。
発車まぎわのホーム上の会話は、つい同じことの繰り返しになってしまう。

「そうですな。」ポワロはうなずいた。

「そちらには何日か滞在するご予定でしたね?」

「もちろんそのつもりです。イスタンブールはかって一度も観光したことがありません。
この機会を逃しては、あまりにも惜しいですからね。」

ポワロは、思いついたようにパチンと指を鳴らした。
「急ぎの用事は何もありませんし、観光客として二、三日滞在しますかな。」

「聖ソフィア寺院、あそこは見事ですよ。」デュボス中尉は言った。
実は、彼はまだ見たことがなかったのだが。

ひとしきりの寒風がプラットホームに鋭く長い音を立てて吹いてくる。
二人とも身震いした。デュボス中尉はこっそりと自分の腕時計に目をやった。



四時五十五分──あと五分で発車だった。
彼は時計を見たことに気づかれたような気がして、あわてて話しはじめた。

「一年のうちで、この季節に旅行する人はあまり多くないようですね。」
彼は、寝台車の窓を見上げながら言った。

「そうですね。」ポワロはあいづちをうった。

「タウルスであなたが大雪に閉じ込められたりしないよう祈りますよ。」

「そんなことがあるんですか?」

「ええ、起こりましたとも。今年はまだありませんが。」

「では、そうならないことを祈るとしましょう。
ところで、ヨーロッパ方面は悪天候のようですね。」ポワロは言った。

「天気はひどく悪いです。バルカン半島は大雪だとか。」

「ドイツもそうらしいですな。」

「ところで・・・。」会話がはじまるとすぐまた中断してしまう。
デュボス中尉はあわてて言った。

「明晩の七時四十分には、コンスタンチノープルにお着きになれますよ。」

ポワロも必死に会話を続けて言った。
「聖ソフィア寺院、あそこはたしかに見事だそうですな。」

「きっと感心なさいますよ。」



二人の頭上で、寝台車のカーテンが開き、若い女性が顔をのぞかせた。
 
彼女メアリ・デブナムは、木曜日にバグダッドを出発して以来、ずっと寝不足が続いていた。

キルクークへ向かう列車の中でも、モスルのホテルでも、またこの列車で過ごした昨晩も、
ほとんど眠れなかったのだ。

蒸し暑い車内で眠れないのにうんざりして、起き上がって外をのぞいたのである。


これはアレッポに違いない。もちろん見るものなど何もない。
ただ長くて薄暗いホームと、どこからか騒がしいアラビア語の罵声が聞こえてくるだけだった。

彼女の窓の下には二人の男がフランス語で話していた。
一人はフランス人将校で、もう一人は派手な口ひげを生やした小柄な男だった。

彼女は小さく笑みをもらした。これほどマフラーをぐるぐる着飾った人を見たことがない。

外はかなり寒そうなので、車内を暑くするのも無理はなかった。
彼女は、窓をおろそうとしたが、びくともしなかった。



寝台車の車掌が二人の男に近づいてきて、汽車が出るから、そろそろ乗ったほうがいいと言った。
小柄な男が帽子を持ち上げた。彼の頭は丸くて、まるで卵のようだった。

メアリ・デブナムは、自分の悩み事も忘れ、思わず口元をほころばせた。
滑稽なチビだから、きっと誰からも相手にされないに違いないと思った。


デュボス中尉は、美しく優雅に別れの挨拶を口にした。
実は、前もって考えておいた言葉で、最後の最後までとっておいたのだった。

ポアロもそれに負けずに、じつに立派な挨拶を返した。

「旦那、早くお乗りください。」寝台車掌が催促する。
ポアロは、いかにも名残おしげなさまで、列車に乗り込んだ。

車掌が続いて列車に乗った。ポアロが両手を振ると、デュボス中尉が敬礼する。
列車は大きくガタンと揺れ、ゆっくりと動き出した。


「やれやれ・・・。」ムッシュ・ポアロはつぶやいた。

「ぶるるる・・・。」とデュボス中尉。
ほっとしたとたん、寒さが本格的に身にしみてきたのである。