小説モーニング娘。 第三十四章 「卒業前夜」 Top Page
2005年度 矢口真里 卒業企画小説 「卒業前夜」
2005年7月23日 東京・代々木センチュリーホテル・ラウンジ
周りが暗く、空気が澄んでいて星空や街の夜景が迫ってくる。
明日はいよいよ、ハロープロジェクト夏ツアー最終日が控えていた。
「・・矢口・・」
突然呼ばれて振り向くと、暗がりに圭織の顔が浮かんで見えた。
「・・矢口・・泣いてるの?」
圭織が、心配そうに矢口の顔を覗き込む。
そう言われて頬に手をやると、涙にぬれていた。
「おいら・・・星を見てたんだ。すごくきれいだよ」
「こんなたくさんの星、久しぶりね」
矢口の顔越しに、窓の外の星を見つめる圭織。
「おいら、夜景なんて見慣れていると思ってたけど、すっごい!超キレイ・・・」
「へぇ〜!今日の矢口、けっこうロマンチックじゃない」
「ううん、おいらメンバーと一緒に見るのって最後かもしれないから、ちゃんと見とこうと思って」
「矢口・・・・」
「あのさ、おいら思うんだけど・・・」 「うん?」
「今さらだけどさ、圭織やメンバーのみんなには本当に感謝してる。
今度のコトで、身勝手なおいらのわがままを受け入れてくれて、それで・・」
「ううん、もし私が矢口の立場だったとしたら、やっぱり同じ決断をしたと思うな。
そしてまた同じ思いをしたと思う。ヨッスィーも言っていたでしょう?
あなたは、モーニング娘。のリーダーにふさわしい潔い決断をしたって」
「・・モーニング娘。のリーダーにふさわしい」 矢口は心の中で復唱した。
視界には、宝石箱のような夜景が一面に広がっていた。
夜景とラウンジの雰囲気のせいか、しんみりとしてしまう2人。
「ねえ、圭織・・」 「え?」
「明日のコンサ終わったら、久しぶりにみんなで焼肉食べに行こっか? もちろん、おいらのおごりだよ」
「ふぅん、さすが矢口。最後の最後に、リーダーぶりを発揮しようってワケね」
そう言った後、圭織と矢口は揃って大きな声で笑った。それからまた導かれるように夜景を見つめた・・。