小説モーニング娘。 第二十四章 「女子かしまし物語」    

周りが暗く、空気が澄んでいて星空や街の夜景が迫ってくる。
ある地方コンサート終了後のホテルのラウンジ。
1ヶ月ほど先にはハロープロジェクト夏ツアーが控えていた。

「なっち、一人で何ポ〜ッと眺めてるのぉ?」矢口がおどけた口調で近づいてきた。
「夜景なんて見慣れていると思ってたけど、すっごい!超キレイ・・・」
「へぇ〜!今日のなっち、けっこうロマンチックじゃん」
「ううん、メンバーと一緒に見るのって最後かもしれないから、ちゃんと見とこうと思って」
「なっち・・・・」

視界には、宝石箱のような夜景が一面に広がっていた。夜景とラウンジの雰囲気のせいか、しんみりとしてしまう二人。
「あのさ、オイラ思うんだけど・・・」「うん?」
「卒業って寂しいけど、おめでたいコトなんだよね。なっちはさ、これから自分のやりたいことを娘。に縛られずに出来るじゃん?
だからすっごく応援してるし、それに、なっちはオイラの目標でもあるんだから!」「や、矢口」

「オイラの今の一番の楽しみは、なっちははどこまで大きな存在になるかなって考える事。なっちはこの夜景みたいな存在だから」
「夜景?」なつみは心の中で復唱した。

「うん。どこまでも広がり続ける存在。無限の存在」「矢口もまた、随分ロマンチストだね」
そう言った後、なつみと矢口は揃って大きな声で笑った。それからまた導かれるように夜景を見つめた。

7月27日、ハロー!プロジェクト2003夏ツアー、代々木第一体育館最終公演。

なごやかに進んでいた公演の雰囲気が一転、ファンの声援が悲鳴に変わった。開演から1時間が経過した13曲目「22歳の私」。
安倍なつみのソロコーナー前にプロデューサーのつんくが突然、ビデオモニターに登場。
「満を持して、安倍なつみがモーニング娘。を卒業します」と発表した。

「なっち」の愛称で親しまれた「看板娘」の緊急重大発表に、約1万人の観客で埋まった場内は衝撃に包まれた。
モーニング娘。は、5月の保田圭卒業後、15人編成で再スタートしたばかり。
秋からは飯田圭織を中心とする「おとめ組」、安倍がリーダーの「さくら組」の2組に分かれて活動することが決まった矢先の発表であった。
「モーニング娘。の顔」とも言うべき安倍の卒業発表は、スポーツ紙だけでなく一般紙の朝刊社会面に掲載されるなど、その注目度の高さを窺わせた。