蛍の光 1938年(昭和13年) 邦画名作選 |
卒業を間近に控えた女学生たちは、想い出づくりにと箱根旅行へ出かける。
その旅行には、退職が決まっている担任の河原先生(桑野通子)も同行した。
女学生の中でも特に、輝かしい未来が開けているのは三枝(高峰三枝子)だ。
彼女は、ヨーロッパにピアノ留学という話が持ち上がっている。
三枝の親友である早苗(高杉早苗)は、京都へと嫁ぐことが決まっている。
周りから、うらやましがられる早苗だが、この結婚には哀しい事情があった。
父親が先方から金銭を融通してもらっており、身売りのような縁談だったのだ。
そんな早苗を憎からず想っているひとりの青年がいた···。
ピアニストとして成功を約束された娘(高峰三枝子)が、後援者の秘書(夏川大二郎)を恋するが、
政略結婚させられる親友(高杉早苗)と彼が相思相愛と知り、苦悩するというストーリー。
本作で、高峰三枝子は、恋に破れ自殺を図る薄幸のヒロインを演じて大いに注目された。
人気も急上昇し、二年先輩の桑野通子、高杉早苗に肉迫する存在となった。
桑野通子は当時、同期入社(1934年)の高杉早苗と並び、松竹大船の若手トップ女優だったが、
年のわりに、どこか大人じみた雰囲気があった。
殆ど年の違わない高杉早苗や高峰三枝子がセーラー服を着て、女学生に扮している時、
彼女はスーツを着た教師役を演じて、少しも不自然ではなかった。
それは一種の貫禄というものかも知れない。
だから、1935年の「彼と彼女と少年達」では、荒んだ流れ者の女もやれたし、1939年の
「新女性問答」では、堂々と法廷で弁論を展開する女性弁護士もやれた。
これは自然に備わった大スターの素質といえるものだろう。
製作 松竹
監督 佐々木康
配役 | 河原先生 | 桑野通子 | 有賀恭爾 | 夏川大二郎 | |||||||||
森田早苗 | 高杉早苗 | 早苗の父・吉太郎 | 坂本武 | ||||||||||
石井三枝 | 高峰三枝子 | 三枝の母・千代子 | 吉川満子 |