小説モーニング娘。 第二十三章 「浪漫〜MY DEAR BOY〜」        Top Page
   

「おばちゃん、卒業おめでとうございます…。」涙で泣き崩れた顔。

喉をつぶしたのか、風邪なのか、懸命に声を絞り出した次の瞬間、高橋愛はその場にしゃがみこんでしまった。

「こらっ高橋!!立ってしゃべりなさい。」保田圭は、花束を抱えたまま膝を折り、うずくまった彼女に厳しくも、優しく声をかける。
今にも倒れそうな彼女はふらふらと立ち上がり、涙にくれながらも、なんとかお別れのメッセージを言い終える。


滅多になかない加護亜依までが泣いていた。
「あのねぇ〜ケメちゃん … 聞いてくれる?」「なぁに? 加護?」

「たぶん無理だと思うけど … 卒業しないでほしい!」

… 不意打ちの言葉であった。保田は涙があふれる顔をとっさに横へ向けて堪えるのが精一杯だった。



2003年5月5日、さいたまスーパーアリーナ。保田圭ファイナルライブ。

会場が真っ赤に染まった。赤が好きな保田のために、2万8000人のファンがサイリウムでいっせいに照らし出したためだった。
メンバー全員が泣いていた。汗と涙がまじった顔で懸命に笑顔を見せようとする保田に、メンバーひとりひとりがメッセージを送る。

ラストソングは、この日のために用意された「Never Forget」
止めどもなくあふれ出る涙を必死にこらえながら、保田は最後まで歌い切った。


現役時代は「縁の下の力持ち」的存在で決して表には出なかった。
ハリのある歌声と気迫のあるダンス、そして自分に対し、仕事に対し妥協を許さない努力の人であった保田圭。

彼女の真摯な姿はつねに他のメンバーの手本になっていた。
歌にかける情熱、後輩メンバーに寄せる思い、娘。に在籍した5年間のすべての思いがこの歌唱に込められていた。

保田コールがいつ終わるでもなく、こだましている。
そして、ステージの階段を降りきった時、モーニング娘。としての「保田圭」は終わりを告げた。