11月 17 日 媚薬 (Aphrodisiac)
中世の恋愛悲話物語「トリスタンとイゾルデ」(Tristan and Isolde)の中で、二人が死ぬつもりで毒薬を飲んだところ、実は媚薬だった、というくだりがある。
この媚薬(惚れ薬)は、魔女が「マンドラゴラ」(Mandragora)を調合して作ったものとされている。
マンドラゴラにはアルカロイド系の毒があり、太古から媚薬、毒薬、麻酔薬など様々な目的で使われてきた。
旧約聖書には、「恋なすび」という名称が使われており、不妊の女に飲ませると子供が授かるという説が古くからある。
「創世記」に登場する美人だが石女のラケル(Rachel)が、姉レア(Leah)からマンドラゴラを借り、ヨセフ(Joseph)を産む話がある。
(創世記 第30章14-24節)
インドでは、バラモン教の4ヴェーダのうち、神官が唱える呪法をまとめた「アタルヴァ・ヴェーダ」(Atharvaveda)の中に
「性欲を増進させるための呪文」があって、男根を興奮させる薬草のことが繰り返し述べられている。
古代インド人はこの方面をかなり熱心に探究しており、5世紀ごろの成立とされている「カーマスートラ」(Kama Sutra)には
薬で異性を魅惑する方法11種、強精剤13種、男根増大法4通り、その他性欲を衰えさせる薬のいくつかが記されている。
またインドの性典「ラティラハスヤ」(Ratirahasya 性愛秘義)にも精力を増大する薬、男根を大きくする薬、女性の性感を高める薬、
女性性器を小さく縮めたり広げたりする薬が示され、「アナンガランガ」(Ananga Ranga 愛擅)にも女性の性感を促し男性のそれを遅らせる薬や、
強精剤の処方があり、なかには百人の女性と交わることも可能となる途方もないのもある。
(世界大百科事典より)