大学は出たけれど   1929年(昭和4年)    邦画名作選

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大学を卒業したものの、就職先が見つからないままの徹夫。

故郷の母親には就職したとうそをつき、それを信じた母親は上京してくる。

母親の嬉しそうな顔を見ると、徹夫はなかなか本当のことが言えなかった。

だが、彼のうそを見抜いた婚約者の町子はひそかにカフェで働き始める…。



就職難だった当時の時代背景が色濃く反映された、サイレント・コメディ映画。

昭和初期の庶民の暮らしが丁寧な筆致で描かれた小津の貴重な初期作品である。


大学を出たばかりの徹夫は、就職試験の面接で受付の仕事を勧められる。

徹夫は「受付の仕事なんて…」と憤慨してそこを出て行ってしまう。

受付の仕事は「単純な」仕事であり、大学を卒業した男性が就くような
仕事ではないと考えられていたのである。


婚約者の町子は、徹夫に内緒でカフェで働くのだが、カフェの女給の仕事も
「あんなところで」働く「みっともない」仕事として捉えられている。

つまり、そのような仕事に女性を従事させることは、男性としての
「沽券にかかわる」ことであったのだ。

映画のタイトルは、その当時の流行語を引用したもので、高等教育が
与える偽りの期待に対する哀れなジョークになっている。



 

  製作  松竹

  監督  小津安二郎

  配役   野本徹夫 高田稔 二人の母親 鈴木歌子
      野本町子 田中絹代 下宿の主婦 飯田蝶子
      友人杉村    大山健二                   

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