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【第五課 第三十九節】 小説読解
西游记 (吴承恩)
第三回 大闹天宫(1) 朗読 孫敬修老師
我给小朋友们说说,孙悟空大闹天宫。
自从孙悟空大闹水晶宫,拿走了金箍棒,可就气坏了四个龙王了。
东海龙王马上就到天上的玉皇大帝那儿把孙悟空给告下来了。玉皇大帝他是天上的皇帝,他立刻就想派天兵天将捉拿孙悟空。
这时候有个太白金星可就对玉皇大帝说了:“慢着,看来这个猴子神通广大呀,要想抓住他,恐怕不太容易。
不如,下一道命令,把它骗上天来,给它一个小官做做,他也就老实了。要是到了天上,他再胡闹,那咱们也不怕,
随时都可以把它抓住,您看是不是这样做好呢?”
玉皇大帝想了想:“嗯,也好,那就这么办吧,你去把那个猴子骗到天上来吧!”
“是”这个太白金星立刻驾着云就找孙悟空去了,见了孙悟空这么一说,
孙悟空一听:"怎么着?玉皇大帝要请我上天上做官儿?哈,这个好啊!“孙悟空高兴了。
他把那金箍棒往耳朵眼里头一藏。变小了能搁在里头去。他就跟猴子们说了:
“哎,你们听着,我老孙要上天上做官去了,你们好好看着咱们这个水帘洞。”
说着他就跟着这个太白金星上天了。
到了玉皇大帝的面前,孙悟空也不跪也不磕头。玉皇大帝可不高兴了。
“你就是孙悟空吗?”“不错,老孙就是,你要给我个什么官做啊?”
“你啊,你就到我的御马监,去当个弼马温吧!”
“好嘞。“”这个孙悟空啊,立刻就到了御马监,进了弼马温的官院,就开始管理养马。
有这么一天。他和几个人在一块儿喝酒,他忽然放下了酒杯,他问:
“哎,我说,我这个弼马温,这个官儿是多么大的官啊?是个大官吗?
哎,你们怎么不说话?这个弼马温到底有多大?”
“好,我来告诉你吧,这个弼马温呢,是芝麻那么大的官,是最小最小的官啦,你把这个马养肥了,
嗨嗨,没事,要是养瘦了,咳,不罚你才怪呢?”
“啊?孙悟空一听就火了,好啊,闹了半天,请我老孙上天,敢情叫我当个芝麻粒儿这么大的小官啊。
哼,我老孙不干了,不干了。”说着孙悟空,踢翻了桌子,
“稀拉哗啦”全砸了,他拿出金箍棒,打出了御马街,跑出了南天门,他回花果山了。
这时候,猴子们正在水帘洞外边练舞呢 。孙悟空大喊了一声:“小的们,我老孙回来啦。”
小猴子们可高兴了:“大王回来了,大王回来了。”这猴子们赶紧把孙悟空给围上了。接到洞里头就问:
“大王,大王,您在天上做了个什么大官啊?”
“别提了,那玉皇老儿叫我做什么弼马温,给他养马,我不干了,我不干了。”
大家正说着话呢,有个猴子来报告。“大王,门外头有个独角大王要见您。”
“独角大王,叫他进来。"
“是!”
独角大王进了门儿朝着孙悟空磕头就拜:“大王,我听说你回来了,我送了你一件黄袍,请您收下吧!”
孙悟空听了可高兴,穿上了黄袍。
独角大王就问:“请问大王,你在天上做的是什么官啊?”
“咳,别提了。”孙悟空就把当弼马温的事儿一说。这个独角大王想了想:
“嗯,您回来的好,就在山上当个齐天大圣吧!”
“什么?齐天大圣?”
“是啊,跟天上的玉皇大帝一样看齐啊。”
孙悟空把头这么一摇晃:“好啊,我老孙就来个齐天大圣当当吧!”立刻就吩咐猴子们做一面大旗,
上面绣着“齐天大圣”。就在水帘洞外边竖起来一根大旗杆,把这个大旗一挂,顺着这个风“噗噜噗噜”这么一刮,呵,威风极了。
有一句话说呀“没有不透风的墙”这个事儿叫玉皇大帝知道了,先是听说孙悟空跑了,不愿意当弼马温了,跑了就跑了吧!
一听说他挂了齐天大圣的旗子了,他可恼了。立刻命令托塔李天王领着讹吒三太子和许多的天兵天将去捉拿孙悟空。
这个李天王啊,他们到了花果山先派了巨灵神去挑战。孙悟空就带着猴兵猴将们在那等着。这个巨灵神举起了大斧子,
朝着孙悟空“咔咔”就是一斧子。孙悟空不慌不忙拿金箍棒往上一迎,就听见“当啷”一声,巨灵神的斧子把儿啊就成两截了。
巨灵神吓得撒腿就跑,哪吒三太子一看巨灵神叫孙悟空给打跑回来了,心里头很不服气,他拿着宝剑就赶上前来:
“猴头,吃我一剑。”孙悟空一瞧啊,他呵呵呵地笑了。
“我说,你是谁家的小娃娃呀?”
“什么?小娃娃,猴头,你听着,我是李天王的三儿子,哪吒三太子,今天特来拿你。”
“算了吧,我要不是看你是个娃娃,我这一棒就要了你的命,快回去,告诉玉皇大帝,叫他封我为齐天大圣。
要不然,我就打上凌霄宝殿,叫他这个玉皇大帝做不成。”
哪吒三太子一听气坏了,拿着宝剑就砍孙悟空。孙悟空还是不慌不忙举起金箍鲁棒,
“哎”就这么一下,把哪吒的胳膊都震麻了。哪吒心说:“哎呀,这个猴头真不简单,真厉害呀。”
就赶紧叫了一声“变”。嗨,这个哪吒呀,变成了一个三个脑袋六个胳膊的大怪人。
拿着斩妖剑、砍妖刀啊,捆妖锁,降妖杵,好家伙,好几样兵器。来打这个孙悟空。
孙悟空一看:“好啊,你这个小娃娃会变,我也变变叫你瞧瞧。”孙悟空说了一声变。
也变成了三个脑袋六只胳膊的大怪物了。这六只手拿着三根金箍棒就和这个哪吒变得那个大怪物打起来了。
好家伙,这场战斗可真叫厉害,直打的天昏地暗,是地动山摇。
两个人正大的难解难分的时候,孙悟空手疾眼快,从身上拔下来一根猴毛,“噗”吹了一口气,
小声说了一声“变”,那根猴毛变成了一个假孙悟空。
假孙悟空拿着一根金箍棒就跟哪吒打。孙悟空的真身子转到哪吒身后对准哪吒“啪”地就是一棒,
哪吒没来得及躲,一下就打在他左胳膊上,疼的他撒腿就跑。
见了李天王就说:“哎呀,爸爸,那个猴头太厉害了,孩儿打不过他。”
“嗯,这个猴子这么厉害,那咱们回去报告玉皇大帝再想办法吧!”说着他们架着云就回了天宫了。
玉皇大帝听了李天王的报告气的浑身哆嗦呀:“哎呀,这个猴子这么厉害?如何是好呢?怎么办呢?”
那些个文官武将你看着我我看着你,谁也没办法。
这时候那个太白金星又跟玉皇大帝说了:“那个猴头本事这么大,恐怕咱们难以打胜他呀,我看嘛,不如,
还是把他叫到天上来,就答应他让他当齐天大圣,给他这么个空名儿,那又算的了什么呢?
要不然的话,他真的打上了凌霄宝殿,那,那可就不好办了。”
玉皇大帝一听,又是生气,又是着急,又是害怕。想了半天,没别的办法,只好又答应了。
太白金星又去请孙悟空说玉皇大帝答应他当齐天大圣了。就这么样,孙悟空第二次又到了天上。
他来到了凌霄宝殿,玉皇大帝封了他为齐天大圣,他高兴极了。天天除了吃饱喝足就是睡觉。没事儿干呢。
怎么办呢?他就到各处宫殿里头去逛逛,溜达溜达,跟那个神仙新官们交了朋友了,倒也逍遥自在,生活的顶美的。
可是有这么一天。一个姓许的真人就跟玉皇大帝说了:“孙悟空这个猴头整天东游西逛,
要是不给他点事儿做,这日子长了恐怕他要出乱子啊,无事生非呀!”
玉皇大帝觉得有理,那叫这个猴头干什么去呢?对,叫他去管那个蟠桃园,看桃树。
嗯,好。这样想着,玉皇大帝就把孙悟空叫到凌霄宝殿,跟孙悟空说:“大圣啊,你闲着没事儿,
替我看管桃园好吗?”“什么?看桃园,好好,行行。”
孙悟空就来到了桃园,看门的土地神立刻就迎接,行礼,“大圣,您来啦,来啦。”
“哎,你先把这个园子里的情况跟我说说吧!”
“好的,大圣,您看,这个桃园,一共有三千六百颗桃树,前边这是一千二百颗,花儿开的不大,结的桃子也小,
三千年才熟一次,吃了这种小桃能够成仙得道,身体健康;您再看中间那一千二百颗,那是双层花瓣,这个桃子甜极了,
要六千年熟一次,吃了这种桃啊,可以长生不老;来,您看,最后边的这,这是一千二百颗,这种桃大,核小,九千年才熟一次,
要是吃了这种桃啊,就能像月亮和太阳那样,永生不死啊。”
孙悟空一听啊,高兴地直蹦,从那天起,他就三天两头地上蟠桃园这儿来瞧瞧。
有一天他一看桃树上的桃子发红了,熟了。他高兴了,他就跟园子里的神仙,跟那个土地神说:
“哎哎哎,我老孙累了,要在园子里头睡一觉,你们都到园子外边去,在外边等我。”
园子里头的神仙跟那个土地神谁敢不听他的呀?全都出去了。
孙悟空,“噌”上了树了,就挑那个熟透了的桃子,拼命地猛吃。
吃饱了他就睡觉。就这么着,孙悟空是天天上这来吃桃。
这天王母娘娘要开蟠桃盛会,派了七个仙女到这儿来摘桃,仙女们来到园子里头一瞧,
奇怪呀,这桃树上的桃子怎么这么稀稀拉拉的呀?哎,怎么就剩了几个青的了?
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【注釈】
【玉皇大帝】 yù huáng dà dì 玉皇大帝(ぎょくこうたいてい)
天界の最高神。凌霄宝殿(りょうしょうほうでん)に住んでいる。
【太白金星】 tài bái jīn xīng 太白金星(たいはくきんせい)
玉皇大帝(ぎょくこうたいてい)の側近。孫悟空のもとへたびたび使者として出向く。
【御马监】 yù mǎ jiān 御馬監(ぎょばかん)
皇帝の馬を管理する役人。皇帝の領地や牧草地も管理していた。
【弼马温】 bì mǎ wēn 弼馬温(ひっぱおん)
御馬監(馬の飼育係)の長官という役職だが、実は馬小屋の番人という端役。
【黄袍】 huáng páo 黄袍(おうほう)
皇帝専用の長衣。黄色は皇(huang)と同音であり、高貴な色とされていた。
【齐天大圣】 qí tiān dà shèng 斉天大聖(せいてんたいせい)
天と斉(ひと)しいほど立派な大聖人の意。
【跟 … 一样看齐】 kàn qí … と同じく肩を並べる。
【没有不透风的墙】 méi yǒu bú tòu fēng de qiáng
風を通さぬ塀(まがき)はない(秘密は必ずばれるものだ)
【托塔李天王】 tuō tǎ lǐ tiān wáng 託塔李天王(たくとうりてんおう)
道教の軍神。仏教では毘沙門天という。名の由来は、掌に塔を乗せていることから。
【讹吒三太子】 é zhà sān tài zǐ 哪吒三太子(なたさんたいし)
託塔李天王の三男。頭が三つ、腕が六本という三面六臂の術を得意とする軍神。
【巨灵神】 jù líng shén 巨霊神(きょれいしん)
託塔李天王の配下の河神。振り回すたびに火花がはじけるという大斧を操る。
【蟠桃园】 pán táo yuán 蟠桃園(ばんとうえん)
桃園。蟠桃は数千年に一度結実するという桃。食べると不老不死を得るという。
【王母娘娘】 wáng mǔ niáng niang 西王母(せいおうぼ)
天界の最上位の女神。蟠桃園の女主人でもある。
普段は崑崙山(こんろんさん)の瑶池(ようち)に住んでいる。
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【口語訳】
西遊記(第三回)(1) 天界を騒がす(1)
孫悟空が水晶宮で大暴れしたうえ、如意棒を持ち去ってしまったので、四人の竜王は激おこぷんぷんであった。
東海竜王はすぐさま天上の玉皇大帝のもとへ行き、孫悟空を訴えた。
玉皇大帝はさっそく天兵天将を派遣して孫悟空を捕まえることにした。
すると太白金星が玉皇大帝に言った。「お待ちくだされ、この猿は神通力があるようだ。捕まえるのは、容易ではありませぬ。
それより、奴を天上界に呼び寄せて、小さな官職でも与えれば、きっとおとなしくなるに違いない。
天上界であれば、たとえ奴が暴れても、いつでも捕まえられるから、我々は何も恐れることはない、そうしたほうがいい。」
玉皇大帝はちょっと考えて言った。「うん、じゃあ、そうすることにしよう。その猿を、うまく天におびき寄せてくれ。」
「承知した。」太白金星はさっそく雲に乗って孫悟空のところへやって来た。
孫悟空は喜んで言った。「なんだと?玉皇大帝は俺に天上の役人になってほしいのか?なるほど、悪い話ではないな。」
悟空は如意棒を耳の奥に隠した。その棒は小さくなって中に入れられるのだ。
そして悟空は猿たちに言った。「おい、おまえら、俺様は天の役人になるぞ、この水簾洞をよろしく頼む。」
そう言って悟空は太白金星とともに天に向かった。
玉皇大帝の前に出ても、悟空は跪かず、頭も下げなかった。
そこで玉皇大帝は不機嫌そうに尋ねた。「お前が孫悟空か?」
「そのとおり、俺様が孫悟空だ、ところで俺にどんな仕事をくれるんだ?」
「おまえは、わしの馬小屋へ行って、弼馬温(ひっぱおん)をやれ。」
「わかった。」悟空は、さっそく馬小屋に行き、弼馬温の役人として馬の世話を始めた。
そんなある日、悟空は役人仲間と酒を飲んでいたが、急に杯を置いて尋ねた。
「おい、弼馬温てのは、どれぐらいの官職なんだ?大官か?
おや、おまえらどうして黙っているんだ? 弼馬温の位の大きさは?」
「よし、教えてやろう、この弼馬温はゴマ粒ほどの官だ、つまり一番下の官職だ。
馬が肥えてるうちはいいが、もし瘦せさせたら、とたんに厳しい罰を受けてしまうんだ。」
「なんだと?」聞いて悟空はかっかと頭にきた。
「するとこの俺様に、こんなゴマ粒の仕事をさせるために、わざわざ天上に呼び寄せやがったのか? フン、やめだ、やめだ。」
悟空はそう言うと、ガラガラッと役所の机を蹴ってひっくり返し、耳の穴から如意棒を取り出した。
そいつを縦横にぶん回しながら馬小屋を飛び出ると、まっすぐ南天門を通り抜け、そのまま花果山に向かった。
その頃、猿たちは、水簾洞の外で教練をしていた。
悟空は大声で叫んだ。「おい、おまえら、孫様のおかえりだ!」
「大王が帰ってきた。大王が帰ってきた!」小猿たちは大喜びで孫悟空を取り囲んだ。
「大王様、あなたは天上で何をしたのですか?」
「フン、あろうことか、あの玉皇のじじいは、この俺様に馬番をやらせやがった。だから頭にきて帰って来たのさ。」
みなで話していると、一匹の猿が報告にやって来た。「大王、門の外に独角大王がお目えです。」
「独角大王が来たのか? こちらへ呼んでくれ。」
「ははっ。」
独角大王は門を入ると、悟空に向かって丁寧にお辞儀をした。
「孫大王、あなた様がご帰還と聞いたので、お祝いのしるしに黄袍(おうほう)を持参しました。どうぞお受け取りください!」
孫悟空は喜んで、さっそく黄袍を着た。
独角大王が聞いた。「孫大王、あなた様は天上で何のお仕事をされたのですか?」
「フン、実はな。」孫悟空は弼馬温の話をした。
独角大王はちょっと考えて言った。「それは、お帰りになって当然でしたな。
ならばいっそのこと、この山で斉天大聖(せいてんたいせい)になられたらいかがでしょうか?」
「斉天大聖とな?」
「ええ、玉皇大帝と同じくらいの最高位でございます。」
悟空は喜色満面で言った。「そいつはいい、今日から俺は斉天大聖を名乗るぞよ!」
さっそく猿たちに「斉天大聖」と刺繍した大きな旗をつくらせた。
水簾洞の外に大きな旗竿を立てて、その旗をつるすと、風に乗って、ぐいぐい、ぐいぐいと、えらい威風がする。
さて、悪い話はたちまち知れ渡ると言うが、悟空が弼馬温から逃げ出したという知らせは、すぐさま玉皇大帝の耳に入った。
さらに悟空が斉天大聖の旗を掲げたと聞いて、玉皇大帝は腹が立つやらあきれるやら。
直ちに託塔李(たくとうり)天王を呼びつけ、哪吒(なた)三太子と多くの天兵天将を従えて、孫悟空を捕まえてこいと命じた。
託塔李天王は、花果山にやって来ると、まず先に巨霊神(きょれいしん)に出陣を命じた。
水簾洞の入り口では、すでに孫悟空が猿兵猿将を引き連れて待ち構えている。
巨霊神は手に大きな斧を掲げ、孫悟空めがけてカッカッと斧を振り降ろした。
孫悟空がすかさず如意棒を持って上にむけると、「ガチャン」という音が聞こえ、巨霊神の斧が真っ二つになった。
とてもかなわんと見た巨霊神はあたふたと逃げ出してしまった。
哪吒三太子は巨霊神が駆け戻ってくるのを見ると、悔しさのあまりわなわなと打ち震える。
哪吒は宝剣を携え、水簾洞に突進すると声高に叫んだ。「無法猿め、この剣を受けてみよ!」
悟空は、哪吒を一目見ると、フフンとせせら笑って言う。
「ねえ、君、どこのお坊ちゃま?」
「何を?この化け物猿め、聞け、私は李天王の三男、哪吒三太子だ、今日はわざわざおまえを退治しに来たのだ。」
「よしたほうがいい。君が坊やでよかったよ、でないとあの世行きになるところだった。この如意棒のエジキとなってな。
さあ帰って、玉皇大帝に言ってやれ。この俺様を斉天大聖にしろってな。
さもないと、俺様は天宮に攻め込んで、玉皇大帝を叩き出してやるとな。」
怒り心頭に発した哪吒三太子は、宝剣を振るって孫悟空に襲い掛かる。
悟空はさっと如意棒を掲げ、バンッと受けては哪吒の腕を痺れさせた。
「何と!この悪猿、一筋縄ではいかぬ。」哪吒がつぶやく。
とっさに「変!」と叫ぶや、たちまち哪吒は、三面六臂の恐ろしげな姿に変じた。
その六本の腕は、妖剣、妖刀、鎖鎌、金剛杵などさまざまな武器を握っていた。
それらをブンブン振り回して、正面から悟空に打ってかかる。
悟空はこれを見てつぶやく。「なるほど、坊やのくせに味なまねをしやがる。ならばいざ、我が神通力を見よ!」
孫悟空も一声叫ぶと、同じく三頭六臂の怪物の姿に変身し、六本の手に三本の如意棒を持ち、哪吒に立ち向かう。
哪吒と悟空の攻防は、まさに地動き、山揺らぐばかりのすさまじい大立ち回りとなった。
このままでは埒が明かぬと見た悟空、すかさず体から一本の毛を抜いて、ふっと息を吹き込み、「変!」と小さく唱える。
すると何と、それは悟空と瓜二つとなり、そのニセの悟空も如意棒を持って哪吒に襲い掛かる。
その隙に悟空の真の体は哪吒の背後に移動するや、いきなり「バンッ!」と、強烈な一撃を哪吒の左腕に打ち下ろした。
哪吒は身を躱そうとしたが間に合わず、傷んだ左腕を押さえたまま退き、そのまま一目散に退散した。
哪吒は李天王に言った。「いやはや父上、あの猿めは、とても太刀打ちできる相手ではありませぬ。」
「うむ、奴はまさに化け物猿じゃ。ともかく玉皇大王に報告して何とかしよう」そう言って彼らは雲に乗り天宮に戻っていった。
報告を聞いた玉皇大帝は、ぶるぶるわなわな震えて言った。「いや、何とも手ごわい猿よのう、一体どうすればよいのであろうか?」
文官の武将たちは、全くお手上げとばかりに顔を互いに見合わせた。
すると太白金星が玉皇大帝に言った。
「あの猿めは、かなりの凄腕ですから、まともに立ち向かっても勝ち目はありません。
いっそのこと、ふたたび天へ呼んでやり、斉天大聖に封じてやれば、万事まるく収まるでしょう。
そのような名まえだけの官を与えたところで、大事に至ることはありますまい。
さもなくば奴は天宮に殴り込みをかけると申しており、そうなれば実に困ったことになりましょう。
玉皇大帝はそれを聞くと、腹が立つやらあせるやら、びびりまくって思案の末、やむなくそれを承諾した。
太白金星は、また孫悟空のもとへ出向き、玉皇大帝が、彼を斉天大聖に任命する旨を伝えた。
こうして孫悟空は、再び天界の凌霄宝殿(りょうしょうほうでん)までやって来る。
そこで玉皇大帝は、斉天大聖の位を彼に授けた。孫悟空は大喜びである。
だが毎日、食べて、飲んで、寝るだけだ。さて、何にもすることがない。
彼はあちこち宮殿の中をぶらついては、神仙の役人たちと友達になる。自由気ままな、この上なしの生活だ。
そんなある日のこと。許という真人が玉皇大帝に言う。
「孫悟空とかいう猿めは、一日中遊びまくっておる。奴に何か仕事を与えたほうがよい。
このままでは、きっと揉め事を起こすだろう。そうなると面倒な事になる。」
玉皇大帝は、なるほどと頷いた。それでは、あの猿めに何をやらせたらよいか。
そうじゃ、あの桃園の管理を言いつけよう。桃の木の世話をさせるのだ。
こりゃよい考えじゃ。そう思った玉皇大帝は、孫悟空を凌霄宝殿に呼び出して言う。
「大聖、おまえは暇そうじゃから桃園の番をしてくれないか」「えっ? 桃園の番? はは、承知した。」
孫悟空が桃園にやって来ると、門番の土地神が出迎えて挨拶する。「大聖、ようこそ来られた。」
「おい君、この桃園は、そもそもどういう庭なのだ?」
「はは、大聖、ごらんあれ、この桃園、全部で三千六百株の桃の木がありまする。
前の方に千二百株、これらは花も小さく、桃の実も小粒で、三千年に一度だけ熟します。
人がこれを食べると、仙人になって道術を会得し、体も元気いっぱいとなります。
真ん中の千二百株、これらは花びらが二重になっていて、実は甘く、六千年に一度だけ熟します。
人がこれを食しますと、不老長寿の身となります。
そして最後の千二百株、これらは実は大きいが、核(たね)は小さく、九千年に一度だけ熟します。
人がこれを食らいますと、月や太陽のように、永遠に死ななくなるという代物です。」
孫悟空はそれを聞くと、すっかり嬉しくなり、その日からしきりに桃園を見に来るようになった。
ある日、桃が赤く熟しているのを見つけた悟空は、土地神やら桃園の神仙やらにこう告げた。
「自分はどうも疲れたようで、桃園の奥でひと眠りしたいので、みんな門の外に出て、待っててくれ。」
土地神や桃園の神仙たちは、言われるままに、みんな門の外へ引き下がった。
そこで悟空、するすると木に登ると、よく熟した桃ばかりを選んで、思い切り食べ始めた。
満腹になったらひと眠りするという調子で、悟空は毎日、桃の実をしこたま賞味するようになった。
ある日、西王母が蟠桃(ばんとう)の宴会を開くことになった。そこで七人の仙女を桃園に遣わして、桃を摘みに行かせた。
ところが仙女たちが奥へ行ってみると、これはどうしたことであろうか、
桃の実がいやにまばらで、まだ青いやつが、いくつか残ってるだけであった。