蛇蠍のごとく   1981年(昭和56年)       ドラマ傑作選

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古田修司(小林桂樹)は、仕事一筋で実直な会社部長。


あるとき古田は、部下のOLに悩み相談を持ちかけられる。

だが、相談に乗るうちに、彼女に対してよからぬ感情を抱いてしまう。


相談後、古田は彼女と食事をとり、一週間後に密会の約束を取り付けた。

だが、密会の当日、古田の妻(加藤治子)が急用と称して来社する。


なんと古田の娘(池上季実子)が、妻子ある男と同棲を始めた…と告げられる。




古田は、とにかく娘を取り戻さなくてはと、相手の男のマンションに乗り込む。

相手の男は、娘より15歳も年上のイラストレーター・石沢(津川雅彦)だった。


「遊びか、真剣か」と詰め寄る古田に、石沢は「遊びだ」とうそぶく。

激怒した古田は、二人を別れさせようとするが、娘はどうしても聞き入れない。




堅物の会社部長・古田は、部下の若いOLと、生涯初の不倫を企てる。

だがその当日、自分の娘が妻子ある男と不倫していることが発覚。


自分の不倫は棚に上げて、娘の不倫相手に怒り爆発。

古田は、相手の男・石沢のもとに乗り込み、大騒動を巻き起こす。


だが、やがて古田は、腹立だしさの中に、どことなく漂う滑稽さを自覚するようになる。

年甲斐もなく、自分自身も若いOLを相手に、一生に一度の浮気を考えていたのではないか。


小心な堅物男の自分、そして理不尽で身勝手な不倫相手の男。

対照的な男二人だが、どこか「同じ穴のムジナ」。奇妙な共感を覚える二人であった。


男の浮気心は、いくつになっても失わぬもののようだ。

「蛇蝎」のように忌み嫌っていた者同士、いつしか「通じ合うもの」が芽生える様を軽妙に
描いた本作は、作者・向田邦子の中年男への優しさと憐みが垣間見える作品である。
   

 
(制作)NHK(原作)向田邦子(脚本)向田邦子

(配役)古田修司(小林桂樹)古田かね子(加藤治子)古田塩子(池上季実子)石沢清孝(津川雅彦

石沢環(加賀まり子)宮本睦子(佳那晃子)青木三十三(原悦子)梅本須江(内海桂子)佐久間晃一(小林薫)



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