6月1日    エクスカリバー (Excalibur)     春夏秋冬
直線上に配置    

深手を負ったアーサー王を、マーリンは三日のあいだ治療して、傷は回復した。

馬に乗って出発したアーサーは、剣のないことに気づく。

マーリンが言う。

「ご心配なさいますな。この近くに剣がございます。その剣はあなたさまのものになるでしょう」


二人が深い森を割って、馬を進めて行くと、まっさおな湖が見えた。
一見して神秘の気配をただよわせている。

「不気味な湖だな」
「はい。魔の湖です。みだりに近づいては命を落とします」

「だいじょうぶか」
「はい。王がおとずれて来ることを知っておりますから」

湖畔に近づくと、

「あれは?」
「あれが、その剣です」

湖の真ん中に、光るように白く美しい絹をまとった乙女の腕が、ひとふりの剣を捧げ持っているのが見えた。
いかにも魔の湖にふさわしい奇怪な風景である。


             



アーサーは馬を木につなぎ、マーリンと小船で湖に出た。

小船は目に見えない綱でひかれているように湖面をすべって進み、まっすぐに剣を握って突き出している腕のところへついた。
いったい、何者の腕なのか・・・。

腕より下の部分は、青い水の中に隠れて何も見えない。
アーサーが手をさしのべ、その剣をとらえると、腕も手も水中に消え失せてしまった。

アーサー王はおどろきながらも剣を鞘からぬいてたしかめた。

みごとな剣であった。柄には宝石をちりばめ、鞘もまた美しい。
しっかりと腰にさしてとめた。

                     アーサー王物語(阿刀田高)



エクスカリバー(Excalibur)

ブリタニア王アーサー(King Arthur)が使ったとされる聖剣。
妖精により特別な加護が備わっていたとされる。

その刀身はあらゆるものを切り裂く事ができたという。
また、その鞘には、持ち主の傷を癒し、不死身にする力があったとされている。

王となったアーサーは数々の武勇を重ねていくが、ある時戦いの中で自分の剣を破損してしまう。
落胆するアーサーだったが、魔術師マーリン (Merlin) に導かれてある湖へと辿り着く。

すると水中から「湖の乙女 (Lady of the Lake)」と呼ばれる妖精が現れ、見るも立派な剣を授けてくれた。
この剣こそがエクスカリバーであった。

(The Encyclopedia Mythica)