小説モーニング娘。 第三章「サマーナイトタウン」    

「芸能界ってそんなに甘くない、しょせんは陣取り合戦や...で、今回はデビュー候補曲を3曲用意したから...」

「愛の種」の完売達成で順調にスタートを切ったはずのモーニング娘。
しかし、完売翌日のつんくの発言はどういう意味を持っているのか?

中澤「デビューするためにメンバー5人が力を合わせたけど、今はもう全員がライバル...。」
福田「負けたくないです。今の気持ちはただ突っ走るって感じ。」

そう、彼女たちは「メイン・ボーカル争奪戦」を強いられることになったのである。
用意された3曲、「どうにかして土曜日」「モーニングコーヒー」「ウソつきあんた」のレコーディングは2日間。
学校の試験の都合で1日しか参加できない飯田圭織は気合を込めて熱唱し、見事、候補曲2曲のメイン・ボーカルを獲得した。

デビュー曲のボーカルは飯田でほぼ確定かと思われた。しかし、レコーディングの翌日、突如5人は再招集された。
なぜ呼び出されたかわからない5人の不安げな表情をよそに、レコーディングスタッフから思わぬ発言が...。
「昨日決めたデビュー候補曲のパート割りに変更があります。」
結局、デビュー・シングルとして最も相応しいと思われる「モーニングコーヒー」のメイン・ボーカルは安倍なつみで決着した。

この時点で一挙に2曲のメインを失うことになった飯田圭織は、ひとり大号泣。
飯田「試験なんてやってる場合じゃなかった...昨日に戻りたい...。」

ガックリと肩を落とした飯田……、これまでにない、激しい涙が飯田圭織の頬を、顔中を濡らしていた……。
学校の試験の時間をも惜しんで、欠席したいと両親に説得していた飯田。しかしその願いも空しく1日しかレコーディングに参加できないことになった。
この私的事情がいったんは決まった彼女のメイン・ボーカルの座を失わせることになったのか?

「芸能界をナメたらアカン、要するに奪い合いや!」(つんく)
一見、華やかに見える芸能界。しかしその世界に身を置く彼女たちは誰よりも努力をし、そしてお互いに競い合わなくてはならない。
事実、毎年何百ものアイドル候補者がデビューしては消えていっているのである。
彼の言葉は、この世界で生き残るための「心がまえ」を端的に示しているのではないだろうか。