小説モーニング娘。 第六章「真夏の光線」       Top Page
   

初めて先輩メンバーと顔を合わせたとき、さすが芸能人だって思った。
だけど、自分がそこに入った時、自分の中の不安感に気がついた。

プロデューサーのつんくさんの指示にその場その場で答える先輩メンバー。
頑張らなくてはという自分と、ついていけるかどうか自信のないもうひとりの自分がいた…。(保田 圭)



5月に発売される2ndシングルのレコーディングが開始した。
2ndシングル「サマーナイトタウン」では、当然というべきか、新メンバー3人はバックコーラスのみの担当。

だが、いざレコーディングとなると、難なく歌いこなす5人対し、初レコーディングの3人は、
簡単なコーラスさえままならぬダメっぷりを晒す。無駄に時間が流れ、首を横に振り続けるつんく。


しかし、こんな有様にもかかわらず、新メンバー3人は余裕の照れ笑い。
その様子を見たリーダー中澤は憤激、3人を廊下に呼び出し、腕を組んでの大説教を敢行する。

中澤「今ずっと笑ってたやろ。何なのその不真面目な態度は?
レコーディングは遊びじゃないんで合わせてもらわないと、待っているみんなの迷惑だし…。」


ここにきてプロの壁の厚さにぶち当たってしまった新メンバー3人。
自分達の置かれた状況を認識したのか、その後スタジオの外で懸命に自主練習。

そしてついにレコーディング最終日。
すでにオリジナルメンバーは前日で終了していて、新メンバーの応援をするためにスタジオで待機していた。


中澤「初めての8人の曲だし、力を合わせてがんばろや!」
石黒「3人の味が出せたら絶対にいい曲になると思うから…。」

新メンバーを励ます5人は、ここに至って苦労を共にする仲間意識が生まれていることに気がつく。
中澤の説教事件をきっかけに、新旧両メンバー間にあった大きな心の壁は、急激に崩壊し始めていた。


ついにレコーディングが終了。このときメンバー8人全員が駆け寄り抱き合って号泣した。
応援が励みになったと話す新メンバー、今までの苦労の中で初めて見せた喜びの涙であった。

この瞬間、8人が一体となった新生「モーニング娘。」
初期の5人の時より遥かに強い躍動感と厚みのある新たな「モーニング娘。」が生まれた。


そして1998年5月27日、2ndシングル「サマーナイトタウン」が発売され、見事オリコン初登場4位の好成績を達成したのである。