百年の男 1995年(平成7年) ドラマ傑作選
東京郊外で理容店を営む周平(緒形拳)は、孤独な六十歳。
ある日、突然階段を上ることが出来なくなったうえ、病院では肺に良くない影があると
診断された。
老いを覚えた周平は、死後は家を譲るという条件で、自分の世話をしてくれる同居人を
求むとの奇妙な広告を出す。
早速、広告を見た米倉登とその妻美季が現れ、三人の疑似家族の生活が始まった。
周平は、山奥の沼に棲む百年生きるという鯉を見ながら、百年生きて母さんを頼むと
言った亡き父の言葉を思い出す。
緒形拳扮する主人公・周平は天涯孤独となった理容店主。不動産屋(坂上二郎)の勧めで
「面倒を見てくれたら、死後、家を譲る」という約束で、ある若夫婦と同居する。
だが、若夫婦の夫は、間もなく愛人のもとに走り、妻の美季だけが後に残る。
周平は若い頃、妻と別れた経緯を思い出し、美季に「夫を逃がしてはいけない」と説得する。
「お互いに引けないことってあるものよ」と突っ張る美季に「やっぱり一人はつまらない」と諭す周平。
周平は、二人の別れ話に巻き込まれる中で、自らの半生を問い直すことになる。
劇中、百五十年は生きているという設定の鯉が登場する。体長七五センチ。数千万円の鯉を借り、
特殊カメラで撮影したという。
肺ガンの疑いがあると医者に言われた周平は、死の不安に悩むが、やがてその疑いもなくなり、
あの鯉のように、長く静かに生きるのも芸のひとつだと悟る。
そして彼は、二階に間借りした女性に理容の技術を伝え、生きてきた証(あかし)を残そうとする。
脚本の池端俊策は、悠久の時の流れを生き抜く鯉の挿話を交えて、二つの世代の生きざまを描き出し、
そこに人間の営みの継続性を探っていこうとしている。
(制作)NHK(脚本)池端俊策
(配役)国木田周平(緒形拳)周平の妻・春子(大楠道代)米倉美季(清水美砂)
米倉登(橋本潤)不動産屋・吉井(坂上二郎)