駅 STATION 1981年(昭和56年) 邦画名作選
刑事で、オリンピック射撃選手でもある英次は、過ちを犯した妻と離婚する。
家庭より仕事、オリンピックを選んだことを先輩刑事に非難される英次。
そんな先輩がある日、凶悪殺人犯の銃弾によりこの世を去ってしまう。
復讐を誓う英次だが、殺人犯が捕まらないまま歳月が流れる。
英次は、今では狙撃班のチーフとして犯人を射殺する生活を送っていた。
自身の仕事に嫌気が差した英次は、故郷に戻る道中、飲み屋の女将・桐子と出逢う。
急接近する二人だが、そこへ手配中の殺人犯目撃の密告が入る…。
人のめぐり逢いを象徴する駅を舞台に、主人公の刑事と三人の女たちとの出逢いと別れが描かれる。
高倉健が演じる三上英次は、物事のケジメをはっきりさせなければ気がすまないという性格のため、
別れなくてもいいのではないかと思われる妻とも別れて孤独に耐えるという自分に厳しい男である。
では彼は、冷たい性格かというと逆で、相手の気持を思いやる心情も人並み以上に強いため、
自分が射殺した犯人の遺族のことなども気になってつくづく刑事をやめたいと思うようになる。
そうした苦悩を内に秘め、寡黙に耐える彼の姿には、厳しさと同時に限りない優しさが感じ取れる。
脚本は「北の国から」の倉本聡。高倉健という俳優の独自の持ち味を最大限に活かした作品である。
製作 東宝
監督 降旗康男