12月28日 妖精 (fairy)
広くヨーロッパの民間伝承で信じられていた自然霊 (Nature spirits) の一種。
「森や川や草木など、自然のものにやどってる精霊(万物に宿るとされている意思をもった霊)たち」と定義される。
人間に好意的なもの、人にいたずらしたりだましたり、命を奪おうとするもの、運命を告げるものなど、さまざまな伝承がある。
例えば妖精が人間の子供をさらって代わりに彼らの子供を置いていくという「取り替え子」(チェンジリング Changeling)
の迷信は中世では広く伝わっていた。
シェイクスピアの「真夏の夜の夢 (A Midsummer Night's Dream)」ではチェンジリングでさらってきた子をめぐって
妖精王オベロン (Oberon) と女王ティターニア (Titania) が仲たがいをする場面がある。
北欧神話に登場するエルフ (Elf) は、とても美しく若々しい姿で、魔法の力を持ち、森や泉、井戸や地下などに住むとされる。
グリム童話「白雪姫 (Little Snow White)」に登場する七人の小人として知られるドワーフ (Dwarf) は、
背が低く長い髭をたくわえた頑健な種族であり、高度な鍛冶や工芸技能をもつとされている。
イングランドのコーンウォール (Cornwall) にすむピクシー (Pixy) は気まぐれな小人で、赤いとんがり帽子に緑の服を着た姿で一般に知られ、
怠け者を見つけるとつねったりポルターガイストを起こして懲らしめるという。
アイルランドのレプラコーン (Leprechaun) はいつでも片方の靴だけをつくっている靴屋の妖精であり、
グリム童話「小人の靴屋 (The Elves and the Shoemaker)」に登場する妖精とはこのレプラコーンのことと言われている。
馬の姿をしたケルピー (Kelpie) はスコットランドに住み、旅人を水の中に引きずり込んだり、夜、水車を回したりするという。
妖精画の作品においては、背中に羽根が生えている少女の姿で登場する事も多い。
20世紀初頭のシシリー・メアリー・バーカー (Cicely Mary Barker) の「さくら草の妖精 (The Primrose Flower
Fairy)」は、
花びらで造られたような衣装をまとった愛らしい妖精の姿が表現されている。
レプラコーン (Leprechaun)
レプラコーンは、いつでも片方の靴だけをつくっている靴屋の妖精である。
夜中に、何かを叩く音がすれば、それはレプラコーンがカナヅチを振るい、
靴を作っている音だとされている。
捕まえると、黄金のありかを教えてくれるが、たいてい黄金を手に入れることはできない。
ある男が、野原に隠されている黄金のありかを、レプラコーンから聞き出し、
その場所へ案内してもらった。
だが男は、シャベルを持ってこなかったので、目じるしとして
木のまわりに赤いリボンを結んだ。
男はすぐにシャベルを持って戻ってきたのだが、その場の光景を見て驚いた。
なんと、野原に生えているすべての木に、赤いリボンが結ばれていたのだった。
それ以来、アイルランドでは、レプラコーンのいたずらの被害にあわないように、
道のあちこちに 「レプラコーン出没注意!」 の標識が掲げられるようになった。
Carol Rose (Spirits, Fairies, Leprechauns, and Goblins: An Encyclopedia)