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【第五課 第六節】   小説読解


  「奔跑吧,梅勒斯!」  太宰治 (三)  


我输了。我没用。嘲笑我吧。

“国王曾经对我耳语,让我稍迟一点再回去。
他答应我说,只要我迟些回去,他就会杀掉替身,饶我一命。

我憎恨国王的卑劣。但事到如今,我也只能任由国王去说了。
我大概是赶不及了。国王或许会自以为是地耻笑我一番,然后再将我无罪开释。

真到了那一刻的话,我会感觉比死更痛苦。我是永世的叛徒,是人世间最令人不齿的那类人。
塞利奴提乌斯,我也会随你而去的。让我和你一起死吧。唯有你,必定会相信我。

不,或许这不过只是我的一厢情愿。啊,不如我就做一回叛徒,苟且偷生吧。村里,还有我的家人。
还有我的羊只。妹妹和妹夫,恐怕也不会把我从村里赶出去的吧。

什么正义,什么诚信,什么爱,仔细想来,其实根本一文不值。
杀掉他人,独自偷生。这不就是人世间的定律吗?

呵,一切都是那样的愚不可及。我是个丑陋的叛徒。
想怎样就怎样吧。万念俱休矣——”梅勒斯摊开四肢,开始迷迷糊糊地打起盹来。

忽然,梅勒斯的耳畔响起了潺潺水声。他轻轻抬起头,屏住呼吸,侧耳聆听着。
脚边,似乎有一股流水淌过。他晃晃悠悠地起身一看,只见岩石的裂缝里,正轻语般地汩汩涌出一股清水。

梅勒斯就像是被那股泉水所吸引了一般,蹲下身去,用双手掬起一捧水来,喝了一口。
他长叹了一口气,感觉就像是从梦中苏醒过来一样。能迈出脚去了。

走吧。肉体疲劳恢复的同时,也蕴生了一丝微微的希望。
那是履行义务的希望,是杀身成仁、守护名誉的希望。

斜阳在树叶上投下彤红的光芒,叶片和树枝都如熊熊烈火一般。
距离日落还有一点时间。

“还有人在等待着我。还有人对我毫不怀疑,静静地期待着我。
还有人对我深信不疑。我的性命,根本不足为惜。以死谢罪,不过只是堂而皇之的空话。

我不能辜负他人对我的信任。现在,我的心里就只有这一件事。奔跑吧,梅勒斯!


“有人对我深信不疑。有人对我深信不疑。刚才那恶魔般的耳语,感觉就像是个梦。一个噩梦。忘掉它吧。
人在五脏俱疲时,就会突然做起那样的噩梦。梅勒斯,这并非是你的耻辱。

你果然是位真正的勇士。现在,你不是已经再次起身,迈步狂奔着吗?
幸甚!我能够以正义之士的身份,慷慨就义了。

啊,太阳西沉了,不断地西沉。等一等,天神!我自出生那天起,就是个正直的人。
请让我作为正直的人,去面对死亡吧。”

梅勒斯推开路上的行人,如同一阵黑色旋风似的狂奔。
他冲过原野上的酒宴,吓得人们惊恐不已。

他踢开野狗,跃过小溪,以太阳渐渐西沉的十倍速度飞奔着。
在他风一般地从一帮旅人身旁穿过时,他听到了不祥的话语。

“眼下,那人正在被处以磔刑。”

“啊,那个人,我就是在为了那个人而一路飞奔的啊。
不能让那个人死掉。快,梅勒斯,千万不能有半刻的延迟。

要让世间的人都见识到爱和诚信的力量。”什么体面,根本都无所谓了。
梅勒斯几乎已是全身赤裸。他甚至都无法呼吸,两口,三口,不停地从嘴里喷着鲜血。

不远了。远处,已经可以看到西拉库斯集市的塔楼了。迎着夕阳,塔楼正闪耀着光芒。
“啊,梅勒斯大人。”一阵哀鸣随风而至。

“是谁?”梅勒斯边跑边问。
“我叫菲罗斯托拉托斯,是您的朋友塞利奴提乌斯的徒弟。”

年轻的石匠也跟在梅勒斯身后飞奔起来,叫嚷着说,“不行了,没用了。
您别再跑了。师父他已经没救了。”

“不,太阳还没有下山。”

“现在,国王正在对师父他执行死刑。您来迟一步了。
我恨您。您为什么不再早片刻来呢?”

“不,太阳还没有下山。”

梅勒斯心中痛不欲生,两眼紧盯着那一轮血红的夕阳。
除了奔跑之外,他什么也不想。

“别跑了。请您别再跑了。现在,您该更珍惜自己的性命。
师父他一直很信任您。被人拽到刑场去的时候,他也依旧一脸的平静。

面对国王陛下的再三戏弄,他也只回答说‘梅勒斯会来的’。他的心里,抱着坚定的信念。”

“就是因为如此,我才要跑下去。就是因为他信任我,我才要跑下去。
这不是来得及来不及的问题。也不是他还有命没命的问题。

我感觉自己是在为更加恐惧、更加巨大的事物而奔跑。跟我来吧!菲罗斯托拉托斯。”

“啊,您不会是疯了吧?那您就跑个痛快好了。搞不好,或许还能来得及。您就快跑吧。”

何须多言。太阳尚未下山。梅勒斯拼尽最后的力气,全力狂奔。
他的脑海里已是一片空白,再没有任何的思绪,就只是被一股莫名的巨大力量牵着,向前奔去。

就在太阳即将没入地平线,最后的一缕余晖也行将消逝的时候,梅勒斯疾风般地冲入了刑场。他赶上了。


“慢着。不能杀他。梅勒斯回来了。他依照约定,已经回来了。”
梅勒斯想要竭力向着刑场上的众人嘶喊,但喉头却干涸嘶哑,只发出了微弱的声音。

聚集在刑场上的人们,根本就没人留意到他的回归。
十字架已高高竖起,被五花大绑的塞利奴提乌斯,正被缓缓吊起。

看到这一幕,梅勒斯迸发出最后的气力,如同之前抗御浊流一般,拼命拨开围观的人群。
“我来了,刑吏!要杀就杀我吧!我是梅勒斯。

当初让他来做人质的我,现在就站在这里!”
梅勒斯一边全力嘶喊,一边冲上刑台,伸手使劲拽住了朋友被吊起的双脚。

人群便如同炸开了锅一样,每个人都叫嚷着“太好了”“饶恕他”。
绑在塞利奴提乌斯身上的绳索,终于被解开了。

“塞利奴提乌斯。”梅勒斯两眼含泪地说,“打我一拳吧,使足劲儿打我吧。
我在路上做了个噩梦。如果你不打我的话,那我就没有资格拥抱你了。打吧!”

塞利奴提乌斯仿佛早已洞悉了一切。他点点头,狠狠地一拳打到梅勒斯的右颊上,声音响彻了整个刑场。
之后,他温柔地笑着说:“梅勒斯,你打我吧,声音要像刚才我打你那拳一样响亮。

在这三天里,我曾经稍稍对你起过一次疑心。这是我出生以来,头一次怀疑你。
如果你不打我的话,那我也没资格拥抱你了。”

梅勒斯抡起胳臂,一拳打到了塞利奴提乌斯的脸颊上。
“谢谢你,我的朋友。”两人异口同声地说着,紧紧拥抱在一起,喜极而泣,放声痛哭。

人群唏嘘不已。暴君迪欧尼斯在人群背后瞪圆了双眼,紧紧盯着两人。过了一阵,他面红耳赤地走到两人身旁。

“你们的愿望实现了。你们战胜了我的心。诚信,绝非空虚的妄想。
让我也加入到你们当中吧。请你们满足我的愿望,让我也加入到你们当中吧。”

人群里猛然间爆发出了欢呼声。
“万岁!国王陛下万岁!”

一名少女向梅勒斯奉上了绯红的披风。梅勒斯一下子慌了神。他的好朋友灵机一动,提醒了他。

“梅勒斯,你这不还光着吗?快穿上披风吧。那位可爱的姑娘,是不想让众人都看到梅勒斯你的裸体啊。”

勇士的脸,骤然间变得绯红。




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【注 釈】


苟且偷生】 gǒu qiě tōu shēng     良心をごまかして生き長らえる
万念俱休】 wàn niàn jù xiū    万事休す。何とも施すべきすべがない。

正轻语般】 zhèng qīng yǔ bān    小さくささやくように。
堂而皇之】 táng ér huáng zhī    見せかけだけの。うわべだけの。

菲罗斯托拉托斯】 fēi luó sī tuō lā tuō sī     フィロストラトス(人名)
痛不欲生】 tòng bú yù shēng    悲しみで胸が張り裂ける



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【口語訳】


「走れメロス」 (三)


私は負けたのだ。だらしが無い。笑ってくれ。
王は私に、ちょっとおくれて来い、と耳打ちした。

おくれたら、身代りを殺して、私を助けてくれると約束した。
私は王の卑劣を憎んだ。けれども、今になってみると、私は王の言うままになっている。

私は、おくれて行くだろう。王は、ひとり合点して私を笑い、そうして事も無く私を放免するだろう。

そうなったら、私は、死ぬよりつらい。
私は、永遠に裏切者だ。地上で最も、軽蔑されるべき人間だ。

セリヌンティウスよ、私も死ぬぞ。君と一緒に死なせてくれ。
君だけは私を信じてくれるにちがい無い。いや、それも私の、ひとりよがりか?

ああ、もういっそ、裏切り者として生き伸びてやろうか。

村には私の家が在る。羊も居る。妹夫婦は、まさか私を村から追い出すような事はしないだろう。
正義だの、信実だの、愛だの、考えてみれば、くだらない。

人を殺して自分が生きる。それが人間世界の定法ではなかったか。

ああ、何もかも、ばかばかしい。私は、醜い裏切り者だ。
どうとも、勝手にするがよい。やんぬるかな。――四肢を投げ出して、うとうと、まどろんでしまった。


ふと耳に、せんせん、水の流れる音が聞えた。
そっと頭をもたげ、息を呑んで耳をすました。

すぐ足もとで、水が流れているらしい。
よろよろ起き上って、見ると、岩の裂目からこんこんと、何か小さく囁きながら清水が湧き出ているのである。

その一筋の泉に吸い込まれるようにメロスは身をかがめた。
水を両手ですくって、一口飲んだ。

ほうと長い溜息が出て、夢から覚めたような気がした。
歩ける。行こう。肉体の疲労恢復と共に、わずかながら希望が生れた。

義務遂行の希望である。わが身を殺して、名誉を守る希望である。
斜陽は赤い光を、樹々の葉に投じ、葉も枝も燃えるばかりに輝いている。

日没までには、まだ間がある。私を、待っている人があるのだ。
少しも疑わず、静かに期待してくれている人があるのだ。

私は、信じられている。私の命など問題ではない。

死んでお詫びなどとは、口先だけのたわ言にすぎぬ。
私は、信頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。

走れ!メロス。


私は信頼されている。私のことを信じて疑わない人がいる。
先刻の、あの悪魔の囁きは、あれは夢だ。悪い夢だ。

忘れてしまえ。五臓が疲れているときは、ふいとあんな悪い夢を見るものだ。

メロス、おまえの恥ではない。やはり、おまえは真の勇者だ。

再び立って走れるようになったではないか。ありがたい!
私は、正義の士として死ぬ事が出来るぞ。

ああ、陽が沈む。ずんずん沈む。待ってくれ、ゼウスよ。
私は生れた時から正直な男であった。正直な男のままに死なせて下さい。

路行く人を押しのけ、跳ねとばし、メロスは黒い風のように走った。

野原で酒宴の、その宴席のまっただ中を駈け抜け、酒宴の人たちを仰天させ、犬を蹴とばし、小川を飛び越え、
少しずつ沈んでゆく太陽の、十倍も早く走った。


一団の旅人とさっとすれちがった瞬間、不吉な会話を小耳にはさんだ。

「いまごろは、あの男も、磔にかかっているよ。」

ああ、その男、その男のために私は、いまこんなに走っているのだ。

その男を死なせてはならない。急げ、メロス。おくれてはならぬ。
愛と誠の力を、いまこそ知らせてやるがよい。

体面などはどうでもよい。メロスは、いまは、ほとんど全裸であった。
呼吸も出来ず、二度、三度、口から血が噴き出た。

見える。はるか向うに小さく、シラクサの市の塔楼が見える。
塔楼は、夕陽を受けてきらきら光っている。



「ああ、メロス様。」うめくような声が、風と共に聞えた。

「誰だ。」メロスは走りながら尋ねた。

「フィロストラトスでございます。貴方のお友達セリヌンティウス様の弟子でございます。」
その若い石工も、メロスの後について走りながら叫んだ。

「もう、駄目でございます。むだでございます。走るのは、やめて下さい。もう、あの方かたをお助けになることは出来ません。」

「いや、まだ陽は沈まぬ。」

「ちょうど今、あの方が死刑になるところです。ああ、あなたは遅かった。
おうらみ申します。ほんの少し、もうちょっとでも、早かったなら!」

「いや、まだ陽は沈まぬ。」

メロスは胸の張り裂ける思いで、赤く大きい夕陽ばかりを見つめていた。
走るより他は無い。

「やめて下さい。走るのは、やめて下さい。いまはご自分のお命が大事です。
あの方は、あなたを信じて居りました。刑場に引き出されても、平気でいました。

王様が、さんざんあの方をからかっても、メロスは来ます、とだけ答え、強い信念を持ちつづけている様子でございました。」

「それだから、走るのだ。信じられているから走るのだ!
間に合う、間に合わぬは問題でない。

人の命も問題でないのだ。私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいものの為に走っているのだ。
ついて来い!フィロストラトス。」

「おお、あなたは気が狂われたか。それでは、お気のすむまで走って下さい。
ひょっとしたら、間に合わぬものでもない。どうぞお走り下さい。」

言うにや及ばぬ。まだ陽は沈んでいない。最後の死力を尽して、メロスは走った。

メロスの頭は、からっぽだ。何一つ考えていない。
ただ、わけのわからぬ大きな力にひきずられて走った。

陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとした時、メロスは疾風の如く刑場に突入した。

間に合った!


「待て。その人を殺してはならぬ。メロスが帰って来た。約束のとおり、いま、帰って来た。」

と大声で刑場の群衆にむかって叫んだつもりであったが、喉がつぶれて嗄れた声がかすかに出たばかり、
群衆は、ひとりとして彼の到着に気がつかない。

すでに磔の柱が高々と立てられ、縄を打たれたセリヌンティウスは、徐々に釣り上げられてゆく。

それを見たメロスは、最後の気力を発して、先刻、濁流を泳いだように群衆を掻きわけ、掻きわけ、
「私だ、刑吏!殺されるのは、私だ。メロスだ。彼を人質にした私は、ここにいる!」
と、嗄れた声で精一ぱいに叫びながら、ついに磔台に昇り、釣り上げられてゆく友の両足に、かじりついた。

群衆は、一斉にどよめいた。あっぱれ。ゆるせ、と口々にわめいた。
セリヌンティウスの縄は、ほどかれたのである。


「セリヌンティウス。」メロスは眼に涙を浮べて言った。

「私を殴れ。ちから一ぱいに頬を殴れ。私は、途中で一度、悪い夢を見た。
君がもし私を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ。」

セリヌンティウスは、すべてを察した様子でうなずき、刑場一ぱいに鳴り響くほど音高くメロスの右頬を殴った。
殴ってから優しく微笑ほほえみ、「メロス、私を殴れ。同じくらい音高く私の頬を殴れ。

私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。
生れて、はじめて君を疑った。君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない。」

メロスは腕にうなりをつけてセリヌンティウスの頬を殴った。
「ありがとう、友よ。」二人同時に言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。


群衆の中からも、すすり泣きの声が聞えた。

暴君ディオニスは、群衆の背後から二人の様を、まじまじと見つめていたが、やがて静かに二人に近づき、顔をあからめて、こう言った。

「おまえらの望みは叶ったぞ。おまえらは、わしの心に勝ったのだ。
信実とは、決して空虚な妄想ではなかった。

どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。どうか、わしの願いを聞き入れて、おまえらの仲間の一人にしてほしい。」

どっと群衆の間に、歓声が起った。

「万歳、王様万歳。」


ひとりの少女が、緋のマントをメロスに捧げた。
メロスは、まごついた。佳き友は、気をきかせて教えてやった。

「メロス、君は、まっぱだかじゃないか。早くそのマントを着るがいい。
この可愛い娘さんは、メロスの裸体を、皆に見られるのが、たまらなく口惜しいのだ。」

勇者は、ひどく赤面した。