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【第五課 第三十九節】   小説読解


  西游 (吴承恩) 


第二回 龙宫夺宝     朗読   孫敬修老師

好,小朋友们,你们知道孙悟空手里头拿的那个兵器叫什么名字吗?
金箍棒 jīn gū bàng,对了,金箍棒,可是你们知道他的这个金箍棒从那里得来的?

怎么得来的呢? 现在我就跟你们说说。
原来这个孙悟空住在花果山水帘洞,他手下呀有好多好多的猴子,
因为孙悟空本领高强,猴子们呢就拜他为美猴王,孙大圣。

这个孙悟空为了不让花果山里的猴子受别人的欺负,就带着猴子们呢练习武艺。
可是他们使唤的兵器呀都是些个竹竿子啊、木头刀什么的,
孙悟空就想,怎么能够弄一种真正合适的兵器给孩儿们用呢?
有个老猴子就说了:“大王,想要兵器,可以到京城兵器库里头去拿呀。”

孙悟空一听,立刻就问:“哎,这个兵器库在什么地方?”
“哎呀,太远了。”
“哎,远怕什么呢,快说快说。”
“哎,在东方”“好勒!

你在家里边看着孩儿们练习武艺,我老孙去也。”
说着噌——没影了,哪去了?
上京城给小猴子们找兵器去了。
工夫不大呀,他就到了京城了,往下一看,呵!

这个地方真热闹啊,人来人往,骑马的,坐轿 jiào 的,做买卖的。
他呢,噌,下来了,变成了一个农民,就混在人群里头,
一边走一边打听,打听这个兵器库在什么地方。
哎,打听着了。
可是到那儿一瞧啊,不行,进不去,外头有好些个站岗 zhàn gǎng 的在那儿看着门呢。

他——变了一个会飞的小虫,顺着门缝他就钻进去了,到里头抬头一瞧啊,豁!
这里头的兵器可真多呀,刀、枪、剑、戟 jǐ、斧、钩 gōu、叉 chā,什么都有啊,
屋子都快装满了,哎呀,这么多的东西我怎么拿呀?
嗯,有办法!
他抓了一把猴毛轻轻地一吹,噗,变了好些个猴,有拿三把的、四把的、五把的,
一人抱了一大抱啊,可是怎么出去?
这门关着呢。
孙悟空有主意,腾——一下就把这个大门给打开了,张着大嘴使劲地噗——的一吹,
好家伙,他这一口气呀变成了一阵大风,刮得是昏天黑地呀,看守的那些个兵丁们呢,
都让给吹趴下了,街上的这个人哪,也睁不开眼啦,找地方躲风啊,
孙悟空就趁这个机会呀,带着这群小猴们,抱着兵器、驾 jià 着云就回花果山来了。

这个时候啊,那个老猴子正带着猴儿们在那儿练习武艺呢。
忽然听见天空有个大声的喊。
“哎,孩儿们!我回来了。”

大伙抬头一瞧,美猴王回来了,别提多高兴了,孙悟空让那些个抱兵器的孩子们全都下来了,
把这个兵器呀都搁在那个山坡上了,他把身上一抖 dǒu,
那些猴毛又回到他的身上去了,孙悟空啊就跟那些个小猴们说:
“孩儿们,你们随便拿一件兵器,练吧!”

小猴们一听稀里呼噜、稀里呼噜一人抢了一件,连蹦带跳哇,就练开了。
孙悟空看着,他挺高兴,他就跟那个老猴子说:
“哎,你看,这孩儿们都有了合适的兵器了,可是这些个兵器都太轻,我怎么能够得一件合适的兵器呢?”

这时候,那个老猴子就说了:
“哎,大王啊,咱们这个铁板桥下边,一直地通到东海龙宫,你到那儿去找一件,好不好呀?”
孙悟空一听“对!我去!”
孙悟空是急脾气,说干就干,跳下了铁板桥“哧”钻到水里头去了。

工夫不大就来到了东海龙宫了。
他刚要往里头走啊,里面来了一个巡海夜叉 yè chā,拿着钢叉“站住,你是干什么的?”
“啊,你不知道我是花果山水帘洞的美猴王孙大圣啊,我有事要见东海龙王。”
“哦,你就是孙大圣美猴王啊,好勒,你等着,我给你禀报一声。”

“好,你去”“哎”说着那个巡海夜叉进了水晶宫。
工夫不大,又出来了,“嘿,孙大圣,东海龙王有旨zhǐ,请进”。

“好勒”孙悟空进了水晶宫,一瞧这个东海龙王,高高的坐在那个宝座上,
旁边站着文武的官员,虾兵蟹将、龙子龙孙一大帮,孙悟空进去行了一个礼。

龙王抬头一瞧,“哦,你就是花果山水帘洞的孙悟空美猴王吗?
“是的”
你有什么事找我呢?”
“龙王,我老孙只想跟你借一件兵器使使。”
“哦,这点小事好说好说,来人那,你们给美猴王拿一把大刀来。”
“龙王呀,我不愿意使刀。”
“竜王、私は刀を使用したくない。”
“哦,那么你们把九拱钢叉 jiǔ gǒng gāng chā 抬来吧。”
他们就抬来了。
孙悟空抓起来呀,试了试,往地下一扔“不行,太轻,太轻!”
龙王愣了。“这个叉呀,三千六百多斤呢,还轻呀?”
“还轻,还轻。”
“好! 你们把那个方天化戢 fāng tiān huà jí 抬来。”

“是”。有十好几个乌龟大力士一摇一晃的抬来了。
是一把方天画戟。
孙悟空拿起来就好象小孩玩的那个木头棍似的。
耍了两下,咔,往地下一插,“不行不行!太轻太轻!”
“啊? 还太轻,哎呀!它是七千二百斤重啊,还轻?”
“太轻太轻!”

大圣啊,我除了这把方天化戢,可再没有更重的兵器了。”
“龙王,你就再找找呀!”
这时候龙婆 pó 趴 pā 在龙王的耳朵那边嘀咕了嘀咕,龙王点了点头。
“哦,想起来了,大圣啊,我的海底宝库里头有一根震海神针铁 zhèn hǎi shén zhēn tiě,可有一万三千多斤重啊。

你看你拿得动吗?”
“好,让人把他抬来。”
“哎呀,谁弄的动他呀,还是你亲自去看看吧,你要是拿的动呀,我就把它送给你。”
“好的好的,带我去看看。”

孙悟空跟着龙王来到了海底宝库,真的有一个又粗又高的大铁柱子放着万道金光,
孙悟空过去了用手摸了摸,“好到是好,就是太粗太长了点,如果能够再细点,再短点就好了。”
孙悟空刚说完,你说怪不怪呀,“吱吱”那个大铁柱子立刻就变的细了一些,
也短了一些,孙悟空又说了一句:“再细点、再短点才好”,“吱吱”又变细又变短了。

他一看这个柱子的两头都有一道金箍 jīn gū,当中间是黑铁,那个金箍上面还刻着字呢:如意金箍棒重一万三千斤。
孙悟空心里说:好啊,它是不是还能够变得细一点儿啊?
再细点儿再短点儿,再细点儿再短点儿。
“吱吱吱”你说多神呀,这个大柱子变得像绣花针那么点了,都能搁到耳朵眼里面去了。

哎呀,他别提有多乐了,拿着又一耍:变大一点儿。
变得有碗口粗细了,他拿起来接着叽里咕噜的就耍开了,一直耍到了水晶宫。
把龙王吓得浑身直哆嗦,虾兵蟹将也吓得趴在地上不敢动弹了。

孙悟空拿着金箍棒往龙王宝殿一坐,“龙王,老孙谢谢你。”
“哎,不用谢不用谢。”
“龙王我还要麻烦你一件事。”
“什么事呀,孙大圣?
“你看我有了金箍棒,还得有一身盔甲 kuī jiǎ才好呀。”
龙王一听,怎么着!你还要盔甲?

他着急了,哎呀,孙大圣呀,我可没有什么好的盔甲呀。
“哎,怎么你又说没有啊,找找嘛,我老孙不白要你的,赶明儿我也要送给你一些个宝贝。”

龙王没办法啊,只好叫人把西海、南海、北海三个龙王都给接来了。
三个龙王一到就问:“大哥找我们有什么事呀?”
“是这么回事:花果山水帘洞来了一个孙悟空,要走了我的镇海神针铁,
还要让我给他盔甲,我找你们商量商量怎么办?”

北海龙王一听立刻就火了:“大哥这个猴子太可恨了,先把他抓来,我揍 zòu 他一顿再说!”
“哎呀,不行呀,他手里头有兵器呀,他要是一抡呀,谁也别想活了。”
“那这么办呢?”
西海龙王想了想就说了,“我看那,咱们把这个盔甲假装地给他,然后摆酒把他灌醉了,把他再杀了,怎么样?”
“好,就这么办。”

说着这四个龙王就来到了孙悟空的面前,“大圣啊,我南海龙王有一顶凤威紫金冠 fèng wēi zǐ jīn guàn。
你看西海龙王有一副琐子黄金甲 suǒ zǐ huáng jīn,北海龙王有一双耦丝布云鞋 ǒu sī bù yún xié,都送给大圣。”

孙悟空点了点头,“好,就放到一块用包袱 bāo fu 给我包起来。”
“好,快包快包”
“包好了我老孙就拿着走。”
“别走呀,我大哥给您预备好了,摆好了酒席,我们四个龙王请大圣喝酒,给大圣送行。”

孙悟空一听呵呵的一笑,“嘿嘿,得了吧,什么吃酒送行,你们是想把我灌醉了把我杀死,我都听见了。”
可恼呀可恼,说着腾的一腿桌子给踢翻了,稀里哗啦桌子碗全碎了。
龙王们一看心说,哎呀,这没的说了,打吧!
这北海龙王张牙舞爪就向孙悟空扑过去了。
孙悟空用金箍鲁棒往起一挑,哎,这么一拽,就好像挑着一根蛇似的。
“啪”一摔就摔到东海龙王身上。把东海龙王也给砸爬 zá pá 下了。

西海龙王和南海龙王,和鱼兵虾蟹,王八精一看都胡噜胡噜全上来了。
孙悟空一看他全上来了,“我没工夫跟你们 hào 耗时候。”他把这个金箍棒这么一抡,
他把那个大柱子都给打折了,接着,稀里哗啦,噼里扑通。
哎呀哎呀,哎吆我的妈呀。怎么回事?

孙悟空把那个大柱子都给打折了。
还不踏吗?霹雳啪塌 pī lì pā tā 一砸,这个龙子龙孙龙婆砸的直叫妈。
孙悟空就趁这个工夫啊,把那个包袱一抱。
把金箍鲁棒往胳肢窝底下一夹,噌,没影了。

等四位龙王爬出来了,想要追他,还上那里去追他去呀。
这个时候孙悟空早回到花果山,坐到水帘洞里头。
拿着他的金箍棒给孩儿们说呢。
这就是孙悟空大闹水晶宫得金箍棒这么一段故事,好吗?




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【注釈】

【金箍棒】 jīn gū bàng    如意棒
【好勒】 hǎo lēi   (行啊)よし、わかった。OK
【戟】 jǐ  矛(ほこ)
【钩】 gōu 鎌
【叉】 chā  三叉の矛(みつまたのほこ)

【稀里呼噜】 xī li hū lū    スッスッと小ばしりに
【禀报】 bǐng bào   取り次ぐ
【钢叉】 gāng chā   刺股(さすまた)鋼(はがね)のほこ
【旨】 zhǐ  思し召し
【九拱钢叉】 jiǔ gǒng gāng chā   九股の叉(くこのほこ)先端が九つに分かれたほこ

【方天化戢】 fāng tiān huà jí   方天戟(ほうてんげき)先端が三日月型になったほこ
【震海神针铁】 zhèn hǎi shén zhēn tiě  震海神針鉄 (しんかいしんしんてつ)太く黒い鉄棒
【绣花针】 xiù huā zhēn   刺繍針
【叽里咕噜】 jī li gū lū  ほくほくと
【不白要你的】  ただとは言わない

【凤威紫金冠】 fèng wēi zǐ jīn guàn  鳳翅紫金冠 (ほうししきんかん) 鳳の羽を飾った赤胴の冠
【琐子黄金甲】 suǒ zǐ huáng jīn   鎖子黄金甲 (さしおうごんこう) 鎖編みの金よろい
【耦丝布云鞋】 ǒu sī bù yún xié   耦糸布雲履 (ぐうしほうんり) 蓮の糸で作った飛行靴
【张牙舞爪】 zhāng yá wǔ zhǎo   すごい剣幕で
【叫妈】 jiào mā  悲鳴を上げる




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【口語訳】


西遊記(第二回) 竜宮の如意棒


花果山の水簾洞に住む孫悟空の配下にはたくさんの猿がいた。
優れた腕前を持つ悟空を、猿たちは美猴王(びこうおう)、また孫大聖と呼ぶ。

孫悟空は、猿たちがいじめられないように、彼らに武芸の稽古をつけていた。

とはいえ彼らが使う武器は、竹ざおや木刀ぐらいのものだった。
彼らに相応しい武器には何があるだろうと、悟空は考えていた。

すると、ある老猿が言う。
「大王、武器が欲しけりゃ、京の都の武器庫まで取りに行ったらどうかね。」

悟空はそれを聞くと、すかさず尋ねた。「その武器庫は都のどこにあるのだ?」
「かなり遠いところだ。」

「遠くともよい、早く言え。」
「ええと、都の東方だ。」

「よし、お前はここで小猿たちの稽古を見てやるがよい。俺が都まで行って来る!」
そう言うが早いか、またたく間に姿が見えなくなった。


ほどなく到着した京の都は、車馬や人の往来が盛んで、にぎやかにごったがえしていた。
悟空は、農民の姿に化けると、群衆の中に紛れ込んだ。

歩きながら、武器庫はどこにあるのかと聞き出した。だがその場所に行ってみると、
外には門番や兵隊が何人も見張っていて、中に入ることはできなかった。

そこで今度は、ハチの姿に変身し、門のすきまから潜り込んで中に入った。
中は数えきれないほどの武器の山だった。

刀、槍、剣、矛(ほこ)、斧、鎌(かま)、三叉の矛(ほこ)、何でもある。
しかし部屋にいっぱいの武器を、自分ひとりではいくらも運べるものではない。

そこで今度は、ひとつかみの毛を抜き、プッと吹くと、たちまち大勢の猿になった。
三つ、四つ、五つと、てんでに担がせて、運び出そうとしたが、あいにく門が閉まっている。


そこで今度は、大口を開けて力を入れてプーッと吹いた。するとにわかに一陣の風が起こった。

風が砂を巻き上げ、周囲が真っ暗になるほどのすさまじさで、門番や兵隊たちはみな目を閉じて
腹ばいになったまま身動きできなくなった。

悟空はこのすきに、それぞれ武器を担いだ猿たちを引き連れ、雲に乗り花果山に帰って来た。
その頃、老猿と小猿たちは武芸の稽古をしていたが、突然、空から大きな声が聞こえて来た。

「おーい、いま帰ったぞ!」
頭を上げて、美猴王が戻って来たのを見ると、小猿たちは大喜びだった。

悟空は、武器を担いだ猿たちを丘の上に降ろさせると、体を揺すって自分の毛を戻した。
すると丘の上には武器がごっそり積み上げられているというしだい。

悟空が言う。「お前ら、それぞれ武器を取って稽古しろ!」
すると小猿たちは小走りにやって来て、てんでに武器を取り、ぴょんぴょん跳ねて、稽古を始めた。


悟空は、彼らの稽古を目を細めて眺めていたが、ふと傍らにいる老猿に言った。

「子猿たちはそれぞれ自分に相応しい武器を手に入れたが、それらの武器は自分にとっては
あまりにも軽すぎて使い物にならん。さてどうしたものかな。」

すると老猿が言う。「大王、この橋の下の岩穴は、東海の竜宮まで通じているとか。
そこで探してみてはいかがか?」

悟空は聞くと「それでは、早速行ってみよう!」
そう言うが早いか、橋から飛び降りて水の中に潜って行ってしまった。

悟空はかなりのせっかちで、言ったそばから、すぐさま実行に移すのだった。


ほどなく東海の竜宮に到着した悟空が、ちょうど中へ入ろうとしたとき、
おりから巡回中の竜宮の夜叉が声をかけた。

ハガネの矛を持ったその夜叉は「止まれ!そこで何をしている?」と叫んだ。
「お前は知らんのか? 俺様は花果山水簾洞の美猴王こと孫大聖である。東海竜王に会いに来たのだ。」

「おお、あなたが美猴王の孫大聖ですか? ではしばらくお待ちください、私が取り次いでまいります。」
「よし、行ってこい」

「ははっ!」そう言うと夜叉は竜王のいる水晶宮に入って行った。


ほどなく夜叉が戻って来て言う。「孫大聖どの、東海竜王にお目通りが叶いましたので、お入りください。」
「よし、わかった。」と言って悟空が水晶宮に入ると、高い宝座の上に東海竜王が座っているのが見えた。

かたわらには文武の役人やら、蝦兵、蟹将、竜王の一族などがずらりと並んでいる。
悟空が一礼すると、竜王は頭を高く上げて言った。「おう、そちが花果山水簾洞の美猴王こと孫悟空か?」

「そうだ。」
「何しにここへ参ったのじゃ?」

「竜王、ぜひともお借りしたい武器があります。」
「そうか、それはわけのないことじゃ、誰か、美猴王どのに刀を持ってこい。」

「竜王よ、私は刀を使いたくありません」
「そうか、では、九股の叉(くこのほこ)はどうじゃな?」

悟空は、運ばれてきたその叉をひょいと受け取って、ひと振りくれると、ポンと投げ出した。
「だめだ、あまりに軽い、軽すぎる!」

竜王は、きょとんとして言う。「この叉は、三千六百斤もあるんだぞ、それでも軽いのか?」


「いや、軽すぎて話になりませんな。」
「わかった。では、方天戟(ほうてんげき)はどうじゃな?」

力持ちの亀が十数人、ゆらゆらと運んできたその戟を、悟空はひょいと持ち上げて
子供の遊ぶ木の棒のように、びゅんびゅん振り回すと、地面にドンと突き立てて言う。

「だめだ、あまりに軽い、軽すぎる!」
「なんと? これは七千二百斤もあるんだぞ、それでもまだ軽いと言うのか?」

「いや、軽すぎて話になりませんな。」
「大聖よ、この戟以上に重い武器は、残念ながらここには無いのだ。」

「竜王、もう少し探してみてはいかがかな?」
そのとき竜王の夫人が、竜王の耳に何かつぶやいた。すると竜王はうなずいて言う。

「大聖よ、わしの海底の宝庫には、震海神針鉄 (しんかいしんしんてつ)がある。
一万三千斤もある太くて黒い鉄柱だが、どうじゃ試してみるかね?」

「では、ここへ運んでもらいたい。」

「とても動かせるような代物ではない。ご自分で行かれるがよろしい。
もし気に入ったのなら、貴殿に差し上げてもよい。」

「それでは、案内してくれ。」

悟空が竜王について海底の宝庫まで来ると、そこにはまさしく、太くて大きな鉄柱が置かれていて、
その周囲には、金色の光がいっぱいにみなぎっていた。

悟空は進み出て手で触れてみる。
「なるほど、いいことはいいが、太くて長すぎる。もっと細くて短ければ良いのだが。」

悟空がそう言ったとたん、その鉄柱はなんと、するすると縮まったではないか。
悟空はさらに言う。「もうちょいと細く短かけりゃいいのだが。」

すると、ふたたび鉄柱は、幾分か細く短くなった。
よく見ると、鉄柱は黒い鉄の棒であり、両端には金の箍(たが)が嵌まっている。

その箍の上には文字が彫ってあり「如意金箍棒、重量一万三千斤」と記されている。
そこで悟空は、さらに心の中で言う。「もっと細く短くなるとぴったしなんだが。」

なんと鉄柱は、まるで刺繡針のように小さくなり、耳の穴におさまるようになった。

すっかり満足した悟空は、さらに棒を一振りして、茶碗の口ほどの手ごろな大きさにすると、
びゅんびゅん振り回しながら、水晶宮に戻って来た。

たまげた竜王は肝を冷やし、家来の蝦や蟹も、地面にうつぶせになってびくびくしている。

悟空は如意棒を手に、でんと腰をおろして言った。「竜王よ、まことにかたじけない。」
「いやいや、どういたしまして」

「竜王に、もうひとつお願いがあるのだが。」
「大聖どの、それはまたどのような望みじゃ?」

「如意棒が手に入った以上、これに見合う鎧(よろい)があると、さらに結構だと思うのだが。」
すると竜王は慌てて言う。「なんと鎧も要るのか? 大聖よ、ここにはろくなものがありませぬ。」

「そう言わずに、もう少し探してみてはいかがかな? タダとは言わぬ、ちゃんとお礼はしますぜ。」
竜王はしかたなく、家来に命じて西海、南海、北海と、三人の竜王を迎えに行かせた。


三人の竜王は到着すると言った。「兄上、何かご用ですか?」

「実はこのたび花果山水簾洞の孫悟空がやって来て、武器をよこせと言うので、わしの鎮海神針鉄を
差し出したところ、さらに鎧もよこせと言うので、お前たちと相談しようと思ったまでじゃ。」

北海竜王は、それを聞くと、腹を立てて言う。
「兄上、その憎たらしい猿めをひっ捕らえて、ぶん殴ってやろうではないか?」

「そりゃいかん、奴が手に持っている武器を振り回したら、誰も生きてはいられまい。」
「では、こうしたらどうか?」西海竜王が、しばらく考えてこう言った。

「手元にあるこの鎧を見せびらかした後、奴を酒で酔わせて、ぶち殺してはいかがか?」
「よし、ではそうしよう。」

示し合わせた四人の竜王は悟空の前にやって来て言う。

「このたび、南海竜王は鳳翅紫金冠 (ほうししきんかん)西海竜王は鎖子黄金甲 (さしおうごんこう)
北海竜王は耦糸布雲履 (ぐうしほうんり)を用意し、いずれも大聖に献上することにした。」

悟空は頷いて言う。「それは有難い、ではそれらを風呂敷に包んでくれたまえ。」


「では、早速包んで差し上げよう。」
「包んだらすぐ持って帰るぞよ。」

「お待ちくだされ、長兄が酒席を用意したので、皆で一献差し上げて、大聖をお見送りしたいと思う。」

聞くと悟空は笑って言う。「よせよせ、俺を酔わせて殺すって企みは、みんな聞こえてしまったぜ。」

話すうちに腹が立って来た悟空は、傍らの机を蹴っ飛ばしてバラバラにしてしまった。

竜王たちは、もはやこれまでと、開き直って戦うしかなかった。
まずは北海竜王、ものすごい剣幕で孫悟空に飛びかかる。

悟空は、一匹の蛇のような如意棒を担ぎ上げると、バンッ!と竜王の体に振り下ろす。
すると竜王は、地べたに倒れ伏して伸びてしまった。

続いて西海竜王と南海竜王、そして魚や蝦、蟹、スッポンらの兵隊たちが、たばになって悟空に襲い掛かる。

「俺はお前らの相手をする暇はないよ。」

悟空はそう言うと如意棒を一振りし、水晶宮の柱を打ち砕いた。
たちまち水晶宮はガラガラと崩れ始め、夫人や子供や孫たち、竜王の一族の悲鳴が一斉に上がった。

孫悟空はこのすきに、鎧一式の入った風呂敷包みを抱え、如意棒を小脇に挟み、水晶宮から姿を消した。

水晶宮から這い出て来た四人の竜王は、悟空を追いかけようとしたが、すでにどうしようもなかった。


いち早く花果山に引き上げて来た悟空は、水簾洞の中に座って、如意棒を取って来るまでの顛末を
子猿たちに話して聞かせるのだった。