あゝ声なき友    1972年 (昭和47年)            邦画名作選

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西山民次(渥美清)は、病気のため、除隊することになった。

部隊の戦友たちは、南方に送られる前、家族への遺書を西山に託す。

二か月後、西山は、自分の部隊が南方で全滅したことを知る。

終戦後、西山は、戦友の遺族たちを探して、遺書を渡すことに執念を燃やす。

だが、西山を待ち受けていたのは、遺族たちの凄絶な境遇であった。



1959年(昭和34年)週刊文春に連載された有馬頼義の小説「遺書配達人」の映画化。


西山は最初、たった一人生き残ってしまった自責の念から、遺書配達を行っていた。

死んだ戦友のための義務だと信じて行ってきたのである。


だが、その配達先の家族は、戦争で過酷な運命にさらされ、戦後もその社会の中で
悲惨な生活を強いられているのを、西山は見ることになる。


そこで西山は思う。遺書を渡す義務とか、責任とかは、俺ではなくて、本来は、戦争を
指導した軍部や政府にこそあるのではないか。

自分が長い間、遺書を配り続けてきたのは、戦友たちへの義理からではなかったのだ。


それは、彼らを死地に追いやった戦時下の日本と、彼らの死に何の意味も見出そうとしない
戦後の日本に対する激しい「怒り」からであったことに、西山は気づくのだった。



本作は、原作を読んで感銘を受けた渥美清が、映画化の企画を提出し、今井正に監督を依頼、
自らが主人公・西山を演じた。

戦友の悲しみを背負い、遺族の悲しみに触れ、それでも残された遺族を探し求めて歩き回る。

そんな自分を突き動かすものは何か、自ら疑問を投げかけながら、旅する渥美の名演が光る。


 
 
  制作  松竹

  監督  今井正   原作  有馬頼義
           
  配役   西山民次   渥美清           八木千恵子    長山藍子          上辻美喜   倍賞千恵子
      羽鳥良助   新克利         島方静代    小川真由美          松本友清    松村達雄  
      町よしの    市原悦子         辰一    財津一郎          松本軍一 森次浩司

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