赤線基地     1953年 (昭和28年)    邦画名作選
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中国から十年ぶりに帰還した浩一(三国連太郎)は、故郷・御殿場の変り果てた姿に驚く。

家族は死んだ父以外は健在だったが、自宅のあった場所は米軍基地になり、強制移転させられた

実家には、由岐子(根岸明美)という米兵相手のパンパン(娼婦)が間借りしていた。

そして元恋人だったハルエ(中北千枝子)もパンパンに身を落とし、黒ン坊の子供までいた。

失望した浩一は、次の日、故郷を捨て、新天地を求めて東京に出る決心をする。



本作「赤線基地」は、講和条約(1951年)発効後も増加する米軍基地に対して批判や闘争が
激化しつつあった時期に、東宝が制作した唯一の「基地もの」映画である。


むろん、基地問題に対して特定の見解を表明して言論的な介入を意図するもの
ではなかった。

当時マスコミを賑わせていた基地と売春を巡る問題は、興行的に有望な題材で
あり、高い集客効果が期待される企画として取り上げられたのである。


しかし、本作には在日米国人も出演しており、アメリカ側を刺激してはとの政府の配慮から、
東宝は封切りの延期と作品の一部削除を余儀なくされた。

当然ながらその経過はマスコミの注目するところとなり「赤線基地問題」という見出しも躍る
ほどだった。


いずれにしても戦後の間もない時期、米軍基地のために変貌した街の様子や、兵隊相手に 
生活の資を得る日本人の生態を活写した貴重な作品となっている。



 

  製作  東宝

  監督  谷口千吉

  配役 河那辺浩一(長男) 三国連太郎 河那辺重作(祖父) 高堂国典
  河那辺杉男(次男) 金子信雄 由岐子(パンパン) 根岸明美
  河那辺静子(長女) 川合玉江 ハルエ 中北千枝子
      河那辺文子(次女)    青山京子          川西先生    小林桂樹 

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