小説モーニング娘。 第十章「ハッピーサマーウェディング」        Top Page
   

「モーニング娘。のメンバーだった2年間は、夢のように楽しくてかけがえのないひとときでした。
家族のように一心同体だったメンバーと離れるのはとても寂しいのですが、私はパタンナー(服を作る人)の夢に向かって走ることを決意しました。」


1999年12月5日、石黒彩がモーニング娘。の脱退を宣言した。石黒は短大でデザインを学び、服飾デザイナーになるのが以前からの夢だった。

今年10月、所属事務所に「グループで2年間、精いっぱいやり切りました。脱退して新しい夢にチャレンジしたい」と申し入れていたという。
翌年1月7日の大阪厚生年金会館でのライブコンサートが最後の活動となった。


「皆さん、今までホントにどうもありがとうございました。
今日のステージで私は最後になってしまうけど、今日の、みんなの、勇気をくれた笑顔と声援を絶対に忘れません。
だから、それに応えるため、最後の、1分1秒、1曲1曲を大切に心を込めて精いっぱい歌いきります!」


ステージには他のメンバーが花束をもって現れた。先に脱退していった福田明日香も駆けつけた。1人1人と抱きあっていく石黒。
初期メンバー5人と全国各地を這いずり回り手売りで5万枚のCDを完売した事が、全てはモーニング娘。伝説の始まりだった。

矢口真里、保田圭、市井紗耶香。第2期メンバーとして知られる彼女たちとも、苦労を共にした。
売上げの落ち込みから、底知れぬ不安に眠れない日々もあった。皆で励ましあう事で、さらに結束を高めた。

そんな中、彼女たちに転機が訪れたのは、「LOVEマシーン」であり後藤真希との出会いであった。


ステージ上で、一人一人花束とコメントを受け取ったときも、石黒は気丈に振舞う。
「ありがとう」というその言葉には、オリジナルメンバーとしての誇りと、気高さが宿っていた。

だが最後に中澤裕子から花束を受け取った際、とうとう耐え切れずにその場に泣き崩れた。
全力でぶつかってきたこの数年間が走馬灯のように蘇ってきた。

会場からは石黒コールが巻き起こり、それはいつしか会場一杯になった。
そしてついにコンサートは終了。石黒彩は約2年に渡るモーニング娘。としての活動に終止符を打ったのである。