足にさはった女 1926年(大正15年) 邦画名作選 |
青森行きの夜行列車。松戸夢男(岡田時彦)は、あてもなく旅をする文学青年である。
彼は、同席した濃艶な女と、ふと足と足とが触れ合ったことから、親しく話を交わす。
夢男は女から、北海道の湯川温泉に誘われ、好奇心にかられて誘われるままに投宿した。
だが、夢男が入浴中に、女は彼の財布を持って姿を消してしまった。
茫然としている夢男の前に、夜が更けて再び、女は若妻の姿で現れる。
女は虐げられてきた過去を語り、自分を棄てて行った人々に復讐するため、夢男に
偽りの夫になってくれと懇願する。
夢男はもう彼女の言いなりである。二人は女の故郷へ行き、かつて彼女を虐げた人々を
招いて復讐の宴会が開かれる。
そこへ女を追跡してきていた刑事(島耕二)が現れて、彼女は逮捕されてしまう。
彼女は女賊だったのであり、夢男に愛を告白しながら連行されていった。
曳かれゆく女の心に初めて、純真な愛が芽生えていたのである。
ハリウッド俳優として修業を積んだ阿部豊が監督を手掛け、キネマ旬報ベストテン第一位に輝いた作品。
善良な文学青年と美貌の女賊という軽妙洒脱な組み合わせと、テンポの良いコメディ調で展開される
本作は、喜劇的センスの乏しかった日本映画界に少なからぬ衝撃と、新鮮な息吹を与えたのである。
日本的な美人女優の梅村蓉子が妖艶な女賊を演じるというのも、当時としては画期的であったし、
また端正な二枚目の岡田時彦が、とぼけた文学青年役を演じて良い味を出している。
岡田はその後も、一連の阿部作品の好演によって、一気に人気スターへの階段を駆け上がっていった。
製作 日活
監督 阿部豊 原作 沢田撫松
配役 | 松戸夢男 | 岡田時彦 | 新田 | 谷幹一 | |||||||||
春日井浜子 | 梅村蓉子 | その妻 | 滝花久子 | ||||||||||
刑事 | 島耕二 |