下郎   1927年(昭和2年)     邦画名作選
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囲碁の席でのいざこざで父を殺された助三郎と下郎の格平(河部五郎)は、共に仇討ちの旅に出る。

その途中で美しい妾・お国に惚れられた格平は、彼女を囲っている侍に斬りかかられるが、

逆にその侍を斬り殺してしまう。

すると、その侍が、実は助三郎の父を殺した男と分かり…。



伊藤大輔のオリジナル脚本。下郎がふとしたことから主人の仇を見つけ、その仇を討ってしまう。

臆病な主人は、殺された仇の門弟たちから下郎の引き渡しを強要されると渡してしまう。

下郎は主人に裏切られて死ぬことになる。封建社会における主従関係の非情さを描いた作品であり、

人間として生きる権利すら認められぬ下郎の悲哀を痛切に活写した問題作である。


伊藤大輔は「新版大岡政談」で、主君に裏切られて反抗的な剣を振るう「丹下左膳」を生み出したが、
本作でも、主人に裏切られた下郎が、忠誠心の愚かさを骨身に徹して斬り死にするという物語である。


主人に捨てられたと知った下郎が、哀しみと怒りから死に物狂いの反抗をするラストの壮絶なシーンは圧巻。

主演の河部五郎は、前年の1926年に「修羅八荒」に主演して爆発的な人気を得ていたが、この「下郎」では、
剣戟を離れた場面での演技に高い評価を得ており、名優・河部五郎の代表作の一つとなった。



 
 
 
 
  製作   日活

  監督   伊藤大輔  

  配役    下郎・格平 河部五郎 妾・お国 沢村春子
      主人・助三郎 久米譲 仇・兵馬 金子鉄郎

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