荒木又右衛門   1925年(大正14年)     邦画名作選
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郡山藩で剣術指南役を勤める荒木又右衛門(尾上松之助)は、義弟の渡辺数馬(市川市丸)の

父親が惨殺されたことを知る。その仇の名は河合又五郎(河部五郎)であった。

又右衛門は、腕が未熟な数馬の申し出に応えて助太刀を引き受け、共に又五郎の行方を捜す。

一方、又五郎は36人の護衛をつけ、伊賀上野・鍵屋の辻で、又右衛門と数馬を待ち伏せていた。



剣豪・荒木又右衛門の活躍を描いた時代劇で「尾上松之助主演千本記念」と銘打って制作された超大作。

荒木又右衛門が河合又五郎を討った話は有名で、歌舞伎や講談で「36人斬り」などと脚色されており、
本作も36人斬りが見所となっているが、史実では、又右衛門が斬ったのは数人だけであったようだ。


歌舞伎の舞台をそのまま映画化した作品だが、従来の歌舞伎調の立ちまわりを脱し、リアルな殺陣を
披露して映画は大ヒット。以後、池田富保監督で、春秋超大作が作られることになる。

松之助は、どう見ても美男ではないし、背も低い小男である。だが刀を持って構えると大きく見える。
やはり全身から滲み出る大スターとしての風格が、体を大きく見せているのだろう。


なお本作は、6分ほどの短い映像が現存するのみであるが、ラストの立ち回りがすべて残っており、
荒木又右衛門を演じる松之助の迫力ある殺陣が圧巻で、貴重な映像であることには変わりない。


河合又五郎を演じた河部五郎は、この年にデビューした新人だが、本作で地歩を固め、以後も「修羅八荒」
「月形半平太」などの大作に主演、松之助の後継者として日活時代劇を背負って立つことになる。



 
 
 
  製作   日活

  監督   池田富保  

  配役    荒木又右衛門 尾上松之助 桜井甚左衛門 大谷鬼若
      河合又五郎 河部五郎 渡辺靭負 尾上卯多五郎
      渡辺数馬 市川市丸 竹内鬼玄丹 新妻四郎

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