ふんどし医者 1960年(昭和35年) 邦画名作選
江戸末期、大井川の宿場に、貧しい人々を診察する慶斎という蘭学医がいた。
妻はバクチが大好きで、負けがこむと夫の着物をカタに、勝負を続ける始末。
慶斎は、とうとう最後に、ふんどし姿になってしまうことも。
おかげで彼は「ふんどし医者」と呼ばれている。
稲垣浩監督、森繁久彌&原節子のめずらしいユーモアコンビが贈るコメディ時代劇。
長崎で医学を修めた慶斎だが、御殿医になるよりも庶民を救おうと、片田舎の宿場で開業する。
だが、あるとき腸チフスの患者を、単なる腹痛だと誤診して、感染が村中に拡大してしまう。
名医と慕われる慶斎だったが、田舎暮らしゆえに、日進月歩の西洋医学に取り残されてしまった。
それを受け入れなければならない彼の無念さ、淋しさが描かれている。
これを契機に、彼は最新の設備を整えようとするのだが、新式の顕微鏡を買う金もない。
すると妻が、体を張った一大バクチを打つ。おかげで三百両の顕微鏡を手にすることができた。
慶斎は、貧しい人々のためを想い、これからもあえて田舎の町医者であり続けようと決意する。
一見貞淑な原節子がバクチにハマり込んでいる様が愉快であり、森繁との異色コンビを中心に
宿場の人々の様子が温かく描かれる、笑いあり、涙ありの人情喜劇の傑作である。
製作 東宝
監督 稲垣浩