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【第五課 第十九節】   小説読解
 

美女与野兽 (一)  (博蒙夫人)  


从前,在一个遥远的国家里,住着一个家财万贯的商人。

他有六个儿子和六个女儿,在这些孩子当中,只有他的小女儿十分地勤劳和节俭,
而且也比其他五位姐姐美丽、聪明,

所以,人们总是把她叫做“美女”,她的父亲对她也异常地喜爱。

可是,好景不长,一连串的不幸像冰雹一样地突然降临到了他们头上。

一天,他们的房子着了火,家中所有的金银财宝和书画首饰都化为了灰烬,
接着,由于海盗的劫掠和海上商船的沉没,

这位商人在突然之间几乎失去了所有的财富,唯一留下来的就是一间位于穷乡僻壤的小屋子。
现在,已经找不到任何 一个愿意帮助他们的朋友。

无奈之下,他们只好举家搬迁,来到离城很远的坐落在一片黑森林中的那间小屋。
可是啊,过惯了奢华生活的兄弟姐妹们怎么能够习惯现在的这种生活呢?
他们没有钱去请佣人,女孩子们不得不辛勤地劳动,而男孩子们必须得早出晚归地去种田。
而且啊,他们的衣着都非常地简陋,生活呢,也过得很清苦。
他们都纷纷抱怨说:“唉,这种倒霉的日子什么时候才能结束呢? ”
“我真是恨透了这苦日子了!”
可只有美女默不作声,她没有任何一句抱怨的话,只是非常努力地做事,尽力地来帮助家中改善现在的处境。

两年之后,他们的父亲得到一个消息说,他原以为遇难的一艘船,已经满载货物安全入港了。
听到这个消息,美女的哥哥姐姐们欢喜得又唱又跳,他们认为这贫困的生活终于能够结束,
终于又有了搬回到繁华的城市中去居住的希望了。
可事实并没有这样简单,美女始终觉得他们不太可能再像从前那样富有了,
所以当姐姐们纷纷要求出门迎接货物的父亲买各种各样的珠宝、服装时,她却站在一边,一直都没有出声。

“美女呀,你要我带什么东西给你呢? ”父亲非常和蔼地问她。
“我唯一所求的事,就是想看到您平安回家。”美女回答说。
这一回答使她的姐姐们十分地恼火,因为她们认为她是在责怪她们只想买贵重的东西而不关心父亲。
“好吧,亲爱的父亲,”她说,“既然您一定要我挑选,那么我恳求您带一朵玫瑰花回来。
自从我们来到这里,我还没有见到过一朵娇艳的花儿呢!”
她的父亲答应着出发了。

当他到达港口时,满船的货物已经全部被以前的合伙人骗走了!
他长途奔波了这么久,却发现自己竟和出发的时候一样地贫困。
他非常懊丧地踏上回家的路。
这个时候,天色渐渐地晚了,暴风雪中,他迷失了方向,就只好在一个空心的大树干下蜷缩着过了一夜。
天终于亮了,大雪覆盖着每一条小路,可怜的商人不知该向哪儿走。

最后,他仿佛辨认出了一条路,就沿着这条路一直地走。
在摔了无数个跤后,这位商人竟然来到了一条两旁长满橘树的大道上……大道的尽头是一座华丽的城堡。
商人感到十分地奇怪,因为在这个长满橘树的大道上没有一片雪花,而且树上绿叶婆娑,果实累累。
商人走进第一个院子时,发现前面有一段玛瑙铺的台阶。
他沿着台阶大胆地走进去,穿过几间富丽堂皇的房间,温馨怡人的空气使他恢复了精神。
此时,他感到异常地饥饿,“唉,要是能吃点饭那该多好啊!”他低声地嘟囔着。
可是在这座宏大而华丽的宫殿里,却看不见一个人影儿,到处都是一片寂静,只有炉膛里的木柴在噼里啪啦地燃烧着。
于是,商人在万分地疲惫之下,坐在炉火旁,很快地就进入了梦乡。

睡了几个小时以后,极度的饥饿使他又醒了过来,他仍然是孤独一个人,可是奇怪的是,在他的近旁已经摆好了一桌丰盛的晩餐。
他太高兴了,根本没有心思去想这体贴而又周到的主人到底是谁,就狼吞虎咽地大吃起来。
酒足饭饱之后,商人准备离开这座城堡。
他走上了一条长满玫瑰花的小路。
眼前的鲜花使他想起了答应美女的事,于是,他就顺手摘下了一朵鲜嫩的花。

“谁告诉你可以摘我的玫瑰花的?” 一个可怕的声音蓦地从背后传了过来。
“啊!”商人下意识地回头一看,一个长得十分可怕的“野兽”就站在他旁边。
“你这个忘恩负义的家伙,我让你睡在我的宫殿里,殷勤地招待你,难道这还不够吗?
你竟然还来偷我的玫瑰花!”
商人吓得慌忙跪下来求饶,并且讲述了自己摘玫瑰花的原因和一直以来的不幸遭遇。
野兽听了商人的讲述,脸色缓和了许多,他说“你答应我一个条件……把你的一个女儿嫁给我,我就饶恕你,但她必须是心甘情愿地来。
我给你一个月的时间,如果你食言的话,我会去抓你的!现在,拿上这枝玫瑰花,回家去吧!”
可怜的商人浑身都要瘫痪了。

他赶紧拿着那枝花,在无比的压抑和悲伤中回到了家。
到家后,他就将一路上的遭遇原原本本地告诉了儿女们。
美女的五个姐姐为她们失去了的希望而大声叹息着,六个儿子对他们的父亲叫嚷着说不应该到奇怪的宫殿里去……
现在,美女的哥哥姐姐们对美女都感到十分地气愤,他们认为呀,这一切都是因为美女要玫瑰花而闯下的祸。
可怜的美女非常伤心,她对哥哥姐姐们说: “是的,是我引起了这场灾难,可是谁能想到,要一朵玫瑰花会引起这么大的不幸呢?
好,既然这不幸是我造成的,我就一定要去承受,所以,我决定与父亲一起去,让他履行自己的诺言。”
于是,美女将自己那可怜的一点儿財物分给了她的姐姐们,约期一到,就坐着马车同父亲一起向野兽的城堡进发了。

当夜幕来临的时候,父女俩已经赶到了城堡的附近。
嗬!在他们眼前突然出现了灿烂的焰火, 整个森林都被照得通明,使他们感到十分地舒服。
他们来到两旁种满橘树的大道上,看到上上下下 灯火辉煌的宮殿,院子里还传来柔和的音乐声。
美女看到父亲忧心忡忡的样子,就微笑着说;“如果这头野兽为他的猎物的来临准备了这样欢乐的场面的话,那他一定是饿坏了!”
她一边安慰着父亲,一边对所看到的奇妙东西赞叹不已……可野兽并没有在这个时候出现。
跳下马车后,她的父亲就带她到那个小房间去,他们在那儿看到了噼啪作响的炉火和摆着美味晚餐的桌子。
美女和父亲早已经是饥肠辘辘,就坐了下来,开始用餐。

他们刚刚吃过晚饭,只听“扑通、扑通”的脚步声由远而近地传来,
美女突然间感到一阵惊恐,她紧紧地挨着父亲,身上不由自主地打着冷颤。
火光跳跃中,野兽出现了……在美女的眼中,他确实长得十分可怕。
但是美女觉得十分奇怪,因为她在这个长相十分丑陋而又可怕的野兽的眼晴里,
竟然看到了一种与他的外貌十分不符的无比温柔的神情。
也恰恰就是这种神情,使得美女定下心来,她竭力地掩饰着自己的恐惧,大胆地面对野兽。
这显然使野兽感到很高兴。

野兽看了看她说:“晚上好!”尽管他似乎没有生气,可是他这粗声闷气的音调却会使最大胆的人都感到胆战心惊。
美女甜蜜地回答说:“晚上好,野兽!”
“你是自愿来的吗?可爱的姑娘,”野兽问, “你父亲离开后,你能够一个人留在这里吗?”
“是的,野兽,我可以。”美女勇敢地回答说。
“我对你感到很满意。”野兽说,“你是自愿来的,所以就要留下来,但你的父亲明天一早,就得动身回家。”
然后,他又告诉美女,可以带她的父亲到隔壁的房间里去随意地挑选能够装满两只旅行箱的礼物。

美女一想到父亲就要离开这里了,以后只剩下自己一个人陪着这么可怕的野兽,心中就非常地沮丧,
但她还是陪父亲走进了隔壁的房间,为姐姐们挑选礼物。
他们刚一打开房门,“呀!”她惊叫了一声。
只见这个房间里放满了各种各样的奇珍异宝和各种颜色的服饰。
这里边有配得上皇后穿的华丽的服装,还有光彩夺目的金银珠宝,
有各式各样的水晶和钻石饰品,美女为每一个姐姐都挑选了一份礼物。
最后,她打开了一个装满黄金的柜子,从中取出了很多的黄金装进箱子,因为她觉得黄金对她的父亲更为有用。
第二天一早,美女的父亲在阳光中驾着马车回家去了。
美女无比悲伤地望着父亲的背影,她觉得就像与父亲永别了一祥。



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【注 釈】

【美女与野兽】  měi nǚ yǔ yě shòu  

美女と野獣  (La Belle et la Bete)
ヨーロッパの有名な伝説。父親の犠牲となってやむなく醜い怪物と結婚した娘が、愛の力によって怪物を魔術から解放し、
怪物は高貴な王子の姿に戻って娘とともに幸福に暮すという物語。
種々の文学作品で扱われたが、特にボーモン夫人の作品 (1757)ジャン・コクトー (Jean Cocteau) の映画 (1946) が有名。

“美女与野兽”是18世纪法国儿童文学家博蒙夫人创作的经典童话故事。这个故事讲述了一位王子被魔法变成丑陋的怪兽,
一位美丽的姑娘贝儿看到了他可怕外表下的善良灵魂,爱上了他,帮他解除了魔法。




【博蒙夫人】  bó méng fū rén

ボーモン夫人 (Jeanne Marie Leprince de Beaumont)  (1711-1780年)
フランスの童話作家。ルーアン (Rouen) の中流家庭に生まれ育つ。
最初の結婚に破れてのち、再婚しイギリスに渡り、子供の教育事業にかかわりながら、数々の童話を後世に残した。
代表作は、「美女と野獣 (1756)」 「バットビル男爵夫人の回想 (1776)」 など。

博蒙夫人(1711~1780)是一位法国作家,婚后移居英格兰。
在英格兰以家庭教师为生的她开始在很多杂志上发表故事。“美女与野兽”就是在一本儿童杂志上发表的。

这个故事利用了几个国家流传的民间童话,被作者浸染了浓重的理性色彩。
其他传之后世的还有“迷人的王子”“三个愿望”等。




【家财万贯】 jiā cái wàn guàn   たくさんの財産
【勤劳和节俭】 qín láo hé jié jiǎn   働き者でつつましい

【美女】 měi nǚ   ベル (Belle 美しい娘の意)
【好景不长】 hǎo jǐng bù cháng   よいことは長続きしない

【穷乡僻壤】 qióng xiāng pì rǎng   へんぴな片いなか
【早出晚归】 zǎo chū wǎn guī   朝早く出かけて夜遅く帰る
【默不作声】 mò bú zuò shēng   一言も言わない

【原以为遇难的】 yuán yǐ wéi yù nàn de   遭難したと思っていた
<用例> 没想到我遇到原以为已死的人。(死んだと思った人に思いがけず再会する)

【不太可能】 bú tài kě néng  ~になるはずがない
【出门迎接货物的父亲】 chū mén yíng jiē huò wù de fù qīn   船荷を引き取りに行く父親

【婆娑】 pó suō   生い茂る
【温馨怡人】 wēn xīn yí rén   心地よい
【蓦地 mò dì   突然

【忘恩负义】 wàng ēn fù yì   恩知らずの
【瘫痪】 tān huàn   半身不随になる

【也恰恰就是这种神情,使得定下心来】 この表情こそが心の平静をもたらした


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【口語訳】

美女と野獣   (ボーモン夫人)


昔々、遥か遠いある国に、大変裕福な商人が住んでいました。
彼には六人の息子と六人の娘がいましたが、子供たちの中で末の娘だけが、働き者で慎ましく、
しかも五人の姉たちよりも美しく聡明でした。
このため、人々は彼女を美しい娘という意味の 「ベル」 と呼び、商人も彼女をとりわけ可愛がりました。

しかし、幸せは長く続きませんでした。
突然、不幸が雨あられのように彼らにおそいかかったのです。

ある日、彼らの家は火事になり、家中の金銀財宝や美術品、装飾品がすべて灰になってしまいました。
また海上の貿易船が海賊に襲われたり、沈没したりして、商人はあっという間にほとんど全ての財産を失ってしまったのです。
唯一残ったのは、寂しい片田舎にある一軒の小さな家だけでした。

こうなると、もう彼らを助けてくれる友達は、誰もいません。
仕方なく一家は街を遠く離れ、暗い森の中の、その小さな家に移り住みました。

しかし、ぜいたく三昧だった子供たちが、どうしてこんな生活に慣れることができるでしょう。
使用人を雇うお金もなく、女の子たちはつらい家事をこなさなければなりませんし、
男の子たちは朝から晩まで畑仕事に明け暮れなければなりませんでした。
しかも着る服はみすぼらしく、暮らしも粗末なものでした。

みんなは口々に不平を言いました。
「ああ、こんなひどい暮らしは、いつになったら終わるんだろう?」
「こんな苦しい暮らしは、もう嫌だ!」

しかしベルだけは何も言いませんでした。
彼女は一言も不平を言わず、一生懸命に仕事をし、何とか今の暮らしを良くしようと努力したのです。

二年の後、父親のところにある知らせが舞い込みました。
沈没したと思っていた一艘の船が、荷物をいっぱい積んで無事に港へ入ったと言うのです。
この知らせを聞いて、ベルの兄や姉たちは喜んで歌ったり踊ったりしました。
貧乏な暮らしがとうとう終わり、またにぎやかな街に戻る望みができたと思ったのです。

しかし、事はそんなに簡単ではありませんでした。
ベルは、自分たちが昔のように裕福になれるとはどうしても思えなかったので、船荷を引き取りに行く父親に、
姉たちが宝石や洋服やらをおねだりした時も、部屋の隅で黙っていました。

「ベルや、お前は何が欲しいんだい?」 父親は優しく尋ねました。
「私のお願いは、お父様が無事に帰ってきてくれることだけです。」 ベルは答えました。
この答えを聞いて姉たちは腹を立てました。
高価な品をねだるだけで父親の心配をしない姉たちを、ベルが責めていると思ったのです。

「いいわ、愛するお父様。」 ベルは言いました
「どうしても選べとおっしゃるなら、一輪のバラの花を持って帰ってください。
ここへ来てからは、美しい花の一輪も見たことがないんですもの。」
父親は分かったと答え、家を後にしました。

しかし父親が港に着いた時、船いっぱいの荷物はすべて、昔の商売仲間にだまし取られた後でした。
長い道のりを苦労してやってきたあげく、自分が出発した時と同じ無一文だと分かっただけだったのです。
父親は心の底からがっかりして、帰り道を歩き出しました。

この時、空はだんだんと暗くなり、激しい吹雪の中、彼は道に迷ってしまいました。
大きな木の洞 (うろ) に丸く縮こまり、やっと一夜を過ごしました。

ようやく夜が明けましたが、道という道は大雪に覆われ、かわいそうな商人はどっちへ行ったらよいのか分かりません。
やっとのことで道らしい場所を見つけ出し、この道沿いに歩いていきました。

何度も転んだ後、驚いたことには、両側にオレンジの樹が立ち並ぶ広い道に出ました。
そして道の先には、きらびやかな城があったのです。
商人はとても不思議に思いました。
なぜならオレンジの樹が立ち並ぶ広い道には、ひとかけらの雪もなく、
それどころか木々には緑の葉が茂り、たわわに実がなっていたからです。

商人が前庭に入ると、その先には、めのうを敷き詰めた階段がありました。
彼は勇気を出して階段を上り、城に入りました。豪華な部屋をいくつも通り抜け、
暖かい空気に包まれると、商人は元気を取り戻しました。

この時、彼はとても空腹を感じ、「ああ、何か食べることができたらいいのに!」 と低い声でつぶやきました。
しかし、この広々とした華麗な城には、人影一つ見当たりません。
どこもかしこもひっそりとして、暖炉の薪がパチパチと燃えているだけです。

そうして商人は疲れのあまり、暖炉のそばに座ると、すぐに眠り込んでしまいました。
数時間眠ると、あまりの空腹に目が覚めてしまいました。相変わらず独りぼっちでしたが、
驚いたことに、彼の傍にはテーブルいっぱいの夕食が並べられていたのです。

彼は喜びのあまり、このような親切なもてなしをしてくれる城の主は一体誰かなどと考えることもなく、がつがつと食べ始めました。
お腹いっぱい食べた後、商人は城を出ることにしました。

彼はたくさんのバラが咲く小道を通りかかりました。
目の前の美しい花を見てベルとの約束を思い出し、手を伸ばして瑞々しい花を一輪摘み取った時です。
「誰が私のバラを摘んでいいと言った?」 突然、恐ろしい声が後ろから聞こえました。

「えっ!」 商人が思わず振り向くと、恐ろしい姿をした 「野獣」 が、すぐ傍に立っていました。
「この恩知らずめ、私の宮殿で眠らせ、親切にもてなしてやったのに、まだ足りないと言うのか? 私のバラまで盗んでいくとは!」

驚いた商人は、慌ててひざまずき、許しを請いました。
バラの花を摘んだ訳や、今までの不幸な出来事も話しました。

野獣は話を聞くと表情を和らげ、言いました。
「それなら条件がある。娘の一人を私の花嫁にしてくれたら許してやろう。
ただし、娘は心から望んで来なければだめだ。
一か月の時間をやるが、もし約束を破ったら、お前を捕まえに行くからな。
今はバラを持って家に帰るがいい。」

かわいそうな商人は、全身から力が抜けるようでした。
彼は急いでバラを持ち、この上ない憂うつと悲しみの中、家に帰りました。
帰ると、旅の間に起こった出来事を、残らず娘たちに打ち明けました。

ベルの五人の姉たちは、望みが叶えられなかったため、大きなため息をつきました。
六人の息子たちは、父親が不思議な宮殿に入るべきではなかったと喚きたてました。
…そして兄や姉たちは、ベルに対してとても腹を立てました。
そもそもベルがバラの花なんかを欲しがったから、こんなことになったと言うのです。

かわいそうなベルはとても心を痛め、兄や姉たちに言いました。
「ええ、この災いは私のせいだわ。
でもバラの花を一輪欲しがったために、これほどの不幸が起こるなんて、一体誰に分かると言うの?
いいわ、私のせいで起こったことは私が責任を取ります。
私がお父様と一緒に行って、約束を果たしてきます。」

こうして、ベルは自分のわずかな持ち物を姉たちに分け与え、約束の日が来ると馬車に乗って、
父親と一緒に野獣の住む城に向かったのです。
日が暮れる頃、父と娘は城の近くまでやってきました。

おお!彼らの目の前に突然きらびやかな花火が上がり、森全体が明るく照らし出されました。
二人は嬉しくなりました。
両側にオレンジの樹が植えられた広い道に出ると、上から下まで明るい光に照らされた宮殿が見え、
庭には優しい音楽の調べも響いてきました。

ベルは心配そうな父親を見て、にっこりして言いました。
「獲物が来るからといって、こんなに楽しい雰囲気を準備するなんて、野獣はものすごくお腹を空かせているにちがいないわね!」

ベルは父親を慰めながらも、自分の眼に映る不思議な光景にすっかり感心していました。
しかし野獣は、まだ姿を現しませんでした。

馬車を降りると、父親はベルを、あの小さな部屋へ連れて行きました。
部屋の中では暖炉がパチパチと音を立てて燃え、テーブルにはおいしそうな夕食が並べられていました。

ベルと父親はとっくにお腹がペコペコだったので、座って食事を始めました。
ちょうど食べ終わった頃、「ズシン、ズシン」 という足音が遠くから近づいてきました。

ベルは急に恐ろしくなって、父親にぴったりと寄り添い、思わず身震いしました。
火花を散らしながら、野獣が現れました…ベルにとって、確かに野獣は恐ろしい姿をしていました。

しかし同時に、ベルはとても不思議に思いました。
醜く、恐ろしい野獣の眼の中に、見かけにそぐわないこの上なく優しげな光が宿っているのを見たからです。

その優しげな光に、ベルは落ち着きを取り戻しました。
彼女は恐怖を懸命に押さえつけると、勇気を持って野獣と向かい合いました。
野獣はそれを見て、とても喜んだ様子でした。

野獣は彼女を見ると、言いました。「こんばんは!」
野獣は怒ってはいないようでしたが、その荒々しく重苦しい声音は、どんなに勇気のある人をも震え上がらせるほどでした。

ベルは優しく答えました。「こんばんは、野獣さん!」
「お前は自分から望んで来たのだね? 可愛いお嬢さん。」 野獣は尋ねました。
「お父さんが帰っても、一人でここに残れるかい?」

「ええ、野獣さん、大丈夫よ。」 ベルは気丈に答えました。
「お前が気に入ったよ。」 野獣は言いました。
「お前は自ら望んで来たのだから、ここへ残るんだ。
でもお父さんは明日の朝になったら、家に帰らなくちゃならない。」

そうして更に、父親と隣の部屋へ行き、二つの旅行カバンに入るだけの土産物を自由に選んでよいと言いました。
父親が帰ってしまったら、自分ひとりで、この恐ろしい野獣と一緒にいなければいけないかと思うと、ベルの気持ちはふさぎました。
それでも父親と一緒に隣の部屋へ行き、姉たちへの土産物を選びました。

隣の部屋のドアを開けると、ベルは 「わあ!」 と驚きの声をあげました。
部屋は、ありとあらゆる珍しい宝物や、色とりどりの洋服でいっぱいだったのです。

王妃様が着るような豪華な衣装や、まばゆいばかりの金銀財宝、水晶やダイヤモンドの様々な飾り物があり、
ベルは姉たちに一人一つずつ、贈り物を選びました。
最後に、ベルは黄金のつまった棚を開け、たくさんの黄金を取り出して、カバンに詰めました。
父親には黄金の方が役に立つと思ったからです。

翌日の朝早く、ベルの父親は朝日の中、馬車で帰って行きました。
ベルは悲しみでいっぱいになりながら、父親の後ろ姿を見送りました。
もう永遠に、父親とは会えないような気がしました。