8月5日   痴人の愛   1949年(昭和24年)       邦画名作選
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カタブツの譲治は恋愛経験もないが、ある理念があった。

一人の女を自分の理想の女性に作り上げる、というものだった。
彼は浅草のカフェで給仕をしていたナオミを見出し家に連れて来る。

彼女にきれいな服を与え、ピアノや英語を習わせる。
しかしナオミには、そんな「教養」は苦痛でしかない。

それよりスクーターでぶっ飛ばしたり、
男たちにちやほやされて飲み歩いたりしたいのだった…。


谷崎潤一郎の原作を、木村恵吾が映画化。「ナオミズム」という言葉を生み出した名作である。
京マチ子の出世作として有名な作品であり、監督の木村恵吾にとってもこれが代表作となった。


 
  製作  大映
  監督  木村恵吾

  配役 ナオミ 京マチ子 三井弘次
  譲治 宇野重吉 浜田 島崎溌
      熊谷 森雅之

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ナオミのモデルは、当時、谷崎潤一郎の妻であった千代の妹・せい子とされている。

このせい子は、数え年15歳で谷崎と同衾している。
エキゾチックな容姿で、手足がほっそりとした彼女は、谷崎を大いに魅了したという。

せい子と恋仲になった谷崎は、夫人を冷たく扱うようになった。
その夫人に同情し、愛するようになったのが作家の佐藤春夫である。

佐藤にも妻がいたが、もともと冷めた関係だったため、やがて離婚。
谷崎も夫人と離婚し、佐藤春夫は夫人を譲り受けることになった。

これが世に一大センセーションを巻き起こした「細君譲渡事件」(昭和5年)である。
後に谷崎は「痴人の愛」を、自らの失敗談に基づいた「私小説」だと明言している。

せい子と関係を持ち、自分好みの女に成長してくれることを楽しみにしていた。
しかし彼女は、自分の手に負えないやりたい放題の女になってしまったという。
 
          京マチ子と谷崎潤一郎(1959年)