5月7日 イシュタル (Ishtar) 春夏秋冬(ユキノシタ) |
イシュタルは、古代メソポタミアのアッシリア・バビロニア地方で崇拝された性愛と豊饒多産の女神である。
勇敢であるうえに美しく、王権授与、王権を守る戦いの女神としても知られている。
古代バビロンのイシュタル神殿では「聖婚 Sacred Marriage」と呼ばれる特殊な儀礼が行われていた。
巫女がその身に女神を降ろし国王と結婚することで、王権を授与し国土の豊饒を願う祭祀である。
バビロンは、古代社会には数多く見られる農耕型の多神教国家であった。
特に女神イシュタルの信仰が強く、王は国家の祭祀として神殿娼婦と呼ばれる巫女との性交儀礼を行い、正式に支配者として認知された。
古代世界においては、国政は神意に従うものであり、王権は女神との聖婚によって授けられるものと信じられていたのである。
こうした聖婚儀礼は、国家守護神が女性の場合、さまざまの地域で行われてきた。
古代ギリシアのアフロディテ(Aphrodite)、北欧神話のフレイヤ(Freyja)など、多くの神話で、
愛と美を司る女神が、性に奔放な姿で描かれているのも、こうした神殿娼婦の影響によるものと考えられている。
(ギリシア神話事典)