小説モーニング娘。 第二十六章 「〜エピローグ〜 出発(たびだち)」    

2004年1月25日、横浜アリーナ、ハロープロジェクト2004冬ツアー最終公演。

国内最大級のアリーナが真っ白な雪景色に染まった。安倍なつみの故郷、室蘭をイメージし、ファンがひそかに申し合わせた12,000個の白いサイリウムが左右に揺れる。コンサート最後のクライマックス。

やがて、ピンクの衣装に身を包み、ステージ中央から登場した安倍は、既に目頭を押さえ、必死で涙をこらえていた。
この日のために、特別に作られた花道を、安倍は、この瞬間を愛おしむように、一歩一歩、ゆっくりと進む。
客席からのなっちコールは、ますます、そのボルテージを上げて行く。
360度観客に囲まれた会場中央の特設舞台。安倍は「あぁ、白い!」と叫ぶと、感激で言葉をつまらせた。

1998年2月1日、安倍がデビューイベントを行ったこの横浜アリーナに、当時集まったファンは約6,000人。
が、この日は満員の12,000人に加えて、会場の外にも5,000人以上が殺到した。それほど大きな存在となっていた。
「あの思い出深い場所に、まさか1人ぼっちで立てることになるなんて…」
この安倍の言葉は、「モーニング娘。」の6年半の歴史が自身の青春そのものだったオリジナルメンバーならではの思いであった。

「モーニング娘。」の一員として浴びる最後の「なっち!なっち!」の大コールの中、メンバー1人1人と抱き合う感動のセレモニー。
安倍が本当の妹のようにかわいがっていた辻は、何も言うことができずに、ただ、安倍の手を握りしめ、溢れる悲しみを包み隠すことなく泣きじゃくっていた。

親友の矢口真里は「なっちの愛したモーニング娘。は、圭織とオイラで引っ張っていくから安心して」と送り出す。
結成以来苦楽を共にした飯田圭織は「なっち、覚えてる?デビューした時、ここを満杯にできるようになろうねって話したこと。ねぇ見て。いっぱいだよ。横浜アリーナ…」と言うと涙が止まらなくなった。

モーニング娘。としての安倍のラストソングは「ふるさと」
シングルで安倍が唯一ソロボーカルをとった思い出のバラードを、メンバーのコーラスにのせて歌い上げた。

デビューしてから6年半、今日に至るまで「モーニング娘。の顔」として走り続けてきた安倍なつみ。
モーニング娘。という「ふるさと」を心に抱きながら、今、彼女はソロアーティストとして新たな夢に向かって歩み始めたのである。

     小説 モーニング娘。第二部 (終)