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【第五課 第十六節】 小説読解
「麦琪的礼物」 欧.亨利
一块八毛七分钱。全在这儿了。其中六毛钱还是铜子儿凑起来的。
这些铜子儿是每次一个、两个向杂货铺、菜贩和肉店老板那儿死乞白赖地硬扣下来的;
人家虽然没有明说,自己总觉得这种掂斤播两的方法未免太吝啬,当时脸都躁红了。
德拉数了三遍。数来数去还是一块八毛七分钱,而第二天就是圣诞节了。
除了倒在那张破旧的小榻上号哭之外,显然没有别的办法。
德拉就那样做了。
这使一种精神上的感慨油然而生,认为人生是由啜泣,抽噎和微笑组成的,而抽噎占了其中绝大部分。
这个家庭的主妇渐渐从第一阶段退到第二阶段,我们不妨抽空儿来看看这个家吧。
一套连家具的公寓,房租每星期八块钱。虽不能说是绝对难以形容,其实跟贫民窟也相去不远。
下面门廊里有一个信箱,但是永远不会有信件投进去;还有一个电钮,除非神仙下凡才能把铃按响。
那里还贴着一张名片,上面印有“詹姆斯·迪林汉·扬先生”几个字。
“迪林汉”这个名号是主人先前每星期挣三十块钱得法的时候,一时高兴,加在姓名之间的。
现在收入缩减到二十块钱,“迪林汉”几个字看来就有些模糊,仿佛它们正在考虑,是不是缩成一个质朴而谦逊的“迪”字为好。
但是每逢詹姆斯·迪林汉·扬先生回家上楼,走进房间的时候,詹姆斯·迪林汉·扬太太——就是刚才已经介绍给各位的德拉——总是管他叫做“吉姆”,
总是热烈地拥抱他。那当然是很好的。
德拉哭了之后,在脸上扑了些粉。
她站在窗子跟前,呆呆地瞅着外面灰蒙蒙的后院里,一只灰猫正在灰色的篱笆上行走。
明天就是圣诞节了,她只有一块八毛七分钱来给吉姆买一件礼物。
好几个月来,她省吃俭用,能攒起来的都攒了,可结果只有这一点儿。
一星期二十块钱的收入是不经用的。支出总比她预算的要多。总是这样的。
只有一块八毛七分钱来给吉姆买礼物。她的吉姆。为了买一件好东西送给他,德拉自得其乐地筹划了好些日子。
要买一件精致、珍奇而真有价值的东西——够得上为吉姆所有的东西固然很少,可总得有些相称才成呀。
房里两扇窗子中间有一面壁镜。诸位也许见过房租八块钱的公寓里的壁镜。
一个非常瘦小灵活的人,从一连串纵的片段的映像里,也许可以对自己的容貌得到一个大致不差的概念。
德拉全凭身材苗条,才精通了那种技艺。
她突然从窗口转过身,站到壁镜面前。她的眼睛晶莹明亮,可是她的脸在二十秒钟之后却失色了。
她迅速地把头发解一开,让它披落下来。
且说,詹姆斯·迪林汉·扬夫妇有两样东西特别引为自豪,一样是吉姆三代祖传的金表,别一样是德拉的头发。
如果示巴女王住在天井对面的公寓里,德拉总有一天会把她的头发悬在窗外去晾干,使那位女王的珠宝和礼物相形见绌。
如果所罗门王当了看门人,把他所有的财富都堆在地下室里,吉姆每次经过那儿时准会掏出他的金表看看,好让所罗门妒忌得吹胡子瞪眼睛。
这当儿,德拉美丽的头发披散在身上,像一股褐色的小瀑布,奔泻闪亮。
头发一直垂到膝盖底下,仿佛给她铺成了一件衣裳。她又神经质地赶快把头发梳好。
她踌躇了一会儿,静静地站着,有一两滴泪水溅落在破旧的红地毯上。
她穿上褐色的旧外套,戴上褐色的旧帽子。她眼睛里还留着晶莹的泪光,裙子一摆,就飘然走出房门,下楼跑到街上。
她走到一块招牌前停住了,招牌上面写着:“莎弗朗妮夫人——经营各种头发用品。”德拉跑上一段楼梯,喘着气,让自己定下神来。
那位夫人身躯肥大,肤色白得过分,一副冷冰冰的模样,同“莎弗朗妮”这个名字不大相称。
“你要买我的头发吗?”德拉问道。
“我买头发,”夫人说,“脱掉帽子,让我看看头发的模样。”
那股褐色的小瀑布泻了下来。
“二十块钱,”夫人用行家的手法抓起头发说。
“赶快把钱给我。”德拉说。
噢,此后的两个钟头仿佛长了玫瑰色翅膀似地飞掠过去。
诸位不必与日俱增这种杂凑的比喻。总之,德拉正为了送吉姆的礼物在店铺里搜索。
德拉终于把它找到了。它准是专为吉姆,而不是为别人制造的。
她把所有店铺都兜底翻过,各家都没有像这样的东西。
那是一条白金表链,式样简单朴素,只是以货色来显示它的价值,不凭什么装璜来炫耀——一切好东西都应该是这样的。
它甚至配得上那只金表。她一看到就认为非给吉姆买下不可。
它简直像他的为人。文静而有价值——这句话拿来形容表链和吉姆本人都恰到好处。
店里以二十一块钱的价格卖给了她,她剩下八毛七分钱,匆匆赶回家去。
吉姆有了那条链子,在任何场合都可以毫无顾虑地看看钟点了。
那只表虽然华贵,可是因为只用一条旧皮带来代替表链,他有时候只是偷偷地瞥一眼。
德拉回家以后,她的陶醉有一小部分被审慎和理智所替代。
她拿出卷发铁钳,点着煤气,着手补救由于爱情加上慷慨而造成的灾害。
那始终是一件艰巨的工作,亲爱的朋友们——简直是了不起的工作。
不出四十分钟,她头上布满了紧贴着的小发鬈,变得活像一个逃课的小学生。她对着镜子小心而苛刻地照了又照。
“如果吉姆看了一眼不把我宰掉才怪呢,”她自言自语地说,“他会说我像是康奈岛游乐场里的卖唱姑娘。
可有什么办法呢?——唉!只有一块八毛七分钱,叫我有什么办法呢?”
到了七点钟,咖啡已经煮好,煎锅也放在炉子后面热着,随时可以煎肉排。
吉姆从没有晚回来过。德拉把表链对折着握在手里,在他进来时必经的门口的桌子角上坐下来。
接着,她听到楼下梯级上响起了他的脚步声。她脸色白了一忽儿。
她有一个习惯,往往为了日常最简单的事情默祷几句,现在她悄声说:“求求上帝,让他认为我还是美丽的。”
门打开了,吉姆走进来,随手把门关上。他很瘦削,非常严肃。
可怜的人儿,他只有二十二岁——就负起了家庭的担子!他需要一件新大衣,手套也没有。
吉姆在门内站住,像一条猎狗嗅到鹌鹑气味似的纹丝不动。他的眼睛盯着德拉,所含的神情是她所不能理解的,这使她大为惊慌。
那既不是愤怒,也不是惊讶,又不是不满,更不是嫌恶,不是她所预料的任何一种神情。他只带着那种奇特的神情凝视着德拉。
德拉一扭一腰,从桌上跳下来,走近他身边。
“吉姆,亲爱的,”她喊道,“别那样盯着我。我把头发剪掉卖了,因为不送你一件礼物,我过不了圣诞节。
头发会再长出来的——你不会在意吧,是不是?我非这么做不可。我的头发长得快极啦。
说句‘恭贺圣诞’吧!如姆,让我们快快乐乐的。我给你买了一件多么好——多么美丽的好东西,你怎么也猜不到的。”
“你把头发剪掉了吗?”吉姆吃力地问道,仿佛他绞尽脑汁之后,还没有把这个显而易见的事情弄明白似的。
“非但剪了,而且卖了。”德拉说。“不管怎样,你还是同样地喜欢我吗?虽然没有了头发,我还是我,可不是吗?”
吉姆好奇地向房里四下张望。
“你说你的头发没有了吗?”他带着近乎白痴般的神情问道。
“你不用找啦,”德拉说。“我告诉你,已经卖了——卖了,没有了。今天是圣诞前夜,亲爱的。
好好地对待我,我剪掉头发为的是你呀。我的头发也许数得清,”她突然非常温柔地接下去说,“但我对你的情爱谁也数不清。
我把肉排煎上好吗,吉姆?”
吉姆好象从恍惚中突然醒过来。他把德拉搂在怀里。
我们不要冒昧,先花十秒钟工夫瞧瞧另一方面无关紧要的东西吧。
每星期八块钱的房租,或是每年一百万元房租 ——那有什么区别呢?一位数学家或是一位俏皮的人可能会给你不正确的答复。
麦琪带来了宝贵的礼物,但其中没有那件东西。对这句晦涩的话,下文将有所说明的。
吉姆从大衣口袋里掏出一包东西,把它扔在桌上。
“别对我有什么误会,德尔。”他说,“不管是剪发、修脸,还是洗头,我对我姑娘的爱情是决不会减低的。
但是只消打开那包东西,你就会明白,你刚才为什么使我愣住了。“
白皙的手指敏捷地撕开了绳索和包装纸。接着是一声狂喜的呼喊;
紧接着,哎呀!突然转变成女性神经质的眼泪和号哭,立刻需要公寓的主人用尽办法来安慰她。
因为摆在眼前的是那套插在头发上的梳卡——全套的发卡,两鬓用的,后面用的,应有尽有;
那原是在百老汇路上的一个橱窗里,为德拉渴望了好久的东西。
纯玳瑁做的,边上镶着珠宝的美丽的发卡——来配那已经失去的美发,颜色真是再合适也没有了
。
她知道这套发卡是很贵重的,心向神往了好久,但从来没有存过占有它的希望。
现在这居然为她所有了,可是那佩带这些渴望已久的装饰品的头发却没有了。
但她还是把这套发卡搂在怀里不放,过了好久,她才能抬起迷蒙的泪眼,含笑对吉姆说:“我的头发长得很快,吉姆!”
接着,德拉象一只给火烫着的小猫似地跳了起来,叫道:“喔!喔!”
吉姆还没有见到他的美丽的礼物呢。她热切地伸出摊开的手掌递给他。那无知觉的贵金属仿佛闪闪反映着她那快活和热诚的心情。
“漂亮吗,吉姆?我走遍全市才找到的。现在你每天要把表看上百来遍了。把你的表给我,我要看看它配在表上的样子。”
吉姆并没有照着她的话去做,却倒在榻上,双手枕着头,笑了起来。
“德尔,”他说,“我们把圣诞节礼物搁在一边,暂且保存起来。它们实在太好啦,现在用了未免可惜。
我是卖掉了金表,换了钱去买你的发梳的。现在请你煎肉排吧。”
那三位麦琪,诸位知道,全是有智慧的人——非常有智慧的人——他们带来礼物,送给生在马槽里的圣子耶稣。
他们首创了圣诞节馈赠礼物的风俗。他们既然有智慧,他们的礼物无疑也是聪明的,可能还附带一种碰上收到同样的东西时可以交换的权利。
我的拙笔在这里告诉了诸位一个没有曲折、不足为奇的故事;那两个住在一间公寓里的笨孩子,极不聪明地为了对方牺牲了他们一家最宝贵的东西。
但是,让我们对目前一般聪明人说最后一句话,在所有馈赠礼物的人当中,那两个人是最聪明的。
在一切授受衣物的人当中,象他们这样的人也是最聪明的。无论在什么地方,他们都是最聪明的。他们就是麦琪。
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【注 釈】
【麦琪的礼物】 mài qí de lǐ wù 賢者の贈り物(The Gift of the Magi)
麦琪は、マギ(magi)の意。(福音書の東方三賢人の故事より)
【欧・亨利】 ōu・hēng lì オーヘンリー (O. Henry) (1862-1910年)
アメリカの短編作家。ユーモアと巧みな筋立てと落ちが特色。代表作「最後の一葉」
欧·亨利(O. Henry 1862-1910)本名威廉·西德尼·波特(William Sydney Porter),笔名欧·亨利,美国小说家。
15岁进入社会,当过学徒、牧人、会计、出纳。因丢失现金,于1897年被捕,判刑五年。在狱中开始写作。
1900年因 「行为良好」提前获释。就此以写作谋生。所著的300余篇作品中,笔调幽默、人情味浓、
以情节取胜的短篇小说使他拥有很高的知名度。「麦琪的礼物」、「最后的一片藤叶」等佳作至今流传世界。
【掂斤播两】 diān jīn bō liǎng (いちいち天びんにかける)。細かいことを気にする
【德拉】 dé la デラ。(Della) (人名)
【油然而生】 yóu rán ér shēng むらむらと起こる
【抽噎】 chōu yē すすり泣く
【相去不远】 xiāng qù bù yuǎn 遠く隔たっていない
【詹姆斯·迪林汉·扬】 zhān mǔ sī · dí lín hàn · yáng ジェームズ・ディリンガム・ヤング。(James Dillingham Young) (人名)
【吉姆】 jí mǔ ジム。(Jim) (人名)
【示巴女王】 shì bā nǚ wáng シバの女王
【相形见绌】 xiāng xíng jiàn chù 比べると見劣りがする
【所罗门王】 suǒ luó mén wáng ソロモン王
【相称才成】 xiāng chèn cái chéng ふさわしいものでなければ
【莎弗朗妮】 suō fú lǎng nī ソフロニー。(Sofronie) (店名)
【兜底翻过】 dōu dǐ fān guò くまなく探しまくる
【康奈岛】 kāng nài dǎ コニー・アイランド。(Coney Island) (ニューヨークの観光地)
【鹌鹑】 ān chún 〈鳥〉ウズラ
【绞尽脑汁】 jiǎo jìn nǎo zhī ありったけの知恵を絞る
【头发也许数得清】 tóu fa yě xǔ shǔ de qīng 髪の毛が神に数えられる。(the hairs of my head were
numbered)
神はつねに見ておられる。聖書の引用。(マタイ福音書 第十章三十節)
【玳瑁】 dài mào べっこう
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【口語訳】
「賢者の贈り物」 オー・ヘンリー
1ドル87セント。それで全部。
しかもそのうち60セントは小銭でした。
小銭は一回の買い物につき一枚か二枚づつ浮かせたもので、乾物屋や八百屋や肉屋に無理矢理まけさせたのです。
店の人は誰も何も言わないけれど、心の中ではそんなけちくさい買物ぶりを非難しているにちがいなく、
値切るほうはまさに顔から火の出る思いでした。
デラは三回数えてみました。でもやっぱり1ドル87セント。
明日はクリスマスだというのに。
小さなみすぼらしいソファに身を投げ、思いっきり声をあげて泣く以外に、何ができるというのでしょう。
人生なんて、きっと「泣きじゃくる」「すすり泣く」それから「微笑む」の三つでできているのね。
そのうちとくに「すすり泣く」ことがいちばん多いのじゃないかしら。デラはそう思うようになりました。
さて、泣きじゃくっているこの家の主婦が、やがてすすり泣きへとうつっていくあいだに、ちょっと家の中をながめてみましょう。
ここは週8ドルの家具付きアパートです。
どこよりもひどいとは言えないけれど、あまりにもおんぼろで、浮浪者が住む貧民窟と比べてもさほど違いはないでしょう。
階下には郵便受けがありましたが、手紙などただの一通も届きそうにありません。
呼び鈴はありましたが、誰が押しても音が鳴るとはとうてい思えません。
その上には「ミスター・ジェームズ・ディリンガム・ヤング」という名前が書かれた名刺が貼ってありました。
その「ディリンガム」の文字は、その名の持ち主に週30ドルの収入があったとき、その景気の良さをそのまま表わしていたのです。
でもいまや収入は20ドルに減ってしまい、文字たちはいくらか不鮮明になって、
もっと慎ましく謙遜な「d」一文字に縮こまってしまおうかと真剣に考えているようでした。
しかし、ジェームズ・ディリンガム・ヤング氏が家に帰って二階のアパートに着くと、すでにデラとしてご紹介済みの
ジェームズ・ディリンガム・ヤング夫人が、「ジム」と呼びながら、いつでもぎゅうっと夫を抱きしめるのでした。
ふたりはとても仲のいい夫婦でありました。
デラは泣くのをやめ、頬に白粉をはたくのに意識を集中させました。
デラは窓辺に立ち、灰色の裏庭にある灰色の塀の上を灰色の猫が歩いているのを物憂げに見ました。
明日はクリスマスだというのに、ジムに贈り物を買うお金が1ドル87セントしかありません。
何月も何月もコツコツとためてきたのに、これがその結果なのです。
週20ドルでは、大したことはできません。支出はデラが計算した以上にありました。
支出というものはいつだってそういうものでした。
ジムへの贈り物を買うのに1ドル87セントしかないなんて。大切なジムなのに。
デラは、ジムのために何かすばらしいものをあげようと、長い間計画していたのです。
何か、すてきで、めったにないもの —— ジムの所有物となる栄誉を受けるに少しでも値する何かを。
その部屋の窓と窓の間には姿見の鏡が掛けられていました。
たぶんあなたも8ドルの安アパートで見たことのあるような姿見でした。
たんざくのような細長い鏡でしたから、ちょっと太り気味の人などは、からだの半分しかうつらないでしょう。
でも、デラはすらっとしていたので、その鏡にきちんと全身がうつるのです。
急にデラは窓からくるりと身をひるがえし、その鏡の前に立ちました。
デラの目はきらきらと輝いていましたが、顔は20秒の間、色を失っていたのでした。
デラは手早く髪を下ろし、その長さいっぱいまで垂らしました。
さて、ジェームズ・ディリンガム・ヤング家には、誇るべき二つのものがありました。一つはジムの金時計です。
かつてはジムの父、そしてその前にはジムの祖父が持っていたという金時計。
もう一つはデラの髪でした。
たとえば、あのシバの女王が、向こう側のアパートに住んでいたとしましょう。
ある日、デラが窓の外に、ぬれた髪を垂らして乾かそうとしたら、それだけで、女王様の宝石や宝物は色あせてしまうことでしょう。
またたとえば、あのソロモン王がアパートの管理人をやっていて、宝物を地下室に山積みしていたとしましょう。
そこへジムが通りがかって、金時計を取り出すたびに、王様はうらやましさのあまり、ひげをかきむしることでしょう。
そのデラの美しい髪は褐色の小さな滝のようにさざなみをうち、輝きながら彼女のまわりを流れ落ちていきました。
髪はデラの膝のあたりまで届き、まるで長い衣のようでした。
やがてデラは神経質そうにまた手早く髪をまとめあげました。ためらいながら一分間じっと立っていました。
が、そのうちに涙が一粒、二粒、すりきれた赤いカーペットに落ちました。
デラは褐色の古いジャケットを羽織り、褐色の古い帽子をかぶりました。
スカートをはためかせ、目にはまだ涙を光らせて、ドアの外に出ると、表通りへ続く階段を降りていきました。
デラが立ち止まったところの看板には、「マダム・ソフロニー、ヘア用品なら何でも。」と書いてありました。
デラは階段を一つかけのぼり、胸をどきどきさせながらも気持ちを落ち着けました。
女主人は大柄で、色は白すぎ、冷ややかで、とうてい「ソフロニー」という名前のようには見えませんでした。
「髪を買ってくださいますか」デラは尋ねました。
「髪なら買うよ」女主人は言いました。「帽子を取って見せてごらん」
褐色の滝がさざなみのようにこぼれ落ちました。
「20ドルだね」手馴れた手つきで髪を持ち上げて女主人は言いました。
「お金をください、今すぐ」
ああ、それから、薔薇のような翼に乗って二時間が過ぎていきました…なんて、使い古された比喩は忘れてください。
デラはジムへの贈り物を探してお店を巡っておりました。
そしてとうとうデラは見つけたのです。それは確かにジムのため、ジムのためだけに作られたものでした。
それほどすばらしいものはどの店にもありませんでした。デラは全部の店をひっくり返さんばかりに見たのですから。
それはプラチナの時計鎖で、デザインはシンプルで上品でした。
ごてごてした飾りではなく、素材のみがその価値を主張していたのです。
すべてのよきものがそうあるべきなのですが、その鎖は彼の時計につけるのにふさわしいとまで言えるものでした。
その鎖を見たとたん、これはジムのものだ、とデラにはわかりました。この鎖はジムに似ていたのです。
寡黙だが、価値がある —— この表現は鎖とジムの両者に当てはまりました。
その鎖には21ドルかかり、デラは87セントをもって家に急いで帰りました。
この鎖を時計につければ、どんな人の前でもちゃんと時間を気にすることができるようになるでしょう。
時計はすばらしかったのですが、鎖の代わりに古い皮紐をつけていたため、ジムはこそこそと見るときもあったのです。
デラが家に着いたとき、興奮はやや醒め、分別と理性が頭をもたげてきました。
ヘアアイロンを取り出して、ガスの火であたため、愛と思いきりのよさのせいでめちゃくちゃになった髪のつくろいをはじめました。
でもそういうことは、とても時間のかかる、たいへんな作業でありました。
40分のうちに、デラの髪は小さく集まったカールで覆われました。
髪型のせいで、まるで、ずる休みした学童みたいに見えました。
デラは、鏡にうつる自分の姿を、長い間、注意深く、じっと見つめていました。
「わたしのことを殺しはしないだろうけれど」デラは独り言をいいました。
「ジムはわたしのことを見るなり、コニーアイランドのコーラスガールみたいだって言うわ。
でもわたしに何ができるの —— ああ、ほんとうに1ドル87セントで何ができるっていうの?」
七時にはコーヒーの用意ができ、フライパンはストーブの上にのり、肉を焼く準備ができました。
ジムは決して遅れることはありませんでした。
デラは時計の鎖を手の中で二重に巻き、彼がいつも入ってくるドアの近くのテーブルの隅に座りました。
やがて、ジムがはじめの階段を上ってくる足音が聞こえると、デラは一瞬顔が青ざめました。
デラは毎日のちょっとしたことでも小さな祈りを静かに唱える習慣がありましたが、
このときは「神さま。どうかジムがわたしのことを今でもかわいいと思ってくれますように」とささやきました。
ドアが開き、ジムが入り、ドアを閉めました。ジムはやせていて、生真面目な顔つきをしていました。
かわいそうに、まだ22歳なのに —— 彼は家庭を背負っているのです。
新しいオーバーも必要だし、手袋もしていませんでした。
ジムは、ドアの内で立ち止まりました。
うずらの匂いにじっとしている猟犬と同じように、そのまま動きませんでした。
ジムの目はデラに釘付けでした。そしてその目には読み取ることのできない感情が込められていて、デラは恐くなってしまいました。
それは憤怒ではなく、驚嘆でもなく、拒否でもなく、恐怖でもなく、デラが心していたどんな感情でもありませんでした。
ジムは顔にその奇妙な表情を浮かべながら、ただ、じっとデラを見つめていたのです。
デラはテーブルを回ってジムの方へ歩み寄りました。
「ジム、ねえ、あなた」 デラは声をあげました。
「そんな顔して見ないで。髪の毛は切って、売っちゃったの。
だって、あなたにプレゼント一つあげずにクリスマスを過ごすなんて絶対できないんだもの。
髪はまた伸びるわ —— 気にしない、でしょ? こうしなきゃ駄目だったの。
ほら、わたしの髪ってすごく早く伸びるし。「メリー・クリスマス」って言ってよ、ジム。
そして楽しく過ごしましょ。どんなに素敵な —— 綺麗で素敵なプレゼントをあなたに用意したか、当てられないわよ」
「髪を切ったって?」 ジムはようやくそれだけ言いました。
まるで、懸命に頭を働かせても目の前のことがよく飲み込めないというありさまでした。
「切って、売っちゃったの」 デラは言いました。
「それでも、わたしのこと、変わらずに好きでいてくれるわよね。髪がなくても、わたしはわたし、よね?」
ジムは部屋をさがしものでもするかのように見まわしました。
「髪がなくなっちゃったって?」 ジムは、すっかり気の抜けたような声で言いました。
「探さなくてもいいのよ」 デラは言いました。「売っちゃったの。だから、—— 売っちゃったからなくなったのよ。
ねえ、優しくして。クリスマスイブでしょ。髪がなくなったのは、あなたのためなのよ。
聖書にあるように、きっと、わたしの髪の毛の一本一本まで神様には数えられているでしょうね」
デラは急に真面目になり、優しく続けました。
「でも、わたしがあなたをどれだけ愛しているかは、神様だって推しはかることはできないわ。さあお肉を火にかけてもいい、ジム?」
ジムはぼうっとした状態からはっと戻り、デラを抱きしめました。
さて、ここで物語から脱線しますが、つぎの質問をちょっと考えてみてください。
週8ドルの家賃と年100万ドルの家賃 —— その違いは何でしょうか?
数学者や知恵者、いわゆる賢い人たちは、きっと正しい答えを出すことはできないでしょう。
東方の賢者は高価な贈り物を持ってきましたが、その贈り物に答えはありませんでした。
こう言うと、きっとはてなと思われるかも知れません。
でもやがて、この物語で正しい答えが何であるかが明らかになることでしょう。
ジムはオーバーのポケットから包みを取り出すと、テーブルに投げ出しました。
「ねえデラ、僕のことを勘違いしないで。髪型とか肌剃とかシャンプーとか、そんなもので僕のかわいい女の子を嫌いになったりするもんか。
でも、その包みを開けたら、はじめのうちしばらく、どうして僕があんな風だったかわかると思うよ」
白い指がすばやく紐をちぎり紙を破りました。
そして歓喜の叫びが上がり、それから、ああ、ヒステリックな涙と嘆きへと女性らしくすぐさま変わっていったのです。
いそいで、そのアパートの主人が必死になって慰めなければなりませんでした。
包みの中には櫛(くし)が入っていたのです —— セットになった櫛で、横と後ろに刺すようになっているものでした。
その櫛のセットは、デラがブロードウェイのお店の窓で、長い間あこがれていたものでした。
本物の亀甲でできていて、宝石で縁取りがしてあり —— 売ってなくなった美しい髪にぴったりでした。
その櫛が高価だということをデラは知っていました。
ですから、心のうちでは、その櫛がただもう欲しくて欲しくてたまらなかったのですけれど、
実際に手に入るなんていう望みはちっとも抱いていなかったのです。
そして、いま、この櫛が自分のものになったのです。
けれども、この髪飾りによって飾られるべき髪の方がすでになくなっていたのでした。
しかし、デラは櫛を胸に抱きました。
そしてやっとの思いで涙で濡れた目をあげ、微笑んでこう言うことができました。
「わたしの髪はね、とっても早く伸びるのよ、ジム!」
そしてデラは火で焼かれた小猫のようにジャンプして声をあげました。「きゃっ、そうだ!」
自分がもらう美しい贈り物をジムはまだ見ていないのです。
デラは手のひらに贈り物を乗せ、ジムに思いを込めて差し出しました。
貴金属の鈍い光は、デラの輝くばかりの熱心な気持ちを反射しているかのようでした。
「ねえ素敵じゃない、町中を探して見つけたのよ。あなたの時計にこの鎖をつけたら、一日に百回でも時間を調べたくなるわよ。
時計、貸してよ。この鎖をつけたらどんな風になるか見たいの」
デラのこの言葉には従わず、ジムは椅子にどさりと腰を下ろし、両手を首の後ろに組んでにっこりと微笑みました。
「ねえデラ。僕達のクリスマスプレゼントは、しばらくの間、どこかにしまっておくことにしようよ。
いますぐ使うには上等すぎるよ。櫛を買うお金を作るために、僕は時計を売っちゃったのさ。さあ、そろそろ肉を火にかけてくれよ」
東方の賢者は、ご存知のように、賢い人たちでした —— すばらしく賢い人たちだったんです —— 飼葉桶の中 にいる御子に贈り物を運んできたのです。
彼らのこの贈り物から、クリスマスプレゼントを贈る、という習慣が生まれたのです。
彼らは賢明な人たちでしたから、もちろん贈り物もまちがいなく賢明なものでした。
たぶん贈り物がだぶったりしたときには、別の品と交換をすることができる特典もあったでしょうね。
さて、わたくしはこれまで、つたないながらも、アパートに住む二人の愚かな若者に起こった、平凡な物語をお話してまいりました。
二人は愚かなことに、家の最もすばらしい宝物を互いのために台無しにしてしまったのです。
しかしながら、現代の賢者である読者の皆さんへ向けて、最後の言葉として、こう言わせていただきましょう。
贈り物をする人たちは大勢いますが、この二人がいちばん賢かったといえないでしょうか?
世界中のどこであっても、贈り物をやりとりするすべての人の中で、彼らこそは最も賢い人といえます。
彼らこそ、真の東方の賢者なのです。